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●普段、食べることを心から楽しんでいる人は、「食に興味がない人」について理解しがたいもの。今回はそんな人たちの食生態に迫ります。

 突然ですが、あなたの周りに「食に興味がない人」、1人や2人いませんか? 筆者の周りには、けっこう多く存在します。たとえば先輩や同僚、後輩、友人、さらに家族にもいます。ここでは、知っているようで知らない、意外と身近にいる“食べることにまったく関心がない人”の生態を探ってみました。

食への興味の有無はランチに表れる!?

 食に興味がない人たちは、まずランチにその特徴が表れます。

 例えば筆者の前の職場の上司(男性・54歳)の場合、ランチは『CoCo壱番屋』、『吉野家』、立ち食いそばの『富士そば』の3店を順番に巡ることを出来の悪いAIのように繰り返していました。オフィスの周りには美味しい個人店がたくさんあるのに、です。誤解してほしくないのですが、チェーン店が悪いと言ってるわけじゃありませんよ。ただ、その思考停止っぷりに「オレは食に関して何一つ積極的に考えたくないのだ」という断固とした思想が透けて見えるということなのです。


上司はよく立ち食い蕎麦屋に部下を誘う。しかし決して奢ってはくれない

 これの変化版ですが、ランチは1日ごとに決められたカップ麺か、菓子パン&惣菜パンを交互に繰り返す同僚女性もいます。また、私の家族(男性・24歳)の場合は、そもそも外食をしたがりません。「美味しい店を見つけた」と言ってもノーリアクション。外で食べるより家でのんびりしていたい。なんでもいいので作ってほしい。そういうものぐさタイプもいます。


同僚(女子)は、ランチはコンビニの菓子パンとカップ麺。ダイエット中らしい

 ちなみに昔の同僚は、ランチで白身魚のソテーを食べているときに、「この鶏肉、やわらかいな」と言ったり、玄米おにぎりを食べながら「この赤飯、パサパサしてる」と言ったりして、よく周りから生暖かいツッコミを入れられていました。


白身魚のソテー。これをチキンソテーと間違える同僚

食に対してケチ

 当たり前といえば当たり前ですが、食に興味がない人たちは往々にして食事にムダなお金を遣いたがりません。

 例えば、先に挙げた前の職場の上司の場合、多人数の飲み会で焼肉屋に行くと、「まずは上タン? いや普通のタンなら2倍食えるぞ」とか、「肉よりホルモンを食え」とか、「ライスはいいのか? ここは米がウマいんだ」などと騒いで、同席者たちの腹をいかに安い肉と米で満たすかに命を燃やしていました。


上司は、安い肉と大盛りライスをやたら薦める

 もともとケチなところはありましたが、自分が食べることに価値を見出していないので、食に対してビタ一文つかいたくないわけですね。本当の意味での“悪意”はないにせよ、周りからはどうしても“肝っ玉の小さいセコい人間”というレッテルを貼られることになります。

食に興味がなさすぎて協調性がない


たくさんの手料理を前にして、まさかカップ麺を食べるなんて!

 昔の話ですが、筆者は大学時代、地方に住む友人宅に1週間ほど滞在させてもらった際に、お母さんが大量に料理を作ったのに、その家のお父さんがいきなり「カップ麺が食べたい」と言い出し、本当にカップ麺をすすり始めたのに驚いたことがあります。

 別の日には、みんなで食卓を囲んだ瞬間にそのお父さんが「ラーメンが食べたくなった」と、駅前のラーメン屋に行ってしまったこともあります。気分を害しているとか、嫌味や当てつけでそうしているというのではなく、ただただ欲求に忠実というか、ごく自然にそういう行動をしているのです。というか、どんだけラーメン好きなんだって話ですが。

 そして上に挙げた“食に関心がない人たち”に共通する傾向として、一緒に食事をしたときに、料理と味への感想がほぼない、というのも付け加えておきましょう。まるで宇宙食でも食べているかのように無表情で料理を口に運び、あえて感想を聞いても困惑したような表情を浮かべるばかり、というパターンが多い気がします。

では彼らは何が好きなのか?

 このように食に興味がない人たちは、周りをギョッとさせたり、イラッとさせたり、時に笑わせてくれたりするわけですが、とはいえ、人間である以上、食事は毎日する必要があるわけで、何かしらのこだわりや好きな食べものはあるはずです。

 そこで、筆者の知人で、自他ともに認める“食に興味ゼロ人間”・高岡祐樹さん(男性48歳・仮名)に、好物を聞き出してみることに。ちなみにこの知人は、出版社の営業職。趣味は音楽鑑賞やレコード収集、さらに自作の詩集を自費で作ったりする、どこか浮世離れした芸術家っぽい人です。いろいろ訊いてみたところ、思いもよらぬ意外なことがわかりました。

食に興味がなさそうな人の好物とは?

――毎日、朝は何を食べているんですか?

 朝は食べたり食べなかったり、ですね。食べるときは、コンビニかスーパーの「あんぱん」か「みたらし団子」です。これは子供のころから好きなおやつで、大人になって親に縛られず好きなだけ食べられるのが嬉しくて、仕事帰りに購入します。


複数個入っている「つぶあんぱん」

 メーカーにこだわりはありません。「あんぱん」は個装のものではなく、4〜6個入りの「つぶあんぱん」が好きですね。一口で食べやすいから。また、「みたらし団子」はコンビニのレジ横に置いてあることが多く、それを購入します。和菓子屋さんの本格的な「みたらしだんご」より、コンビニやスーパーで売っている、餡が少しゼリーっぽいやつのほうが好みです。


スーパーやコンビニで売っている3本入りの「みたらし団子」

ランチは何を食べているのか?

――では、昼食はどうですか?

 昼飯は仕事場で一人で食べます。基本的に、他人と食べるのが苦手なんですよね。昼に買うのは、惣菜パンです。よく食べるのは「ランチパック」の「たまご」を2パックくらい。卵、好きなんです。そういえば、ランチパックじゃなくて「スナックサンド」というライバル商品もあることに最近気づきましたが、どっちでもいいです。


高岡さんの好物、ランチパックの「たまご」、またはスナックサンドの「たまご」

――ではタマゴを使った料理が好きなんですか?

 好きですね。目玉焼き、卵焼き、あとオムライスも。ただ、自炊も外食もほとんどしないので、卵料理もめったに食べませんね。そういえば、今の季節は「月見バーガー」が発売されますよね。あれ、ものすごく好きです。いろんなハンバーガーショップから「月見バーガー」が出ていますが、どこの店のでもいいです。ちなみに、昔だれかに連れて行かれて本格的な“グルメバーガー”の店に行ったことがあるけど、食べにくいし、ハンバーガーなのに重すぎて、苦手です。


マクドナルドの「チーズ月見」は好物らしい

――ラーメンとかうどんとか、麺類はいかがでしょうか?

 食べますよ。仕事場近くの駅にある立ち食い蕎麦屋さんに時々一人で行きます。でも蕎麦は食べません。うどんオンリーです。蕎麦を食べないのは理由があって、学生時代に本格的な蕎麦屋でバイトしていたんですね。そこは蕎麦粉100%で、とても美味しい蕎麦を出していたんですが、でも立ち食い蕎麦の蕎麦ってほとんどつなぎで出来てるじゃないですか(※個人の感想です)。だから立ち食い蕎麦屋で蕎麦は食べないんです。

 うどんも、讃岐うどんのようなコシが強すぎるのは苦手です。昔、給食に出てきたソフト麺ってわかりますか? あんな風にクタクタなのが好きです。でも最近「うどんはコシだ」とか言う人、多いでしょう? そしてうどん専門店のうどんってコシがあるでしょう? あれがイヤなんですよね。だから立ち食い蕎麦屋のうどんのような茹で置きタイプがちょうどいいんです。


高岡さんはコシが強いうどんが苦手[食楽web]

ディナーのこだわりは?

――晩ごはんは何を食べてるんですか?

 夕飯は、まず缶ビールを飲みます。ビールは大好物です。ビールは新作が次々に出るので、その時々にいろいろな缶ビールを試しています。つまみはほぼ柿ピーですね。柿ピーのメーカーにこだわりはありません。ただ、食べ方として、包装から直に口に流すように食べるのが僕の流儀。そうやって食べると、口の中で柿の種とピーナツがいい感じに混ざり合うので、咀嚼したときに美味しいんです。これをビールで流し込むのが最高です。

 ビールを2本くらい飲むと眠くなり、夕飯を食べないまま寝ることもよくあります。また、食べる場合は、仕事帰りに買ったコンビニやスーパーの弁当や惣菜。これもほとんど同じもので、「からあげ弁当」か「海苔弁」を買うようにしています。たまに食べたことのない新作の弁当を買うと、口に合わなくて残してしまうことが多くて。自然とこの2つしか買わなくなりました。


袋から直食べするという柿ピー

――フルーツやスイーツなど、デザートは食べますか?

 ほとんど食べません。ケーキなどの甘いものが嫌いなわけではありませんが、自分で買ってまで食べようとは思いません。ただ、唯一、好きなもので冷凍庫にストックしているのが「ミナツネのあんずボー」です。

 これもみたらし団子と同様、子供の頃から大好きな駄菓子で、コンビニになければスーパーで探してでも買います。凍らすとアイスキャンデーになり、甘酸っぱくて好きです。この世の食べ物で一番好きかもしれません。


子供のころから好きな「あんずボー」は今も冷凍庫にストック

――最後に高岡さんにとって「食」とは?

 ひと言でいえば、“楽しみのひとつ”です。人からよく「食に興味がないでしょ」とは言われます。いろんな店を食べ歩いたり、人気店に並んでまで食べることもありませんし、また未知の味に挑戦しよう、という欲や冒険心がないのは確かです。でも、食べること自体は楽しいんですよ。

 確かに、気に入ったものをルーティン的に食べ続けたり、好きなものに固執する傾向はあるかなと思います。でも、それは洋服でも同じで、気に入ったものは大切にして何年も着ますし、音楽だって心地よいと思う曲を集めて、繰り返し聞きます。

 食生活もそれと似ているかもしれません。気に入った食べものを誰に遠慮することもなく食べ続けたい。もういい大人だし、子供のころと違って、何を食べるか、その選択は自由ですから。

まとめ

 というわけで、食にまったく興味がなさそうな高岡さんでしたが、意外にも食べることを楽しみにしており、食べ物へのこだわりも実はありました。しかも好物については特別感はないけれど、どれも定番の人気商品で、気に入るとそればかり食べ続ける傾向があるようです。そしてそれを誰にも邪魔されたくない。

 ひとえに、このあたりの細かいこだわりと個性が、周りとの軋轢を生む原因だったりもするのかもしれません。というわけで、皆さんの周りの食に興味なさそうな人はどんなタイプですか? 彼らの食生態を観察して起きたエピソードがあったら、ぜひ下記まで投稿してみてください!

●食に興味のなさそうな人エピソード投稿フォーム
https://forms.gle/1569T6JYhXPHXp988

(撮影・文◎土原亜子)