遺産わけの話し合いを行う遺産分割調停。なかには、不成立となることもあります。遺産分割調停が不成立となるのはどのような場合で、その後はどのような対応をするのでしょうか? 本記事では、遺産分割調停が不成立となったケースについて、Authense法律事務所の堅田勇気弁護士が詳しく解説します。
「遺産分割調停」とは?
遺産分割調停とは、家庭裁判所で行う遺産わけの話し合いです。
人が亡くなると同時に相続が発生し、故人(「被相続人」といいます)が有していた財産は、当然に分割されるもの以外は相続人全員による共有となります。しかし、共有のままでは財産の使い勝手がよくないうえ、原則として預貯金の払い戻しや有価証券の移管なども受けられません。そこで、相続人全員で話し合いを行い、遺産を確定的に分割するステップが必要となります。この話し合いを「遺産分割協議」といいます。
しかし、遺産分割協議を成立させるには相続人全員による合意が必要となり、1人でも合意しない相続人がいる場合や話し合いさえ拒否している相続人がいる場合などには、遺産分割協議を成立させることはできません。そこで、遺産の分割をしたい相続人が家庭裁判所に遺産分割調停を申し立て、解決を図ることとなります。遺産分割調停はあくまでも相続人間の意見を調整する手続きであり、成立には相続人全員による合意が必要です。
とはいえ、当事者が直接対峙するのではなく、家庭裁判所の調停委員が当事者双方から交互に意見を聞き、意見を調整する形で話し合いが進行します。そのため、遺産分割協議がまとまらなかった場合であっても、遺産分割調停は成立する可能性が見込まれます。
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遺産分割調停が「不成立」となる場合
遺産分割調停は、不成立となることもあります。ここでは、遺産分割調停が不成立となる主なケースを2つ解説します。
1.それ以上話し合っても合意が見込めない
1つ目は、数回の調停期日を経たうえで、これ以上話し合いをしても合意が見込めないと調停委員会が判断した場合です。たとえば、双方が同じ遺産の取得を希望して一向に譲らない場合や、双方による遺産分割についての意見が真っ向から対立している場合などが該当します。
2.相手が調停の場に出頭しない
2つ目は、相手が遺産分割調停の場に出頭しない場合です。調停に出頭しない以上は話し合いを進められず、調停を成立させることはできません。そのため、一部の当事者が調停への欠席を繰り返す場合は、遺産分割調停が不成立となります。
なお、急病などやむを得ない事情で一度欠席しただけである場合や、仕事などの都合から期日に出頭できず期日の変更を求めた場合などには、欠席だけを理由に調停が不成立となる可能性は低いでしょう。
また、本人が出頭していなくても代理人として弁護士が出席している場合は欠席には該当せず、これを理由に不成立とはなりません。