肖像権使用同意書の取得が必要となる主な場面

肖像権使用同意書は、どのような場面で取り付ける必要があるのでしょうか?

ここでは、肖像権使用同意書を取り付けておくべき主な場面を3つ紹介します。ここで紹介するのは一例です。ほかにも他者の肖像を公開しようとする場合には、あらかじめ肖像権使用同意書を取得しておくことをおすすめします。

他者をインタビューした動画をYouTubeやXなどのSNSにアップロードする場合

YouTubeなどでは、しばしば街中などで他者をインタビューする動画の投稿が見受けられます。このように、他者をインタビューした動画をYouTubeやX(旧:Twitter)などのSNSに投稿する場合は、肖像権使用同意書を取り付けておくべきでしょう。

この場合の肖像権使用同意書は、その場で書面を手渡して記載してもらう方法がもっともスムーズであると思います。

撮影した生徒の写真を行事案内や学校ホームページに掲載する場合

学校や保育園などの行事の際に撮影した写真を園や学校のホームページに掲載したり、地域の広報誌や学校案内などの紙面に掲載したりすることがあります。このようなことを行おうとする際は、肖像権使用同意書を取り付けておくと安心です。近年、子どもの顔写真が公開されることを避けたいと考える保護者も少なからず存在するためです。

この場合の肖像権使用同意書は行事ごとに得るのではなく、入園(入学)時に保護者からまとめて取り付けておくとスムーズでしょう。また、書面ではなくスマートフォンアプリなどのシステム上で同意を得る方法もあります。

会社のホームページに従業員の写真を掲載する場合

自社のホームページやパンフレットに、従業員の写真を掲載する場合があるでしょう。業種によっては、スタッフの顔が見えることで顧客の安心感につながります。この場合も、「自社の従業員だから」といって口頭だけで合意を得るのではなく、肖像権使用同意書を取得することをおすすめします。なぜなら、特にその従業員が退職した際に、掲載に関してトラブルが生じるおそれがあるためです。

退職した従業員の顔写真はいずれ削除するとしても、会社としてはすでに刷ったパンフレットが残っているうちはそのパンフレットを使用したいといった事情や、従業員が退職する都度ホームページを改訂するのではなく、1年に1回程度まとめて修正をしたいなどの事情もあるでしょう。

そのような事情を踏まえて肖像権使用同意書を取り付けておくことで、トラブルの予防が可能となります。このようなケースでは、入社時にまとめて同意を得る方法のほか、ホームページ用の写真撮影時に個別に同意を得る方法などが考えられます。

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肖像権侵害にあたるかどうかの判断方法

ある行為が肖像権侵害となるか否かの判断基準は、一概に法令などで決まっているわけではありません。一般的には、判例を参考に、次の事項などから総合的に判断することとされています。

・被撮影者の社会的地位

・撮影された被撮影者の活動内容

・撮影の場所撮影の目的や撮影の態様

・撮影の必要性

ただし、被写体の知人が見たときに誰であるか特定できない場合や、被写体から実際に使用する範囲で肖像権使用の許諾を受けていた場合には、肖像権侵害とはなりません。ほかに、肖像権侵害の判断基準としては、デジタルアーカイブ学会が公表している「肖像権ガイドライン」も参考となります※。

「肖像権ガイドライン」とは、「肖像権という法的問題に向き合うための考え方のモデルをデジタルアーカイブ学会が示し、デジタルアーカイブ機関における自主的なガイドライン作りの参考・下敷きに」することを目的として制作されているガイドラインです。肖像権ガイドラインでは、次の3ステップで「公開に適するか否か」を判断します。

・ステップ1:知人が見れば誰なのか判別できるか

・ステップ2:その公開について写っている人の同意はあるか

・ステップ3:公開によって一般に予想される本人への精神的な影響をポイント計算すると何点か

他者の肖像を活用する必要がある場合は、このガイドラインも一読しておくとよいでしょう。