どんなふうに入れるのか

外科手術で骨に穴を開ける



「歯科インプラントの治療は外科手術に分類されます。そのため、クリニックでカウンセリングをした後、CT撮影や心電図、血液検査などの術前検査を受ける必要があります。

手術は1回法と2回法に分けられます。

歯茎を切開して、あごの骨にドリルでインプラント体用の穴を開けます。その穴にインプラント体を埋め入れるところまではどちらの手法でも同じです。

1回法では、そのままアバットメントを装着し、手術は終了になります。

2回法は、インプラント体を埋め込んだ後、一度ヒーリングアバットメントというカバーを設置して歯茎を縫合します。手術から2〜3カ月後にインプラント体と骨の結合具合を確認し、問題がなければもう一度歯茎を切開してカバーを取り外し、アバットメントを装着します。

2回法のほうがしっかりとをインプラントがあごの骨と結合してから被せ物を装着できるので、1回法よりも2回法をおすすめします」(古川先生)

歯科インプラントは一生使えるものなのでしょうか?

「基本的に一度歯科インプラントを付けたらそのまま使い続けることができます。被せ物やアバットメントが壊れてしまうこともありますが、その場合は壊れた部分だけ交換すれば大丈夫です。

もちろん、歯科インプラントを外すこともできます。

50代60代で歯科インプラントの治療を受けた方が年を取って、寝たきりなどで自分で歯磨きやうがいができなくなったときに、インプラントを取らなければいけないということが問題になっています。

また歯科インプラントは歯茎との結合が弱く、歯周病が進行しやすいデメリットがあります。

なので将来介護されることになった場合に備えて、自分がどのメーカーのインプラントを使用しているのかちゃんと確認しておくといいでしょう」(古川先生)

なぜ、メーカーの把握が必要なのでしょうか?

「インプラントはメーカーによって作りが違うので、メーカーごとに外し方も使用する器具も違っています。つまり、自分が使用しているインプラントのメーカーや種類がわからなければ、外すことができないということです。

歯科インプラントを付けてもらった病院であればどのメーカーを使っているかはすぐわかりますが、別の病院で除去してもらう場合、その病院はどのメーカーを使用しているか問い合わせない限りわかりません。

歯科インプラントは日本だけでも30社以上のメーカーがあり、世界規模で見れば100社を超えます。歯科医がすべてのメーカーを把握するのは難しいと言えるでしょう。

家族でも知らないという人は多いので、カウンセリングや装着時に歯科医師に詳しく聞いておくといいかもしれません。

50代以降でも歯科インプラントの治療を受けたいという方もいらっしゃいますので、その場合は介護などのリスクも考えてインプラントの本数を減らして、入れ歯と併用した治療を提案されることもあるでしょう」(古川先生)

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まとめ

厚生労働省によると、歯の平均寿命は49年〜66年なのだそう。なるべく長く自分の歯で生活したいものですが、もしそうでなくなった場合には歯科インプラントの治療を受けることも自分らしく生きる手段の1つなのかもしれませんね。

※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。記事の内容は個人の感想です。
※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。

取材・文/ウーマンカレンダー

著者/古川 雄亮先生
国立大学歯学部卒業後、歯学府博士課程において歯のエナメル質形成に関わる遺伝子研究をおこないつつ、バングラデシュなどのアジア諸国で口腔衛生に関連した国際歯科研究に従事。その他、スウェーデンのイエテボリー大学での研修を修了。大学病院の医員を経験した後、南米のボリビアにおいてボランティア団体の力を借り外来・訪問歯科診療に参加。 2019年にNature系の雑誌に研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」が公開。現在は歯科臨床に従事する傍ら、多くの企業からの依頼で、セミナーや学会取材、医療関連記事の監修・執筆、歯科医師国家試験模擬試験の校閲など、さまざまな分野で活動している。
https://www.kyousei-shika.net/