世帯年収1,500万円でも赤字…教育費と芝浦タワマンの住宅ローン

悩ましいのが、ジョブ型の導入が子どもの教育費がかかる段階での出来事だったことだ。第一子の長女は私立中学校の2年生、第二子の長男は小学校6年生で中学受験の真っ盛り。グローバル教育で知られる名門私立中学では夏休みに海外研修を行っており、今年は円安もあり100万円近い費用がかかることになった。

参加は任意だが、「娘の友達がみんな参加するのに、うちだけ給料が減ったから行くなとは言えない」と男性は恨めしげだ。今冬に受験を控える長男の塾の夏期講習などもあり、この夏から秋にかけて200万円近い大金が銀行口座から減ったという。

男性の年収は1,000万円を超え、人材派遣会社で働く妻も合わせれば世帯年収は1,500万円を数えるエリートだが、「月々の収支は赤字だ」とこぼす。教育費に加え、月々30万円近い芝浦のタワーマンションのローン支払いもあるためだ。

埋立地とはいえ、資産価値の高い港区のタワマンということもあり、購入時から市場価格は上昇し「含み益」を抱えるはずが、「マンションを売ったとしても、どこも値上がりしており、引っ越す先がない」と恨み節をこぼす。むしろ、タワマンの豪華な設備のために管理費や修繕積立金が毎月4万円以上かかり、これも赤字の要因となっている。

住宅ローン金利上昇に戦々恐々

現在、男性を悩ませるのが住宅ローン金利の上昇だ。日本銀行は7月、「異次元緩和」を終了し、利上げを決めた。すでに男性が契約するネット銀行は10月に基準金利を改定すると発表している。来年1月から金利が引き上げられることとなり、返済額が増える計算だ。

「日本では金利は上がらないので、できるだけレバレッジを効かせて買うのが賢いというインフルエンサーの言うことを信じていたが、騙された」と憤るが、後の祭りで、いまから戦々恐々としているという。

9月27日投開票の自民党総裁選では、正社員の解雇規制や金融政策も議論の遡上に上がっている。「仮に解雇されるような事態になったら、子供が私立中学を辞めたり、受験を諦めたりさせる可能性もあるので絶対に反対だ」と悲痛な表情だ。

「誰が首相になってもいいから、これ以上金利だけは上げないでほしい」と訴える。ぬるま湯につかったJTCのサラリーマンにとって、労働環境や金融市場の変化に翻弄される日々は今後もしばらく続きそうだ。