就職を機に上京する際、〈リーバイス〉や〈リー〉、〈エヴィス〉など、私に合うサイズのものを10本譲り受けました。ボタンフライで履き慣れず、実はクローゼットに眠ったままになっていましたが、今後はガシガシ履いていく予定です。
父から受け継いだ「記憶」のバトン。
今回の特集は、「使い続けたくなる、愛しいもの」。初めての特集参加にどきどきしながら、素敵な方々の長年の愛用品について話を伺ってきました。紹介してもらったアイテムの中には、私より年上のものもちらほら……。傷や毛羽立ち、色落ちにもストーリーがあって、その「記憶」こそが、それ自体を「愛しいもの」たらしめている理由のひとつなのだと、恥ずかしながら浪費癖のある私にとっては、新たな価値観が生まれる取材となりました。
さて、そんな私にも最近、ずっと大切にしていきたいと思えるものができました。それは、父から譲り受けたビンテージのジーンズ。よく見ると、財布の跡に沿って色落ちしているポケットや、擦れてほとんど見えなくなっている革パッチなど、父(もしくは父より前の所有者)が愛用していた頃の「記憶」がたくさん。私自身が残したものではないですが、父からかけがえのないバトンを受け継いだような気持ちになって、「あぁ、ものの記憶を愛おしむってこういうことなんだ」と、胸にすとんと落ちた気がしました。
「記憶」のほかにも、つくりの良さや美しさなど、ひとつのものを長く使い続ける理由は人それぞれ。今号には、自分では思いつかないような、様々な価値基準が登場します。読み終わった後にはぜひ、クローゼットを覗いてみてください。これまで何とも思っていなかったものに、心がふるえるかもしれません!
(本誌編集部/MH)
&Premium No. 131 LONG-TIME STAPLES / 使い続けたくなる、愛しいもの。
ファッションやライフスタイルにまつわるもの選びにおいて、時間をかけて長く付き合っていく姿勢が、これまで以上に必要とされているように思います。でも、ただ漫然と「長く使い続ける」ことだけが重要ではなく、それを使ったり、身に着けたときに、出合った頃と変わらぬ「愛おしさが続いている」ことも、忘れてはならない大切な要素なのではと考えます。初めて手にしたときの高揚感、作り手のこだわりに惚れ惚れとしたこと、使い続ける日々の中で紡がれた大切な思い出……。そういったさまざまな「記憶」が、人とものを、長きにわたって、幸せなかたちで繫ぎ合わせていくのです。〈ミナ ペルホネン〉のデザイナー・皆川明さんをはじめ、たくさんの方々に「使い続けたくなる、愛しいもの」にまつわるエピソードについて聞いてみました。
もっと読む