ネガティブな表現は長くなりがち…ポジティブに言い換えよう!

ネガティブな文章が長くなってしまう理由は、「なぜダメなのか」という説明を必要とするからです。また「怒り」や「悲しみ」というマイナス感情を文章として表現しなくてはなりません。結果として文章が長くなりがちなのです。しかし、ネガティブな文章は、ポジティブに言い換えると、文章がスッキリします。

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「打合せが終わるまで、参加できません」→「打合せが終わったら、参加します

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前者と後者を比べてみると、後者の方が少ない文字数になっています。前者を否定文、後者を肯定文と言います。両者を比べると、後者の方が文章のポイントがはっきりとします。もう1つ例を挙げてみましょう。

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「細部にこだわりすぎてしまう気持ちは、わからないわけではない」→「細部にこだわりすぎてしまう気持ちは、わかる

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このように肯定文に言い換えることで、文章がスリムになります。否定文の一種に「二重否定」があります。文章の中に否定のニュアンスを含んだ言葉が2つ以上含まれる文章についてそう言います。

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「情報漏洩を防ぐため、社内のパソコン以外は使用しないでください」→「情報漏洩を防ぐため、社内のパソコンを使用してください

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この文章では「以外」と「しない」が否定語です。「以外」をカットし「しない」を肯定文にすることで、文章はスッキリします。また「嫌いなわけではない」「悪くはない」などと言った二重否定は、否定を否定しているので肯定の意味を持ちます。

ただネガティブな言葉が相手に与える印象はマイナスです。できることなら、否定語はポジティブに言い換えた方が、相手に対する印象もよくなるでしょう。

【ポイント】

ネガティブな文は、ダラダラ長くなる。

ポジティブに言い換えると、文章はスッキリする。

二重否定は肯定の意味もある。

ポジティブな表現は、相手に対する印象をよくする。

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「語彙」が増えれば更にスマートな文章を書けるようになる

文章を書いていると、「これ以上はもう削ることができない」という状況に遭うことがあります。そんなときこそ、これまで学んだ語彙の出番です。説明の文章を熟語に置き換えることができれば、大幅カットも可能です。次の文章を読んでください。

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「プロとしての、自信や振る舞いを感じます」

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意味はわかるのですが、なんだか気が抜けたような、もっと言いようがあるような思いがする文章ですね。では、次の文章ではいかがでしょう。

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「プロとしての矜持を感じます」

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2文とも書いている内容は同じです。しかし、後者の文章の方が短く引き締まっている気がしませんか。これが「語彙力」の力です。もう1つ例を出してみましょう。

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「試合は、彼が思いのままに振る舞う結果になった」→「試合は、彼の独壇場になった」

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「独壇場」という言葉に説明を入れ替えたおかげで、文章はずいぶん短く、そして明確になりました。このように、語彙力があれば、文章をスッキリと読ませることができるのです。つまり知っている言葉の数が多ければ多いほど、文章を短くすることができるわけです。

語彙力を高めることの効用はそれだけにとどまりません。まず、語彙力が豊かな人は言語化能力にも長けています。頭の中にある茫洋とした考えを明確な形と意味を持ったものとして文章化することができるでしょう。そのため、企画書や報告書などのビジネス文書においても、社会人としてふさわしい表現が得意になります。そして豊かな語彙力から紡ぎ出される魅力的な言葉は、相手の心をつかみ、自分の意図通りに相手に行動を促します。

また、執筆においては、知らずにやってしまいがちな幼稚な表現を避け、思慮に富んだ文章を書くことができます。本を読み、文字の意味を調べ、自分の物にしていく。そうした積み重ねがあなたの語彙力を高めてくれるでしょう。

【ポイント】

●語彙力を高めると文章のIQが上がる。

●言語化能力は、語彙力に比例する。

●語彙力強化でビジネス文書のグレードが高まる。

●説得力ある文章は語彙の活用にある。

【監修】山口 謡司

大東文化大学名誉教授、平成国際大学新学部設置準備室学術顧問

1963年、長崎県に生まれる。フランス国立社会科学高等研究院大学院に学ぶ。ケンブリッジ大学東洋学部共同研究員などを経る。 著書にはベストセラー『語彙力がないまま社会人になってしまった人へ』(ワニブックス)をはじめ、『文豪の凄い語彙力』『一字違いの語彙力』『頭のいい子に育つ0歳からの親子で音読』『ステップアップ0歳音読』『いい子が生まれる 胎教音読』、監修に『頭のいい一級の語彙力集成』(以上、さくら舎)などがある。