ここ数年、日本を投資先として敬遠する動きが広がっています。しかし、投資判断において日本の技術力や市場の特異性、そして世界的な経済状況を見落とすことはリスクとなり得ます。本稿では、香港で産業調査に従事し、英国でMBAを取得後、20年以上にわたり株式分析やファンド運用に携わる⾼⾐紗彩氏の著書『ポートフォリオ・マネジメントで一生お金に困らない人になる!』(すばる舎)から、日本を投資先から外すべきかを再考し、見逃されがちな要素について考察した箇所を一部抜粋・編集してお届けします。
「日本円は紙屑になる」と煽る人たち……
ここ数年、日本を投資先から外している方が非常に多くなっています。少子高齢化と労働人口の減少といった人口動態的な理由からです。
特に海外の投資ファンドを売っていたり仲介していたりする方々が、「早く資産をドルに移しておかなければ、日本円は紙屑になります」などと煽っています。
この結論は別の要素をまったく考慮していません。たとえば、日本には世界の既得権益者から世の中に出すことを封じられている、日本にしかない技術がたくさんあります。世界は今、人類史上まれに見る転換期を迎えています。その転換後には、日本の技術が世界に見出されていく可能性があるのですが、そのことはまったく考慮されていません。
また、2024年2月時点で、先進国の中央銀行はインフレと景気後退懸念の間で微妙な舵取りを迫られており、利上げ局面に終止符が打たれたと見られています。米国で中央銀行の役割を果たしているFRBは、2024年も政策金利は高い水準で維持する必要性があるとの声明を発表しています。欧州も同じ状況です。そのような中、日本は先進国の中で唯一、量的緩和政策を維持していて、その効果を享受している国です。
さらに、これまで世界の投資家から見向きもされなかったおかげで、日本株の多くはいまだ割安に放置されています。世界のプロの投資家は、現金を持てる割合が決められています。多くても5%です。常に、どこかに資金を投資していなければならないのです。
米国経済が景気後退に入るか、ソフトランディングかハードランディングかのはざまに置かれており、欧州はウクライナでの戦争、イスラエルの戦争など、地政学リスクに悩まされています。資産を配分できる先として、懸念事項が少ない日本にスポットが当たりやすい状況になっています。
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ウォーレン・バフェットの投資が示した日本市場のポテンシャル
私は数年前から、「日本を投資対象から外すな、資産を海外に逃すな」とお伝えしてきました。2023年の春には、ウォーレン・バフェットが日本の商社5社の株を購入したことをきっかけに、日本株が世界の株価の上昇を牽引しました。そして、2024年2月には史上最高値を更新する動きとなりました。全資産を海外に移してしまった方々は、この上昇を享受できなかったことになります。
株価を動かす要因は一つや二つではありません。どのファクターが株価を動かす要因になるかは、タイミングによっても変わってきます。新たなファクターが出てくる可能性は常に存在します。誰一人として事前には想定できていなかったことが、大きく株価を揺るがすことも少なくありません。
2020年初の段階で、コロナで社会がロックダウンすることを予測できた人がいたでしょうか。2022年初の段階で、ロシアがウクライナに攻め入ることを予測できていた人がいたでしょうか。
相場を動かす要因は、時に私たちの想像を超えます。謙虚になることが大切です。
⾼⾐ 紗彩
株式会社ミッション・ミッケ人生デザイン研究所 代表取締役