物件を売却する際は、一般的に不動産会社に仲介を依頼して買主を探してもらいます。その時の不動産会社選びや物件情報の説明などは非常に重要で、「どの不動産会社でも同じ」「よくわからないからお任せで」と手を抜くと、足元を見られて損をしてしまう可能性があります。そこで今回は、不動産コンサルティング会社〈さくら事務所〉の創業者である長嶋修氏と〈さくら事務所〉の共著『マンションバブル41の落とし穴』(小学館)から一部抜粋し、物件を売却するのコツついてご紹介します。

納得の行く価格で家を売るためのコツとは?

自分が住むための不動産を買う場合、なるべくいい物件を安く買いたいところですが、自分にとって都合のいいタイミングと、不動産市況が安くなっているタイミングが合致するとは限りません。

売る場合も同様で、高値で売りたいと思っても、そう都合よく事が運ぶかどうかは難しいところです。今のように市況が好調であっても、必ずしも高く売れるわけではありません。

たとえば自分が5,000万円で持ち家を売り出したとき、同じマンションでまったく同じ広さ・間取りの物件が3,000万円で売り出されていたら、絶対に売れないでしょう。これは極端な例ですが、不動産売買はマクロの市況以上に、ミクロの競合に左右されがちなものであることは事実です。

売却を検討する際は、一般的に不動産会社に仲介を依頼し、買主を探してもらいます。この不動産会社選びは非常に重要で、「うち、高く売りますよ」などと根拠のないことを言ってくるところを選ぶのはNG。高い査定額をつけたからといって、実際にその値段で売却できるとは限らないので、査定額よりも売るためにどんな工夫をしてくれる会社なのかをチェックする必要があります。

高く売るために重要なのは、マーケットに合わせて柔軟に対応することです。たとえば、まず5,000万円で売り出して様子を探る。1週間で問い合わせ10件以上、内見希望が2件以上入らなければ、価格を少し下げるといった具合に、マーケットにおける引き合いの強弱を見計らいつつ、常に最適な戦略を考えてくれる不動産会社がベストです。

仮に同じマンション、同じ広さの部屋で、急いで売りたいのか3,000万円で売却している物件が出ていたら、いったん売るのをやめて様子を見ましょう。同じタイミングで5,000万円で売り出したら絶対に売れず、価格を引き下げざるを得なくなるからです。

住み替えを検討していて早く売りたいケースなども多く、焦ってしまうこともありがちですが、必ず足元を見られてしまうので、納得の行く価格を守ってじっくり売りたいところ。かといって半年や1年もずっと売却情報を出し続けていると、頻繁に物件情報を見て物件を探している人に「売れ残り」のような印象を与えてしまいます。

情報は鮮度が命なので、古くなると見向きもされなくなります。そのため、物件情報を3カ月出しても売れなければ、いったん売却を中止して1カ月休む。その後、多少内容をリニューアルして再び物件情報を出せば、その情報の鮮度は保たれます。戦略に長けた不動産会社であれば、このような駆け引きはお手の物のはずです。

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物件のメリットをアピールする方法とは?

すべてを不動産会社任せにするのではなく、売主としてもできることはあります。

買主は物件情報サイトを見て情報収集をするため、物件の説明文は非常に重要です。書くのは不動産会社の担当者ですが、その人は実際に住んでいるわけではないので、住んでみたからこそわかるようなリアリティのある紹介文は書けません。

売主のほうから「そもそも自分がこの物件をなぜ買ったのか」「住んでみて良かったのはどんなところか」などを文章にまとめて、不動産会社に渡すといいでしょう。

「雨の日でも、駅から濡れずに家に帰れる」「リビングが広々していて明るい」「駅からかなり近いけど、線路側の部屋ではないから騒音は気にならない」「晴れた日は富士山がよく見える」「高層階なので夜景が最高にきれいで癒やされる」など、具体的なメリットを挙げるのがおすすめ。

景色について言及するなら、写真を一緒に不動産会社に渡しましょう。リノベーションを行っているなら、その点も詳細にアピールを。

たとえば「トイレ・2018年に交換済み」などと書くだけより「トイレ・2018年にTOTOのハイグレード商品『〇〇(商品名)』に交換」と書いたほうが、格段に魅力はアップします。ワークスペースのようにこだわった場所があるなら、そこも売りになるでしょう。

買主は一度や二度内見しただけでは、物件について隅々まで理解することはできません。ですので、このように詳細な説明があると、俄然関心を高めてくれるものです。うまくアピールすれば、その買主は物件を「買ってくれる人」ではなく「買いたくて仕方ない人」になっていきます。そこまでいけば、高値で売却できる可能性はかなり高くなってきます。

大規模なタワマンなどは、住戸数が多いためにライバルも多くなります。戸建住宅だとまったく同じ条件の物件というのは存在しませんが、マンションだとほぼ同じ条件の部屋もあるので、同時に売り出されたときにはライバルになります。そこで差別化をするためにも、前述のようにアピールをすることが大きな意味を持ってくるのです。

長嶋 修

さくら事務所 会長