大切な風景を思い出させてくれる存在。
深みのある優しい歌声、そして日常の風景に彩りを与えてくれるような歌詞で多くのファンから支持を得ている、ハナレグミの永積崇さん。に連動して、永積さんにも長く使い続ける、愛しいものについて聞いてみました。紹介してくれたのは、高校生の頃に祖父から譲り受けた木製のスピーカー。
「メーカーを調べても見つからなかったのですが、おそらく1950年代の終わりから60年代頃に祖父が購入したもの。子どもの頃、祖父の家に遊びに行くとリビングに世界中の工芸品や時計がいくつも飾られていて、このスピーカーの上にも木のおもちゃが何体も並んでいました。その空間が大好きだったので、祖父が家を手放すことになったとき、思い出を側に置いておきたいと思って譲り受けることに。当時は実家に住んでいて、自分の部屋には大きすぎましたが(笑)。このサイズのスピーカーが本領を発揮するにはそれなりに広い空間が必要で、一人暮らしを始めてもなかなか持っていくことができなかったのですが、去年引っ越した家にやっと迎え入れることができました。壁のコーナーに収まりの良い三角形のつくりで、面取りされた角の表板は経年変化によって味のある色合いに。ただの音が出る箱ではなく、インテリアとしても日本の家に馴染むように作られたのが伝わってきます。中身は〈小松音響研究所〉にメンテナンスしてもらったのですが、外見はそのまま。自分が使う楽器も同じで、傷がある方がともに過ごした時間が目に見えるようで安心します」
(広告の後にも続きます)
自分の歌の道標となった一曲。
「朝起きて、レコードをかけるのが日課になりました。木製だから、音の響き方が柔らかで奥行きがあるのがいい。ジャズなど、ナチュラルな空気感を伴う音楽に合います。大音量で流すよりも、心地よい音量で、朝の身支度やトレーニングをしながら耳を傾ける時間が好き。祖父からもらったレコードが一枚だけあって、Julie Londonの「I Left My Heart In Sanfrancisco」。Julie Londonは女優から歌手に転向した人で、聴く人に想像させるような遊びのある歌い方が魅力的です。女性の歌声に憧れていた時期もあったのですが、彼女の少し低くて中性的な声が自分の音楽における道標となりました。この曲をかけながら、祖父もこうやって聴いていたのかなと想像してみたり。僕の音楽も、聴いた人が何か大事なことを思い出すきっかけになれたら良いなと思って作っています。新しくリリースしたアルバム『GOOD DAY』では、陽の光が差している、太陽が沈む前の時間を想起させるような音を目指しました。ここ数年コロナの影響もあったりした中で、今回は明るさを持ったものにしようと決めて。日々、いろんなことがあるけれど、流れに身を任せながら、とりあえずタイトルのように今日1日は良い日だって言い切ることができたら良いですね」
ハナレグミミュージシャン
永積 崇 Takashi Nagazumi
1974年11月27日、東京都生まれ。高校2年の頃よりアコースティック・ギターで弾き語りをはじめる。1997年、SUPER BUTTER DOGでメジャーデビュー。2002年夏よりバンドと並行して、ハナレグミ名義でソロ活動をスタート。近年は、俳優やナレーションなど、音楽のみならず新たな活躍の場を広げている。10月より3年半ぶりのフルバンド編成による全国ツアーを開催。
Information『GOOD DAY』
ソロデビュー22年目、9枚目のアルバムを2024年9月25日にリリース。2023年の東京、大阪公演でのライブ会場限定で販売された『ビッグスマイルズ』をはじめ、iriやマヒトゥ・ザ・ピーポーなど新しい面々を迎えて作った曲など全9曲を収録。初回限定盤には、2023年10月1日 日比谷野外大音楽堂、2024年3月27日 LINE CUBE SHIBUYAで行われたライブ映像が入ったDVDの特典付き。初回限定盤¥6,600、通常盤¥2,970(ビクターエンターテインメント)。10月より3年半ぶりのフルバンド編成による全国ツアーを開催する。
hanaregumi.jp