1. 登録販売者とは?

一般用医薬品の販売を担う専門資格

登録販売者とは、2009年の改正薬事法(現在の医薬品医療機器等法。以下、薬機法)の施行により誕生した一般用医薬品(市販薬)の販売に必要な専門資格です。

登録販売者は一般用医薬品のうち第2類医薬品と第3類医薬品を販売することができます。一般用医薬品の中でとくにリスクの高い第1類医薬品については薬剤師にしか販売が認められていませんが、該当する品目は全体の1%程度に留まります。つまり、登録販売者は流通している市販薬のうち、かなり多くの品目を取り扱うことができます。

*医師の処方箋がなくても薬局や薬店などで薬の専門家の助言を参考に、自分で選択・購入できる医薬品を一般的にOTC医薬品と呼び、要指導医薬品・一般用医薬品・薬局製造販売医薬品(通称:薬局製剤)がこれに該当する。市販薬や大衆薬と呼ばれることもあるが、国際的に医薬品の販売はカウンター越し(Over The Counter)におこなわれていることから、この呼称が使われるようになった。

また、この法改正によって薬剤師のいない店舗でも登録販売者がいれば医薬品を販売できるようになったことから、スーパーやホームセンター、家電量販店などの小売店が新たに医薬品店舗販売業の免許を取得し、医薬品の取り扱うことが増えました。

薬剤師が慢性的に不足していることからも登録販売者に対する需要は多く、制度開始から2022年3月末までに延べ35万人以上の方が登録販売者試験に合格しています(参考:厚生労働省)。

登録販売者と薬剤師の違い

薬剤師が薬の調剤から販売まで幅広く携わる医薬品の専門家なのに対して、登録販売者はあくまで医薬品の“販売”に関する専門資格です。

そのため、資格取得の要件や販売できる医薬品が異なります。

薬剤師になるには薬学部の6年制課程を卒業する必要がありますが、登録販売者になるのに学歴(専門教育を受けた経験)は問われません。

薬剤師がすべての一般用医薬品を販売できるのに対し、登録販売者が販売できるのは一般用医薬品のうち第2類医薬品と第3類医薬品に限られます。

 

登録販売者

薬剤師

根拠法

薬機法

薬剤師法

資格の位置付け

都道府県知事の登録

厚生労働大臣の免許

受験資格

とくになし

薬学部(6年制)卒

主な業務

医薬品の販売

医薬品の調剤
医薬品の販売

販売できる
一般用医薬品

第2類医薬品
第3類医薬品

第1類医薬品
第2類医薬品
第3類医薬品

薬剤師について詳しくはこちらの記事でも解説しています。

>薬剤師とは?

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2. 登録販売者になるには?

登録販売者試験に合格し、販売従事登録をおこなう必要がある

登録販売者として働くには、登録販売者試験に合格し、販売従事登録を受ける必要があります。

登録販売者の販売従事登録について

勤務する店舗がある都道府県で登録申請する試験を受けた都道府県以外でも、登録申請することができる複数の都道府県で登録することはできない登録を受けた都道府県以外でも、登録販売者として働くことができる

登録販売者試験を受験するのに学歴(専門教育)や職歴(実務経験)は問われませんが、試験に合格し販売従事登録後すぐに単独で売り場に立つことはできません。

最初は研修中の登録販売者として、必ずほかの登録販売者や薬剤師の管理・指導を受けながら働きます。その間は一人でシフトに入ることができず、名札にも「研修中」と明示しなくてはなりません。

一定期間店舗で医薬品販売の経験を積むことで、初めて正規の登録販売者として独り立ちすることができます。この正規の登録販売者を法的には「店舗管理者の要件を満たす登録販売者」と呼び、各店舗に配置が義務付けられている店舗管理者になることができます。

登録販売者の店舗管理者要件について

次のいずれかに該当すること

過去5年間のうち、医薬品の販売スタッフとしての従事期間が通算2年以上ある過去5年間のうち、医薬品の販売スタッフとしての従事期間が通算1年以上あり、所定の研修を修了している医薬品の販売スタッフとしての従事期間が通算1年以上あり、過去に店舗管理者または区域管理者の経験がある

また、登録販売者は毎年外部研修を受け、研鑽を積むことが求められています。

登録販売者の外部研修について

事業者は、毎年12時間以上の外部研修を受講させる研修機関は、研修修了後に修了証等を交付する研修機関は、次をカリキュラムに含める
1. 医薬品に共通する特性と基本的な知識
2. 人体の働きと医薬品
3. 主な一般用医薬品とその作用
4. 薬事に関する法規と制度
5. 一般用医薬品の適正使用と安全対策
6. リスク区分等の変更があった医薬品
7. その他登録販売者として求められる理念、倫理、関連法規等

登録販売者試験の概要

都道府県によって異なりますが、登録販売者試験は年に一回、8月下旬から12月上旬にかけて実施されています。

登録販売者試験は次の5つの分野から合計120問出題されます。

医薬品に共通する特性と基本的な知識(20問)人体の働きと医薬品(20問)主な医薬品とその作用(40問)薬事関連法規・制度(20問)医薬品の適正使用・安全対策(20問)

登録販売者試験の合格基準は次の2つです(両方を満たす必要があります)。

全体の正答率が70%以上各分野の正答率が35%以上、または、40%以上(都道府県によって異なる)

そのほか、登録販売者試験に関する最新情報は各都道府県の公式ページからご確認ください。

登録販売者試験の合格率の推移(全国平均)

過去5年間、登録販売者試験の合格率(全国平均)は40%台で推移しています。


参考:厚生労働省|これまでの登録販売者試験実施状況等についてより作成

登録販売者試験の合格率ランキング(都道府県別、2023年度)

2023年に実施された登録販売者試験の都道府県別の合格率は次のようになりました。

順位 都道府県 受験者数 合格者数 合格率
1位 群馬県 1,578人 871人 55.2%
2位 大分県 661人 363人 54.9%
3位 奈良県 1,645人 891人 54.2%
4位 茨城県 1,555人 835人 53.7%
5位 福岡県 2,719人 1,451人 53.4%
6位 静岡県 1,748人 922人 52.7%
7位 北海道 1,595人 817人 51.2%
8位 新潟県 789人 401人 50.8%
9位 長野県 781人 396人 50.7%
10位 熊本県 652人 318人 48.8%
11位 栃木県 1,008人 484人 48.0%
12位 神奈川県 2,881人 1,369人 47.5%
12位 愛知県 2,852人 1,355人 47.5%
14位 長崎県 436人 205人 47.0%
15位 宮崎県 385人 177人 46.0%
16位 佐賀県 725人 333人 45.9%
17位 埼玉県 2,258人 1,024人 45.3%
18位 岐阜県 864人 390人 45.1%
18位 鹿児島県 696人 314人 45.1%
20位 山梨県 327人 147人 45.0%
21位 宮城県 1,030人 460人 44.7%
22位 岩手県 582人 258人 44.3%
23位 東京都 3,729人 1,639人 44.0%
24位 石川県 717人 312人 43.5%
25位 青森県 527人 228人 43.3%
26位 千葉県 2,251人 973人 43.2%
26位 三重県 702人 303人 43.2%
28位 山形県 439人 184人 41.9%
29位 富山県 538人 224人 41.6%
30位 福島県 1,177人 472人 40.1%
31位 秋田県 353人 140人 39.7%
32位 沖縄県 486人 192人 39.5%
33位 関西広域連合* 8,885人 3,057人 34.4%
34位 福井県 394人 133人 33.8%
35位 広島県 975人 299人 30.7%
36位 山口県 620人 184人 29.7%
37位 島根県 227人 64人 28.2%
38位 岡山県 932人 262人 28.1%
39位 鳥取県 240人 63人 26.3%
40位 愛媛県 526人 133人 25.3%
41位 香川県 425人 106人 24.9%
42位 高知県 304人 65人 21.4%

*参考:令和5年度登録販売者試験実施状況
*関西広域連合は滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、和歌山県、徳島県の6府県の合計

合格率が最も高い県(55.2%)と低い県(21.4%)では2倍以上の差があるほか、同じ都道府県でも年によって合格率にバラツキが見られます。