1. 社会福祉士とは?
相談援助を通じて、困難を抱える人と社会資源をつなぐ福祉の専門家
社会福祉士は、社会福祉士及び介護福祉士法(1987年制定)に基づく国家資格で、日常生活を送るのになんらかの困難を抱えている人の相談に応じ、その助けとなる福祉の専門家です。
社会福祉士の専門業務は相談援助と総称されます。具体的には面接を通じて本人の置かれている環境やこれからどうしたいか意向を把握したうえで、必要な社会福祉サービスにつなげたり、関係者と連携して支援体制を整えたりします。
支援対象は生きていくのに困難な環境に置かれているあらゆる人々──障がい者・難病患者・生活困窮者・被虐待者など──となるため、高齢者福祉、障害者福祉、児童福祉、保健医療などさまざまな領域で社会福祉士が活躍しています。
例えば、社会福祉士は社会福祉主事や児童指導員の任用資格の一つになっているほか、介護施設では生活相談員、医療機関では医療ソーシャルワーカー(MSW)、学校ではスクールソーシャルワーカー(SSW)として働くことができます。
社会福祉士は名称独占資格のため、社会福祉士の資格を持っていなくてもこれらの仕事に就くことは可能です*。ただし、福祉の専門知識や技術を持つことを示す代表的な資格として応募要件に挙げられることが多いため、相談援助に携わるなら持っておきたい資格です。
*ほかの福祉系資格を保有している場合や福祉系大学で所定の科目を修めている場合、一定の実務経験がある場合に就業できることがある
なお、社会福祉士の資格登録者数は約29万人となっています。
社会福祉士と介護福祉士、精神保健福祉士の違い
社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士の3つは、福祉に関わる国家資格として三福祉士と総称されます。
社会福祉士と精神保健福祉士が相談援助を専門とするのに対し、介護福祉士は直接援助(介護・介助)を専門とします。
また、社会福祉士が障がいを抱える人に限らず日常生活を営むのに困難を抱えるあらゆる人を支援対象とするのに対し、精神保健福祉士は精神に障がいを抱える人に特化した専門職です。
社会福祉士 |
介護福祉士 |
精神保健福祉士 |
|
---|---|---|---|
根拠法 |
社会福祉士及び介護福祉士法 |
精神保健福祉士法 |
|
施行年 |
1987年(昭和62年) |
1997年(平成9年) |
|
登録者数 |
約29万人* |
約194万人* |
約10万人* |
支援対象 |
身体や精神に障がいを持つ人、環境上の理由から、日常生活を営むのに支障がある人 |
身体や精神に障がいを持つ人 |
精神に障がいを持つ人 |
業務 |
相談援助 |
直接援助 |
相談援助 |
勤務先 |
高齢者福祉施設・障害者福祉施設・児童福祉司施設・地域福祉施設・病院・診療所・市区町村・学校など |
高齢者福祉施設・障害者福祉施設・病院・診療所など |
精神科病院・精神科診療所・一般病院・障害者福祉施設・高齢者福祉施設・市区町村・地域福祉施設など |
*参考:公益財団法人 社会福祉振興・試験センター|登録者数の状況より
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2. 社会福祉士になるには?
社会福祉士国家試験の受験資格
年に一回実施される国家試験に合格し、登録を受けることで社会福祉士を名乗ることができます。
社会福祉国家試験の受験資格を得るルートは大きく分けて3つ、細分化すると12通りあります。
福祉系大学ルート短期養成施設ルート一般養成施設ルート
1. 福祉系大学ルート
福祉系の大学等で指定科目(全18科目)の単位を取得している場合、社会福祉士国家試験の受験資格を得られます。ただし、短大や専門学校など修業年限が4年に満たない場合は、それぞれの期間に応じた相談援助の実務経験が必要です。
ポイント
指定科目は演習や実習を含む全18科目卒業したのが3年制の学校の場合は1年、2年制の学校の場合は2年、それぞれ相談援助の実務経験が必要
2. 短期養成施設ルート
福祉系大学等で指定科目を取得していなくても、社会福祉士の短期養成施設を修了することで国家試験の受験資格を得られるルートがこちらです。
短期養成施設に入学できるのは、福祉系大学等で基礎科目(全12単位)のみを取得した場合(修業年限が4年に満たない場合はそれぞれの期間に応じた実務経験が必要)、社会福祉主事養成機関を卒業したうえで相談援助の実務経験が2年ある場合、査察指導員や児童福祉司などの行政職としての実務経験が4年ある場合となっています。
ポイント
社会福祉士の短期養成施設は、通信課程のみで期間は9ヶ月が一般的(2021年4月現在)基礎科目は全12科目で、演習や実習が含まれない卒業したのが3年制の学校の場合は1年、2年制の学校の場合は2年、それぞれ相談援助の実務経験が必要各都道府県から社会福祉主事養成機関の指定を受けている学校は全国で約30校あるが、そのうち社会福祉士の受験資格として認められるのは修業年限が2年以上の課程に限る査察指導員・児童福祉司・身体障害者福祉司・知的障害者福祉司・老人福祉指導主事の5つの行政職は、いずれも社会福祉主事任用資格などの福祉の専門知識や技術が必要とされる
3. 一般養成施設ルート
上記のいずれに該当しなくても、社会福祉士の一般養成施設を修了することで国家試験の受験資格を得られるルートがこちらです。
一般養成施設に入学できるのは、福祉系ではない一般の大学等を卒業している場合(修業年限が4年に満たない場合はそれぞれの期間に応じた実務経験が必要)、または、相談援助の実務経験が4年ある場合となっています。
ポイント
社会福祉士の一般養成施設は1年半程度の通信課程が多いが、1年程度で通える昼間課程や夜間課程もある(2021年4月現在)一般大学等(4年)に該当するのは、大学・大学院・4年制の専門学校など一般短大等(3年)に該当するのは、3年制の短大や専門学校、高校や特別支援学校の3年制専攻科など一般短大等(2年)に該当するのは、2年制の短大や専門学校、高校や特別支援学校の2年制専攻科、高等専門学校(高専)など卒業したのが3年制の学校の場合は1年、2年制の学校の場合は2年、それぞれ相談援助の実務経験が必要
実務経験に該当する施設や職種など、社会福祉士国家試験の受験資格について詳しくは試験を実施する公益財団法人 社会福祉振興・試験センターの公式ページをご確認ください。
>公益財団法人 社会福祉振興・試験センター|社会福祉士国家試験|受験資格
社会福祉士国家試験の概要
社会福祉士国家試験は年に一回、2月に実施されています。
9月上旬〜10月上旬:願書等提出2月上旬:試験日3月上旬:合格発表
出題範囲は2024年度(第37回)より変更があり、1問1点の129点満点で出題されます。ただし、既に精神保健福祉士の資格を持っている場合、共通科目が免除されます。
社会福祉士国家試験に合格するには、次の2つの基準をクリアしなければなりません。
総得点の正答率が60%程度(問題の難易度によって補正あり)6科目群すべてで得点すること(0点の科目群がないこと)
合格基準は正答率60%が目安となっていますが、毎回問題の難易度によって補正が入ります。実際、過去の5年間の合格基準は88〜105点と、年によって開きがあります。
社会福祉振興・試験センター|社会福祉士国家試験の合格基準及び正答について(第32回、第33回、第34回、第35回、第36回)より作成
社会福祉士国家試験の合格率の推移
社会福祉士国家試験の過去5年間の合格率は29〜58%前後で推移しています。
社会福祉振興・試験センター|第36回社会福祉士国家試験の合格発表についてより作成
今回は受験した3万4,539人のうち2万50人が合格し、合格者数は過去最多を更新。合格率も前回から13.9ポイント上昇し、過去最高の58.1%を記録しています。
介護福祉士と精神保健福祉士の合格率は70%程度となっています。社会福祉士は介護福祉士や精神保健福祉士と比較すると出題範囲が広く、三福祉士の中でもまだまだ難易度が高いと言えます。
社会福祉士国家試験合格者によると、過去問を繰り返し解くことが合格への近道になるようです。