3. 社会福祉士の勤務先と仕事内容
公益財団法人 社会福祉振興・試験センターの調査によると、社会福祉士は福祉をはじめとして、医療や行政、学校など幅広い領域で活躍しています。
参考:公益財団法人 社会福祉振興・試験センター|令和2年度社会福祉士就労状況調査結果より作成
*社会福祉士資格保有者のうち、「現在、福祉・介護・医療の分野で仕事をしている」と回答した人が対象(「現在、福祉・介護・医療の資格者を養成する高校・専門学校・大学等で仕事をしている」、「現在、福祉・介護・医療以外の分野で仕事をしている」、「現在、仕事をしていない」と回答した人は除外)
高齢者福祉系
高齢者福祉施設の相談員として、施設の利用者やその家族からの相談に応じます。
デイサービス・ショートステイ・特別養護老人ホーム(特養)・軽費老人ホーム・介護付き有料老人ホームなどでは生活相談員、介護老人保健施設(老健)では支援相談員、福祉用具貸与・販売事業所では福祉用具専門相談員と呼ばれます。
また、地域包括支援センターの相談員として働く場合は、地域で暮らしている高齢者やその家族が広く支援対象となります。
地域包括支援センターには、“保健医療の専門家”である保健師、“介護保険の専門家”である主任ケアマネジャー(主任介護支援専門員)、“社会福祉の専門家”である社会福祉士の3職種が常駐しているため、それぞれの専門性を活かしながら連携して問題の解決策を探ります。
なお、これらの実務経験を5年以上積めば、ケアマネジャー(介護支援専門員)の試験を受けることができます。実際、社会福祉士の約4割がケアマネの資格を保有しています*。
*参考:公益財団法人 社会福祉振興・試験センター|令和2年度社会福祉士就労状況調査結果
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障害者福祉系
障害者福祉施設の支援員や指導員として、障がいを抱える人の自立生活を支えます。
障害者福祉に関わる職種の中でも、主に日常生活をサポートするのが世話人や生活支援員、主に生産活動(働くこと)をサポートするのが職業指導員や就労支援員となります。
*業務に身体介護が含まれるのが生活支援員で、含まれないのが世話人。能力開発や職業訓練を中心にサポートするのが職業指導員で、仕事探しや就職先への定着を中心にサポートするのが就労支援員とされている。ただし重複する業務も多いため、同じ業務内容でも事業所によって用いる名称が異なることがある
これらの施設で実務経験を5年以上積むと、基礎研修と実践研修を受けることでサービス管理責任者(サビ管)として、相談支援従事者初任者研修を受けることで相談支援専門員として働くことも可能です。
相談支援専門員は、2006年の障害者自立支援法の施行と共に誕生した、障がいを持つ人と社会福祉サービスをつなげる専門職です。障がいを持つ人の自己決定権を尊重し、社会の中で自立して生きていけるよう、個人と社会をつなぐ窓口となることが求められます。
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児童福祉系
児童相談所の相談員や、児童福祉施設の指導員(児童指導員)・支援員として、子どもやその家族が抱える課題に対処します。
児童福祉施設には乳児院や児童養護施設、児童厚生施設(児童館・児童遊園など)、母子生活支援施設、児童自立支援施設など、目的に応じてさまざまな形態がありますが、とくに需要が増えているのが障害児支援の分野です。
2012年の児童福祉法改正によって、発達障害を含む精神障害を持つ児童が支援対象に加わったことから、児童発達支援(児発)や放課後等デイサービス(放デイ)などの障害児通所施設(療育施設)が急増しています。
なお、これらの施設で実務経験を5年以上積むと、基礎研修と実践研修を受けることで児童発達支援管理責任者(児発管)として、相談支援従事者初任者研修を受けることで相談支援専門員として働くことも可能です。
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地域福祉系
社会福祉協議会(社協)や福祉事務所で、地域が抱えるさまざまな社会課題に対処します。
社会福祉協議会は、地域のさまざまな関連機関と連携しながら誰もが安心して暮らせるコミュニティづくりを推進する民間の組織(社会福祉法人)です。貸付や訪問・見守り・配食事業などさまざまな福祉サービスを提供したり、サロンやボランティアセンターを運営したりすることで、地域の社会資源のネットワーク作りに貢献しています。
一方の福祉事務所は、行政機関として法律*に基づき、保護を必要とする人に対して援護・育成・更生の措置などをおこないます。実際に相談援助を担当する職員は現業員(ケースワーカー)、それを指導監督する職員は査察指導員(スーパーバイザー)と呼ばれます。これらの仕事に就くには社会福祉主事の任用資格が必要ですが、社会福祉士はその一つになっています。
*生活保護法・児童福祉法・身体障害者福祉法・知的障害者福祉法・老人福祉法・母子および寡婦福祉法の社会福祉六法
医療系
医療ソーシャルワーカーは病院内の医療相談室や地域医療連携室といった部署に所属し、患者さんやその家族からの相談に応じます。
代表的な業務が退院調整です。退院前カンファレンスを実施し、病院内外の関係者──病院からは担当医・看護師・リハビリ職など、地域からはケアマネ・かかりつけ医・訪問看護師など──と連携しながら、患者さんが退院後も安心して療養生活を送れる体制を整えます。
ほかにも、病気がきっかけで経済的な問題や家族関係の問題が表面化したり、心理的に不安定になったりすることも少なくなく、医療ソーシャルワーカーが対処すべき問題は多岐に渡ります。
医師や看護師などの医療専門職は病気が引き起こす“症状”に対処するのに対し、医療ソーシャルワーカーは病気が引き起こす“困りごと”に対処すると言えます。
行政系
都道府県庁や市区役所、町村役場において、住民からの福祉相談の窓口になります。時には複合的な理由から個々の社会福祉施設では解決困難な事例を担当することもあります。行政機関として問題を引き起こしている背景を探り、同様のことが起きないよう未然に防ぐ方法を検討したり、起きたとしても解決できるような仕組みを作ったりする役割も担います。
そのほか
学校教育関係ではスクールソーシャルワーカー(SSW)として子どもやその家族が抱える悩みと向き合います。さらに、ハローワークや障害者就職・生活支援センターなどの就業支援施設や、刑務所・少年院・少年鑑別所などの矯正施設でも、社会福祉士の専門知識や技能が役立てられています。
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4. 社会福祉士の給料
ジョブメドレーに掲載されている求人から社会福祉士の賃金相場を算出しました。なお、残業手当など月によって支給額が変動する手当は集計対象外のため、実際に支払われる賃金はこれより多くなる可能性があります。
【全国平均】社会福祉士の時給・月給・年収の相場
2023年12月時点の全国の社会福祉士の時給・月給・年収の相場は次のとおりとなりました。
下限平均 |
上限平均 |
総平均 |
|
---|---|---|---|
パート・アルバイトの時給 |
1,122円 |
1,319円 |
1,194円 |
正職員の月給 |
21万5,088円 |
26万8,978円 |
23万7,560円 |
正職員の年収* |
301万1,232円 |
376万5,692円 |
332万5,840円 |
*医療ソーシャルワーカー、生活相談員(支援相談員を含む)、福祉用具専門相談員、生活支援員の4職種の平均
*年収は「月給の総平均 × 14ヶ月(ボーナスは月給の2ヶ月分)」で試算
【エリア別】社会福祉士の時給・月給・年収の相場
エリア別の社会福祉士の賃金相場は、正職員、パート・アルバイトともに首都圏が最も高く、次いで近畿、東海、北関東と続く結果となりました。
*医療ソーシャルワーカー、生活相談員(支援相談員を含む)、福祉用具専門相談員、生活支援員の4職種の平均
*数値は「総平均」
*地域区分は、東北(青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県)、北関東(茨城県、栃木県、群馬県)、首都圏(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県)、甲信越(新潟県、山梨県、長野県)、北陸(富山県、石川県、福井県)、東海(岐阜県、静岡県、愛知県、三重県)、近畿(滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県)、中国(鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県)、四国(徳島県、香川県、愛媛県、高知県)、九州・沖縄(福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県)
【サービス別】社会福祉士の時給・月給・年収の相場
サービス別の社会福祉士の賃金相場は、パート・アルバイトの場合は医療ソーシャルワーカーが、正職員の場合は福祉用具専門相談員が最も高い結果となりました。
*数値は「総平均」