2024年9月下旬、能登半島地震の被災地を大水害が襲っている。こんな時、特に災害弱者といわれる高齢者は、情報をどう入手して身を守ったらよいのか。
NTTドコモの研究機関、モバイル社会研究所(東京都千代田区)が2024年9月9日に発表した調査「【防災】高齢者の災害情報の入手手段と災害への備え」によると、高齢者は多角的に情報を得て、災害への備えも若い人よりできていることがわかった。
しかし、弱点もある。それは何か。同研究所の災害担当者に聞いた。
シニアは「ICT」「メディア」「公的・人伝」を合わせた情報入手が多い
モバイル社会研究所の調査(2023年11月)は、全国15~79歳の男女8991人が対象。そのうち、高齢者(65~79歳)2184人の調査結果を中心にまとめた。
まず、高齢者が在宅中に大雨や台風などで被害が予想される場合、災害に関する情報(人との連絡・安否確認ではなく、災害発生場所・河川の状況・避難指示など)をどのような手段で入手するかを聞いた【図表1】。
「テレビ」が約9割と多く、次いで「インターネットのホームページ」「エリアメール、緊急速報メール」「防災無線やサイレン」が4割台並んだ。
【図表1】の結果を、「ICT」「メディア」「(自治体などの)公的および人伝(ひとづて)」の3種に分け、どのような組み合わせで災害情報を入手しているか、分析したのが【図表2】だ。3分野を合わせている高齢者が最も多く45%だった。
なお、これを年代別に比較したのが【図表3】だ。これを見ると、3分野を合わせて情報を入手しているのは高齢者が最も多い。一方、青年(15~24歳)や壮年(25~44歳)では、「ICT」のみという人が2割以上いるが、高齢者では4%しかいない。
次に、高齢者の災害への備えをみると、「ハザードマップの確認」や「避難所の確認」は高く、8割を超える【図表4】。なお、年代別の災害への備えを比較したのが【図表5】だ。これを見ると、高齢者は「スマホ用モバイルバッテリー」の用意以外は最高の割合で、いかに災害への関心が高いかわかる。
さて、【図表2】の「災害情報の入手方法」と【図表4】の「災害に対して備えている個数(0~10個)」を合わせて見た結果が【図表6】だ。
複数の分野から情報を入手している高齢者ほど災害に備えている個数が多いのが特徴だ。やはり、災害情報はさまざまな方法で入手するとよいということだろうか。
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地域密着の情報が得意なのは、シニアの長所
J‐CASTニュースBiz編集部は、調査をまとめたモバイル社会研究所の水野一成さん(防災・シニア・子ども調査担当)に話を聞いた。
――じつは私も74歳です。【図表1】の結果をみると、テレビに偏っている印象を受けます。私も災害情報はまずテレビの速報に頼っていますが、停電になった場合や、自分の地域周辺の情報を考えると心もとないです。災害担当者としてズバリ、今回の高齢者の調査結果をどう評価しますか。
水野一成さん 【図表3】の若中年層と比較しても、よりいくつかの方法で災害情報を得ていることは、その情報が停電などで使えなくなった時など、有効だと思います。
「メディア」「ICT」「公的、人伝」はそれぞれ、迅速性や正確性、また地域に密着した情報など、得意な事項があり、それらを上手く組み合わせて利用していくことが重要と思います。シニアは「ICT」と「メディア」と「公的・人伝」を合わせた比率が最も高い点は長所といえるのではないでしょうか。