事実上次期総理を選ぶ自民党総裁選挙が2024年9月27日に投開票される。9人が立候補、乱立状態だが、企業は総理にどんな経済政策を求めているのか。

そんななか、帝国データバンクが9月17日、「企業が新政権に求める経済関連政策に関するアンケート」を発表した。

「中小企業支援」「物価高対策」「個人消費拡大」の上位に並んだが、大企業と中小企業との間で、大きな違いが見られた。いったいどういうことか。調査担当者に聞いた。

企業の希望は「中小企業支援」「物価高対策」「個人消費拡大策」「個人向け減税」が4本柱

帝国データバンクの調査(2024年9月6日~10日)は、全国1996社が対象。

新政権に求める経済関連政策(複数回答)では、「中小企業向け支援策の拡充」「物価高対策」「個人消費の拡大策」「個人向け減税」がいずれも4割台で上位に並んだ【図表1】。

しかし、規模別にみると、大企業と中小企業では違いが際立つ結果となった【図表1】。

大企業では「人材確保・定着」や「賃上げ関連政策」が目立つ。特に「賃上げ促進」は中小企業より15ポイントも上回った。

一方で、中小企業では「中小企業への支援」や「法人向け減税」を求める企業が多く、大企業より10ポイント以上高い結果となった。

ちなみに、同社が9月13日に発表した「岸田政権による経済政策への評価の企業アンケート」では、「岸田政権の元では大企業は大きな利益をあげたが、中小企業は逆に厳しくなっている」といった厳しい声も聞かれた。

業界別にみると、建設業では「人手不足への対応」が高く、製造業、運輸・倉庫業では「価格転嫁対策」が目立つ。また、小売業では「個人消費の拡大策」に期待の声が多かった【図表2】。

フリーコメントでは、企業からこんな声が相次いだ。

「中小企業は雇用を維持するために賃上げをせざるを得ないが、粗利がないなかでは大変厳しい。中小企業をいかに盛り上げて成長につなげるかが重要で、その方向性と施策を示してほしい」(機械製造)

「消費税減税、省力化につながる機器やシステムの導入補助金、人手不足に対応するための諸制度の見直しをしてほしい。現在の税法がややこしすぎて、その割に効果ははっきりしない」(その他の卸売)

「価格転嫁の動きを広めないと中小零細企業はどんどん弱り、そのあおりを大企業も受け、経済は衰退する」(鉄鋼・非鉄・鉱業)

「場当たり的な補助金や給付金ではなく、税金を投入する以上その効果の実証も踏まえて、実体経済に効果のある政策を考えてほしい」(飲食料品小売)

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岸田政権下で「大企業が恩恵を受け、中小企業が逆に厳しくなった」理由

J‐CASTニュースBiz編集部は、帝国データバンク情報統括部の調査担当者に話を聞いた。

――調査からは、率直に言って、大企業は中小企業対策を優先順位が低いと考えているようにうかがえますが、いかがですか。

調査担当者 大企業にとって、「中小企業向け支援策の拡充」は自社への直接的な効果が期待できないため、どうしても中小企業との差が開いてしまいます。

しかし、大企業の各項目の順位をみると5番目に高い。対応策を通じて中小企業の業績向上につながれば、大企業にもメリットが生まれると考えられる。中小企業向け対策は優先順位が低いとは断言できないと考えます。

実際、大企業からは「新しい政権には、中小企業の元気が出る施策をお願いしたい」(機械・器具卸売)といった声も複数聞かれます。

――岸田政権下で「中小企業が逆に厳しくなった」という声が上がっている理由は何でしょうか。特に批判が強かった内容を説明してください。

調査担当者 中小企業からは「賃上げ促進」に関して批判の声が聞かれました。資金余力が小さい中小企業にとっては、賃上げの実施により経営が厳しくなったほか、賃上げができず大企業との賃金格差が開き、採用面でも格差が大きくなったといった意見があがりました。

また、岸田政権時代に開始した「インボイス制度」や「電子帳簿保存法」といった制度による負担が大きいものとなった様子がうかがえました。岸田政権下で決定したものではありませんが、中小企業では人的リソースが少ない状況を考慮して、支援策を実施するべきとの意見があがっていました。

加えて、「円安」の急速な進行に対する対応策が不十分といった批判の声もありました。輸出を行う大企業では恩恵が大きい一方で、輸入品への依存度が高い中小企業にとってはマイナスの影響が大きく、価格転嫁が図れず、下請法関連対策も不十分であるといった意見が聞かれます。

ほかにも、過去最高益、株価最高値など、大企業の業績はよくなっていますが、中小企業はまだまだ厳しい環境が続いており、大企業に対する経済施策が優先されているように映る、との意見もありました。