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新型コロナにより大きく制限された外国旅行は、パンデミックが一段落し、世界的に再び盛んになってきたように見える。だが、すべて元通りという具合にはいきそうもない。
◆再燃するオーバーツーリズム問題
外国旅行客が増えたことで、オーバーツーリズム問題も各地で再燃している。日本でも京都や白川郷など、観光地のキャパシティを大きく超える人数が一気に集まることで、地元の人の日常生活に支障をきたしたり、騒音やごみなどの環境問題を引き起こすことは広く知られる。
この傾向は世界的なもので、海外においてはオーバーツーリズムへの積極的な反対運動も持ち上がっている。
世界第2位の人気観光旅行国であるスペインではこの夏、バルセロナやマラガ、またバレアレス諸島やカナリア諸島といった人気観光地において、オーバーツーリズムに反対する人々のデモが繰り広げられた。
◆観光客への嫌がらせ
デモ行進では、「家に帰れ!」「臭いぞ!観光客」などと書かれたプラカードを手にする人々の姿が見られた。さらに、バルセロナにおいては、レストランのテラス席でくつろぐ観光客らが、水鉄砲で水を浴びせられる騒ぎまで起きた。
スペインには昨年1年で外国人が8400万人訪れており、観光業は国の経済に重要な位置を占める。だが、その一方で、地元民にとっては日常生活の質が著しく下がる問題となっている。
フランスのブルターニュ地方にある小さな港町でも、この夏はドイツ人観光客を狙った嫌がらせがニュースとなった。ドイツ人観光客をナチス呼ばわりし、ドイツ語で「帰れ」と書かれたシールなどが駐車していたドイツナンバー車に貼られたのだ(20minutes紙、8/22)。
◆新たに設定された観光税
また、ごく最近になって、いくつかの国が外国人観光客を対象に、観光税の設定や増税を決めている。ニュージーランドは、外国人旅行者に課す観光税を10月1日から約3倍値上げすると発表。具体的にはこれまでの35ニュージーランドドル(約3200円)から100ニュージーランドドル(約9000円)となる。(ル・フィガロ紙、9/3)
イギリスも10日、ビザを必要としない国のパスポートを持つ外国人を対象とする電子渡航認証(ETA)の導入を発表した。ETA取得にかかる費用は10ポンド(約1900円)だ。すでに湾岸諸国国籍者を対象に2023年11月からテスト導入されていたが、2025年1月からは日本国籍者ら、4月からは欧州の国籍者も対象となることが決まった。一旦取得したETAは2年間有効で、入国回数に制限はない。
◆高額化はオーバーツーリズム対策?
観光施設の値上げもそこここで話題になっている。フランスでは今年ルーヴル美術館が17ユーロ(約2700円)から22ユーロ(約3500円)に値上げしたのをはじめ、ほかの施設も軒並み入場料を釣り上げた。また、トルコでは、数年前モスクに改造されたアヤ・ソフィアの見学料が、今年から外国人のみ25ユーロ(約4000円)に設定された(DNA紙、1/15)。
そのほか、イタリアのローマ市は、市民以外を対象に、1ユーロのトレビの泉見学料の導入を検討している(フランス・アンフォ、9/4)。トレビの泉は町中に位置する噴水で、取り囲む三辺が道路だが、いずれも狭い通りなので、常に混雑することで知られる。
オーバーツーリズム対策を兼ねた観光費用の値上げは、おそらくこれからも続くであろう。外国旅行に踏み切るハードルは増える一方だ。