気に入っているものほど、使う頻度が高くなる。だから、汚れたり壊れたりすることも。それでも愛おしさは残るので、処分するにはしのびない。そんな思いのこもった品をプロに頼んだり、自分の手で直したりしながら使い続けている人々に、愛用品と〝直したい気持ち〞を教えてもらった。
1970年代に製作されていたレディスの矯正靴からインスピレーションを得て、フランスのシューズファクトリーと協力。’90年代に完成させた〈アナトミカ〉の定番「アルハンブラ」。
美しい白を保ちながら、壊れるまで履き続ける。
「白い靴は冬場でも足元が軽く見えるので、活躍の幅が広いんです」と、前田敬子さん。〈アナトミカ〉の白革のレースアップシューズはこれが2足目。すでに12年の付き合いだ。
「メンズライクなシルエットだけど、ヒールがあるのでバランスが取りやすい。そして、私の足のカーブに合っているので、とても歩きやすいし、疲れないんです。さすがに真夏は無理ですが、スリーシーズン愛用しています」
履き心地がよくデザインも気に入る靴はなかなかない。それだけに、できるだけ長く履き続けたいという気持ちが強い。
「最初のうちは専用クリーナーなどで自分で汚れを落としていますが、いよいよ落ち切らないとなったら、塗り直しに出します」
お願いしているのは、散歩しているときに見つけた、近所の靴店。「若い男性が一人でやっている店で、感覚が近くて融通がきくので、よく頼んでいます。塗り直す際はもとの色に近い白で、と注文。白でもいろいろなトーンがあるので、そこは気をつけるようにしています」
同じ形で黒も持っていて、そちらは自分で塗り直しをしている。ただし、白の場合はどうしてもムラが目立つので、専門の職人にお願いしたほうがいいというのが、前田さんの考え。
靴底の補強もしながら、本当にダメになるまで履き続ける。自身も作り手である前田さんの、ものづくりに対する敬意が伝わってくる。
長年、愛用している証しのシワも味に。アッパーの汚れが落ちなくなったときが塗り直しのサイン。
前田敬子 Keiko Maedaファッションデザイナー
保護猫と暮らす、ファッションブランド〈ロワズィール〉のデザイナー。上質なリネン素材をベースとしたスタンダードな服を提案。黒限定だが、リネンアイテム購入後の染め替えサービスもブランドで行っている。
photo : Takashi Ehara edit & text : Wakako Miyake
&Premium No. 131 LONG-TIME STAPLES / 使い続けたくなる、愛しいもの。
ファッションやライフスタイルにまつわるもの選びにおいて、時間をかけて長く付き合っていく姿勢が、これまで以上に必要とされているように思います。でも、ただ漫然と「長く使い続ける」ことだけが重要ではなく、それを使ったり、身に着けたときに、出合った頃と変わらぬ「愛おしさが続いている」ことも、忘れてはならない大切な要素なのではと考えます。初めて手にしたときの高揚感、作り手のこだわりに惚れ惚れとしたこと、使い続ける日々の中で紡がれた大切な思い出……。そういったさまざまな「記憶」が、人とものを、長きにわたって、幸せなかたちで繫ぎ合わせていくのです。〈ミナ ペルホネン〉のデザイナー・皆川明さんをはじめ、たくさんの方々に「使い続けたくなる、愛しいもの」にまつわるエピソードについて聞いてみました。
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