医療・介護・福祉分野の予算増などを国に求める集会が9月26日、東京・日比谷公園の野外音楽堂で開催された。
集会は全国保険医団体連合会、日本医療労働組合連合会らで構成された「24年『医療・介護・福祉に国の予算を増やせ!9・26いのちまもる総行動』実行委員会」によるもので、2400人が参加(主催者発表)。YouTubeでのライブ配信も行われた。
「社会保障重視の政治」実現訴える
日本医労連の佐々木悦子中央執行委員長は集会の冒頭、「医療・介護・福祉の充実、強化がさらに重要となるなかで、命と暮らし、人権を守る政策が必要だ」と訴えた。
「政府は、財政健全化の名のもとで、高齢者の医療費窓口負担や、国民健康保険料の値上げなど、社会保障の全分野で国民負担増と給付削減を進めてきました。
こうした政府の姿勢を転換させ、医療・介護・福祉従事者の大幅な賃上げや、医療・社会保障費の増額、紙の保険証の維持など、社会保障重視の政治を実現させましょう」(佐々木氏)
野党議員も参加、マイナ保険証巡り厳しい声続々
集会には複数の野党議員も駆け付け、特に岸田政権が推し進める紙の保険証廃止については、登壇した各議員から厳しい声が上がった。
日本共産党の小池晃書記局は、マイナ保険証に関するトラブルが多発していることを挙げ「紙の保険証廃止は百害あって一利なしだ」と政府の方針を問題視。
国会の地方デジタル委員会に所属している杉尾秀哉参議院議員(立憲民主党)も「マイナ保険証によって、医療機関で働く人の負担が増えている」と述べ、以下のように続けた。
「先月(8月)の時点で、マイナ保険証の利用率はたったの12%でした。こんな状況で、12月までに紙の保険証を廃止できるわけがありません。
何としてでも、12月での紙の保険証廃止を延期し、そして、ひとりひとりの命を大事にする政治へと私たちの力で変えていきましょう」
立憲民主党からは医師で衆院議員の吉田恒彦氏(左)も参加した(弁護士JP編集部)
また、自身も障がい当事者である天畠大輔参議院議員(れいわ新選組)は「保険証の廃止は、意思決定や情報管理に他者が介入せざるを得ない重度障害者をも置き去りにする施策だ」と指摘、廃止撤回を訴えた。
「そもそも、紙の保険証廃止の方針転換をした経緯は政府の記録にきちんと残っていません。
保険証廃止の影響は国民全体にも波及するにもかかわらず、誰がどう決めたのかもわからない状態で廃止が決定した。
政府は、国民への説明責任を果たしておらず、今からでも方針を撤回すべきです」(天畠議員)
現場からも予算増や紙の保険証維持求める声
医療や介護現場の当事者らによるリレートークでも、紙の保険証維持や、医療・社会保障費の増額を求める声が相次いだ。
医師の男性は自身の経験から、「私の医院でも、ほとんどの方が紙の保険証を提示していて、これまで何も問題は起きておらず、むしろマイナ保険証に切り替えれば事務的な負担につながります」と訴えた。
また、看護師の女性は、長時間労働や深刻な人手不足解消のため「医療や介護の現場に予算を回してほしい」と語った。
「夜勤で働く看護師は、昼間に働く看護師と違い人数が少なく、みんな疲れ果てている。
さらに、看護師は感染対策や新しい機械の勉強が必要となり、私生活もだいぶ制限される状況が続いている。このような状況下では、新しく入ってきた人が自信を失い、体を壊したりして、辞めたくなるのも本当にわかります。
(国は)大切な医療や社会保障に予算をまわし、時間と余裕があって、患者のそばにいられる看護(環境の整備)を目指してほしいです」
集会では最後に、下記の4つについてあらためて訴えた。
①医療・介護・福祉従事者の大幅増員・大幅賃上げ、診療報酬・介護報酬の再改定を実現すること
②医療・社会保障費を増やし、患者・利用者の負担増を止めること
③紙の保険証維持・保健所増設で地域の医療・介護をまもること
④軍事ではなく外交・社会保障重視の政治に転換すること
シュプレヒコールを上げたのち、参加者らによるパレードも実施された。
自民党の総裁選やその後の総選挙で、マイナ保険証をはじめとする医療や介護、福祉の課題解決に向けた議論が進むことを期待したい。