障害者の生活と権利を守る全国連絡協議会(障全協)は26日、東京・永田町の参議院議員会館で記者会見を行い、政府が進めるマイナ保険証一本化への不安を、障害者の目線から訴えた。
取得・更新そのものにもハードル
現行の健康保険証廃止が12月2日に迫る中、情報漏えいなど山積する問題や政府の“ゴリ押し”姿勢への不信感などもあり、8月時点での利用率は12.43%と依然として低迷が続いている。
医療機関では「資格情報が無効と出た」「顔認証がうまくいかない」などのトラブルも相次いでおり、「従来の健康保険証を残してほしい」との声も少なくない。
全国の医師・歯科医師10万人以上で構成される「全国保険医団体連合会」は、こうした実態を把握するアンケートを継続的に実施しているが、河野太郎デジタル大臣は20日の記者会見で、こうした動きについて「百害あって一利なし」と発言している。
障全協事務局長の家平悟氏は、これを受けて「許しがたい暴言・姿勢だと言わざるを得ません」と憤りをあらわにする。
マイナ保険証の抱える多くの問題が宙に浮いたまま一本化へ突き進むことは、障害者にとって健常者以上に不安が大きい。
まずは、マイナンバーカードの取得や更新そのものの問題。障全協を構成する兵庫障害者連絡協議会が今年8~9月に実施したアンケートには、「字が書けない人は作れないと言われた」(30代、肢体・知的障害)、「写真を写してもらうのが(正面を向いていないので)大変で…」(年代不明、知的障害)などの声が寄せられている。
また、取得や更新には本人が行かなくてはならないことから、「体調などの関係で行けずに更新手続きができなかった」「本人を連れて行くのに不安。母一人では連れて行けない」といった意見も見受けられた。
障害者施設では「管理できない」と不安も
さらに、無事にマイナンバーカードを取得できたとしても、重度の障害により本人が管理できない場合、「親が先に亡くなったら…」と不安を抱える人も多い。
また障害者施設では、人手不足も課題となる中、入居者のマイナンバーカードや暗証番号をどのように管理すればよいのか頭を悩ませているという。たとえば、長野県保険医協会が7月に高齢者・障がい者施設を対象に行ったアンケートでは、約7割の施設がマイナンバーカードを「管理できない」と回答した。
障全協はこうした現状について、「意思決定が困難な人などの支援を誰がどのように責任をもって行うのかが決まっていないこと」などに大きな問題があると指摘している。
そして記者会見では、実際にマイナ保険証を使った人からの声も紹介。弱視を抱える人からは、「パスワードを入れるのが遅くて後ろから急かされて文句を言われた」との体験談が寄せられた。
重度障害のある娘を育てる親は「顔認証をさっと行うことができなかったり、番号認証を親がする間、待てない」などとして、「(健康)保険証を手渡すだけの方が簡単」と意見を述べた。
政府は「誰一人取り残さないデジタル化」を掲げるが、障全協は「こうした実態を解決する根本的な見直しがない限り実現しない」と強い疑問を示す。26日の記者会見前には厚労省、デジタル庁、総務省と懇談を行い、要望書を提出した。
12月2日に健康保険証が廃止された後、さらに多くの問題が噴出することも予想される。障全協では今後も、実態把握と国への要望を続けていく方針だ。