宮城県都城市に本拠を置くネット通販の自然食品店「タマチャンショップ」。運営会社の「有限会社九南サービス」は、オンラインコミュニティ「タマリバ」の運営も行っています。本記事では『コミュニティドリブン経営 ファン起点で広げるビジネスの新潮流/著者:小父内信也氏』(幻冬舎)より一部抜粋し、幅広いファン層に愛されるタマチャンショップのコミュニティ活用術を対談形式でご紹介します。
商品開発で大切にしているのは、ビジョンのプロダクトアウト
小父内 宮崎発のネット通販「タマチャンショップ」を運営する有限会社九南サービス。同ショップは、楽天市場で何度も表彰されており、幅広いファン層に愛されています。しかし、そんなタマチャンショップも一時は赤字が続き、事業を畳む覚悟までしたといいます。多くの苦難を乗り越えてきた陰には常に支えてくれるファンの存在がありました。事業の成長を加速するコミュニティ運営のポイントや未来の姿について、田中代表(通称キャプテン)とコミュニティを切り盛りする佐々木さんにお話を伺っていきたいと思います。まずはタマチャンショップ全体のマーケティング戦略について、田中代表から教えてください。
田中代表(以下、キャプテン) タマチャンショップは全体のマーケティング戦略があるというよりは、ビジョン経営を軸にしています。我々には「食のワンダーランドをつくる」というビジョンがあり、その中で「美と健康を楽しめる世界をつくる」というコンセプトを掲げています。ビジョンをプロダクトアウトし、自分たちの作品をたくさん作ってお客様に提案していくというのが基本的な方針です。マーケットインというよりも、自分たちが好きなものや世の中にあったらいいなと思う商品を開発して作っています。
私が入社した当初は、ビジョンなどはあまりなく、とにかく売れるものを作って売り上げを伸ばすという考え方だったのですが、赤字が続いてうまくいかない時期がありました。そこで、思い切って本当に自分が好きなお店をつくろうという方向に舵を切ったのです。そこがタマチャンショップのターニングポイントになりましたね。
小父内 それは思い切りましたね。何かきっかけがあったのですか?
キャプテン 通販という世界は競合も多いですし、売り上げを伸ばそうとしていると段々と面白くなくなってしまって、事業をやめることを考えた時期もありました。その時に、1年間自分の好きなお店づくりをして、それで結果が出なかったら本当にやめようと思って、思い切って舵を切ることにしました。その結果、1年で劇的に風向きが変わり始め、自分がつくりたいお店をつくるという方向性で頑張ることに決めたのです。
その時に、どのような想いで自分たちのお店を運営していくのかというコンセプトを考え直してお客様に伝えたところ、多くのお客様から共感していただき、そこから徐々に自分たちの商品を受け入れてもらえるようになっていきました。そこからはずっと変わらずに、自分たちが作りたいものを作り続けてきましたね。
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コミュニティ導入の理由は「顧客の声に触れ、距離を縮めたい」
小父内 実際にオンラインコミュニティ「タマリバ」の運営を担当されている佐々木さんにもお話をお伺いできればと思います。オンラインコミュニティを活用する施策を取り入れたのはなぜですか?
佐々木 オンラインコミュニティを導入したきっかけは大きく2つあります。
1つ目は、お客様の声に触れる機会を増やしたかったためです。タマチャンショップをご愛用いただいているお客様はInstagram などのSNSでレビューを上げてくださっています。できる限り確認するようにしているのですが、そのすべてを読むことはなかなか難しいので、コミュニティを活用することで、お客様との距離を縮めたいと考えました。
2つ目は、ご愛用いただいているお客様に、タマチャンショップのことをより好きになってもらうための場を設けたいと考えたためです。当社と同じ自然食品・健康食品ジャンルでは、大手企業を筆頭に多くの素敵な商品が販売されています。一中小企業として立ち向かっていくのはなかなか骨が折れることですので、タマリバを通してお客様と繋がり続けられる環境ができればと考えました。また、お客様と一緒にタマチャンショップの未来を創っていきたいという思いもありましたね。
小父内 お客様と一緒に未来を創りたいというスタンスは素敵ですね。ちなみに、コミュニティを開設する前にファンとの関わりはあったのですか?
佐々木 Instagram などに投稿をしてくださったお客様にDMを送ったり、レビューに返信したりすることはありました。また、キャンペーンを実施し、投稿をしてくださった方にプレゼントを贈るような施策も実施していましたね。
小父内 そのようなこともされていたのですね。しかし、個別の対応にはリソースの観点からも限界がありますよね。そうした状況に対して、会社として課題であると考えていたのでしょうか?
佐々木 そうですね。リソースにも限りがあるので、ひとつに集約したいというニーズはありました。個別の対応だけだと会社に資産としてたまっていかないという面も課題に感じていましたね。また、弊社の経営の考え方としてお客様第一ということを掲げていたので、よりお客様の声やリクエストを商品開発などに活かしていきたいと考えていました。
小父内 なるほど、個別の対応で属人化してしまう課題もありますし、何より会社の資産として残っていくことが重要と考えていたのですね。御社としてはコミュニティの開設を以前より考えていたのでしょうか?
佐々木 代表の田中の頭の中にはコミュニティの構想は数年前からあったと聞いており、ずっとそのようなサービスを探していたようです。