チリのアイコンワインの一つ『ヴィニェド・チャドウィック』の2022年がリリースされた。カベルネ・ソーヴィニヨン96%、プティ・ヴェルド4%で造られたこのワインの特徴は、ボルドーのメドックにも負けない最良のテロワールから造られているところにある。
産地はDOプエンテ・アルト。アンデス山脈のふもとで、標高が650mと高い。日中は温かく、夜間は吹き下ろす風で涼しい。昼夜の温度差が大きく、ブドウは時間をかけて成熟し、酸を保ちながらタンニンが完熟する。気候変動が進む中で、同じくカベルネ産地のナパ・ヴァレー(アメリカ・カリフォルニア州)のワインよりフレッシュ感が強い。
マイポ川が運んできた砂利を含む沖積質を、粘土ローム層が覆っている。水はけの良いやせた土壌で、ブドウはポリフェノールが豊富な小粒の実を付ける。降水量は年間350~400㎜。灌漑(かんがい)なしではブドウの栽培は難しいが、高地の雪解け水はカルシウムが豊かで、ワインにフレッシュ感とミネラル感を与える。
このテロワールがメドック、ナパ・ヴァレー、ボルゲリ(イタリア・トスカーナ地方)に勝るとも劣らないカベルネ・ソーヴィニヨンを生むのだ。口に含むと、ボルドー・ポイヤックの(*1)格付け1級シャトーを思い起こさせる優雅さ、重量感、バランスの良さが伝わってくる。メドックでカベルネのスタイルを覚えた人には、どこか懐かしいクラシックな風味。それが2004年にブラインド・テイスティングで行われた「(*2)ベルリン・テイスティング」で、「シャトー・マルゴー」や「シャトー・ラトゥール」などの格付け1級シャトーや、(*3)スーパータスカンを打ち負かして世界一になった理由の一つかもしれない。
ヴィニェド・チャドウィックだけでなく『セーニャ』や『カイ』など「ヴィネドス・ファミリア・
チャドウィック」のフラッグシップを手掛けるコンサルタントワインメーカーのフランシスコ・ベティッグ氏は、プエンテ・アルトを「チリで最高のカベルネ・ソーヴィニヨンの産地」と評価する。それがわかっているから「ドン・メルチョー」や「アルマヴィーヴァ」などのトップワイナリーもここでボルドー・ブレンドの赤ワインを造っている。プエンテ・アルトは「南米のグラン・クリュ(特級畑)」と広く呼ばれている。それだけの理由があるのだ。
『ヴィニェド・チャドウィック 2022年』はダークチェリー、カシス、メントール、サテンのテクスチャーとしっかりした構造がある。さわやかな酸と繊細なアロマがあり、豪華にして優雅な味わいである。
(*1)フランス・ボルドー地方メドック地区の格付けで、1級~5級がある。1855年、皇帝ナポレオン3世の要請によりボルドー商工会議所が作成した
(*2)フランス、イタリア、チリのプレミアムワインを含めた16種類が競われた試飲会。1位は『ヴィニェド・チャドウィック 2000年』、2位は『セーニャ 2001年』となり、チリワインが圧勝した
(*3)格付けは下ながら卓越した品質を持ち、上位格付けのものを上回る評価を得ている、トスカーナ州のワイン
問い合わせ先:ヴィニェド・チャドウィック
https://vinedochadwick.cl/
text by Akihiko YAMAMOTO