吉岡しげ美さんは1977年から与謝野晶子、茨木のり子、新川和江、金子みすゞなど女性詩人の詩に曲をつけ、ピアノで弾き語りをする活動をやってきた。万葉集、枕草子、百人一首などにも曲をつける。最近では俳句も作曲の題材となっている。

女性詩人の詩にこだわる

吉岡さんは武蔵野音楽大学を卒業後、本職はずっと大学の教員である。共栄学園短大、西武文理大学、城西国際大学などの教授を歴任した。作曲家としてはテレビの番組、映画、ミュージカルなどの音楽担当としても活躍してきた。

ではなぜ、女性詩人の詩に曲を付けて弾く活動にこだわるのか?

「作曲家を目指していた私は、20代半ばころからレコード等の作曲を仕事として始めていました。おんなの作曲家がほとんどいない時代です。レコ―デングの現場もミュージシャンもスタッフも男ばかり。スタジオで録音するたびにミュージシャンに『この音違うんじゃない!?』何度も確認しているのに間違えているはずはないのに、こう言われるのです。『ねえちゃん、こんなことしていないで早く嫁に行きなよ』と笑われていました。私は作曲の仕事がしたいだけなのに、おんなというだけでどうしてこのような目に合わなければならないのだろう」

そう思い続け、爆発寸前の時に東北に住むふたりの詩人の詩と出会った。女性差別がひどい農村に生きるおんなの強さに魅かれという。

そして、茨木のり子、新川和江ら現代の女性詩人の詩に、自分の想いを重ねて作曲しピアノの弾き語りをするようになった。だからこの活動は「心の自分史」だという。

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「枕草子」も作曲

どうしても、メッセージ性の強い詩を選ぶ傾向にある。自分の伝えたいメッセージを歌っている。ただし、原文そのまま、詩の文言は絶対に変えない。万葉集は4年かけて読み解いたという。

「恋」「片思い」「相聞歌」などにまとめた。「枕草子」は大病して時の流れを想っていた時に浮かんだ作品で、あっという間に作曲できたという。

心のバランスが崩れた時にこれらの詩によって救われたと思っている。古典は昔のものではなく、時代を超えて年齢不詳の自分がその世界に入っている気がするという。

2024年10月26日には「天空のデュエット」と題した弾き語りコンサートを東京・有楽町マリオン別館のホール開く。与謝野晶子が「君死にたまふことなかれ」を発表して120年、「金子みすゞ全集」が出版されたから40年。まさに、時空を超えている。