生け垣におすすめの樹種

これまで、生け垣に向く樹種の特徴を解説してきました。ここからは、生け垣として古くから愛されている樹種を取り上げ、その性質や管理のポイントについて、詳しくご紹介します。

イヌマキ


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マキ科マキ属の常緑高木で、雌雄異株。枝をよく伸ばし、細長い葉を密につけるので遮蔽性が高いのが特徴です。最終樹高は20mとされていますが、剪定によって樹高をコントロールすることができます。雄株、雌株ともに5〜6月に開花し、雌株は10月頃に実をつけます。原産地は日本、中国、台湾で、古くから自生してきた植物のため日本の気候のもとでよく育ち、それほどメンテナンスの手間はかかりません。植え付けの適期は3月、6月、9月で、腐葉土などの有機質資材をすき込んで定植します。刈り込みによく耐えるので、3〜12月の生育期に樹形が乱れてきたら形を整えて、コンパクトにまとめる管理でOK。枝が込み合って風通しが悪くなっているようであれば、間引いて適度なすき間をつくります。寒冷地では10月以降の剪定を控えましょう。

‘レッドロビン’


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バラ科カナメモチ属の花木。カナメモチとオオカナメモチの交雑種で、「セイヨウカナメ」の名でも流通しています。原産地は日本の東海地方以西、中国、東南アジアで、耐暑性に優れる樹木です。樹高は最終的に10mに達しますが、剪定によって高さを調整できます。4〜5月に吹き始める新芽は鮮烈な赤色で、5〜6月上旬に白い小花を密に咲かせるので、常緑性の樹木ながら季節感があるのも魅力です。植え付け適期は、3月〜4月中旬、または9月下旬〜10月。日当たり、水はけのよい場所を選び、腐葉土など有機質資材をすき込んで定植します。生け垣として利用するなら、刈り込むほど枝が密になるので、年に数回刈り込んで樹形をキープしましょう。適期は7月、9月、12〜3月です。2月頃に寒肥として有機質肥料を施しておくと、その後の生育に勢いがつきます。

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キンモクセイ


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モクセイ科モクセイ属の常緑高木。原産地は中国で、寒さにはやや弱い傾向にあります。最終樹形は6mくらい。刈り込みに耐えるので、剪定によって希望の高さに抑えることができます。自然にまとまる樹形ですが、円筒形など仕立物や生け垣としても利用可能です。植え付け適期は3〜4月。日当たりのよい場所に有機質資材をすき込んで植え付けましょう。湿り気のある環境を好むので、夏場にひどく乾燥が続く時期は樹勢を見て水やりします。生育が早いほうなので、年に一度は刈り込んで樹形をキープしましょう。9月下旬〜10月中旬にオレンジ色の小花を咲かせ、芳香を放つので、秋の訪れを知らせる花木としても人気があります。剪定の適期は3〜4月。高さや株幅を刈り込んで一回り小さくし、混み合っている部分は間引き剪定をして風通しをよくします。8月頃から花芽が分化するため、この時期から開花までの間に剪定すると花が咲かなくなるのでご注意を。

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マサキ


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ニシキギ科ニシキギ属の常緑樹。原産地は日本、朝鮮半島、中国で、古くから日本に自生してきたことから、放任してもよく育つ樹木です。最終樹高は6mとされていますが、剪定によって仕立てたい高さにコントロールできます。6〜7月に白い小さな花を咲かせ、10〜1月に赤い実をつけるので、季節の移ろいを感じられる花木です。植え付けの適期は3〜4月中旬、9月下旬〜10月。日当たりのよい場所に腐葉土などの有機質資材をすき込んで植え付けます。施肥は年に1回、2月頃に寒肥として緩効性肥料を施して樹勢を保ちましょう。刈り込みの適期は6月、9〜10月で、年に2回刈り込むと、枝の分枝が促進されて密に仕立てることができます。樹高を抑えるために深めに切り戻したい時は、新芽が出やすい3〜4月に行うとよいでしょう。

カクレミノ


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ウコギ科カクレミノ属の常緑低木。自然樹高は5mほどですが、剪定によって低めに仕立てることができます。原産地は日本で、昔から自生してきた植物なので、丈夫で放任してもかまいません。7〜8月にグリーンの小花が咲き、10〜11月に実を付けて黒く熟します。植え付けの適期は3〜4月か9〜10月。明るい半日陰の場所に腐葉土などの有機質資材をすき込んで植え付けます。剪定の適期は3〜4月上旬、6〜7月上旬、9月です。成長が早く、よく新芽を出すので、込んでいる場所があれば間引き剪定をして風通しよく管理。下葉が枯れやすく、上部が茂る性質があるので、下葉が枯れる前に上部を剪定すると、下葉の新芽が出やすくなります。

イチイ


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イチイ科イチイ属の常緑針葉樹。自然樹高は10mにも達しますが、剪定によって低めに仕立てれば生け垣として利用できます。原産地は北半球の温帯からマレーシア西部、メキシコで、広い範囲に分布し、寒さ暑さに強い性質があります。日本にも昔から自生しており、管理の手間がかからない樹木の一つです。植え付け適期は3月下旬〜6月、10月で、明るい半日陰の場所に腐葉土などの有機質資材をすき込んで植え付けます。施肥は寒肥として2月に緩効性肥料を施して樹勢を保ちましょう。カイガラムシが発生することがあるので、見つけたらすぐに歯ブラシでこすり落として初期防除に努めましょう。剪定は3〜4月、6〜7月上旬、9月が適期。刈り込んで樹高を保ち、込みすぎている部分があれば、間引き剪定をして風通しをよくします。

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花が美しい生け垣におすすめの樹種

続いて、生け垣に向く樹種の中でも、美しい花が楽しめるものをご紹介します。

サザンカ


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ツバキ科ツバキ属の常緑樹で、自然樹高では5mに達しますが、剪定でコントロールできます。原産地は日本。古くから庭木として愛されてきた樹木で、環境に合いやすくメンテナンスの手間がほとんどかからないのが特徴です。品種群によって開花期が異なり、サザンカ系園芸品種群が10〜12月、カンツバキ系園芸品種群が11〜3月、ハルサザンカ系園芸品種群が12〜4月。花色は赤、ピンク、白、複色があります。植え付けの適期は3月下旬〜4月、9月下旬〜10月。植え場所に腐葉土などの有機質資材をすき込んで植え付けます。施肥は2月頃。寒肥として緩効性肥料を施して樹勢を保ちましょう。花が美しい長所がある一方で、病害虫が発生しやすい短所もあり、適応する薬剤を指定通りに散布して防除するとよいでしょう。成長のスピードはやや速いので、3〜4月に刈り込んで適度な樹高をキープし、込み合っている部分があれば間引き剪定をして風通しをよくします。

プリペット


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モクセイ科イボタノキ属の常緑樹。「セイヨウイボタ」、「ヨウシュイボタ」などの別名も持っています。原産地はヨーロッパ、中国で、暑さや寒さ、乾燥に強い性質です。樹高は最終的に4mに達するとされていますが、刈り込みに耐えるので、剪定で低めに抑えれば生け垣として利用可能です。5〜6月に芳香をもつ白い小花が開花します。植え付けの適期は3〜6月。日当たりのよい場所に腐葉土などの有機質資材をすき込んで植え付けます。剪定の適期は3〜4月上旬、6〜7月上旬、9月。成長が速く、旺盛に枝葉を伸ばすので、樹形が乱れてきたら年に数回の刈り込みを行いましょう。

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アベリア


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スイカズラ科ツクバネウツギ属の半常緑の園芸品種。姿がウツギに似て、ガクが羽根のように見えることから「ツクバネウツギ(衝羽根空木)」の別名もあります。19世紀中期にイタリアで作出された交配種で、樹高は1〜1.5m。開花期は5〜10月までと長く、花色は白や薄ピンクです。半常緑で耐寒性があり、大気汚染や乾燥にも強く、刈り込みにも耐えます。道路や公園などの植栽に利用されることが多い品種ですが、花や葉が美しく、好みの大きさに剪定できるので、生け垣にもおすすめです。植え付けの適期は3〜6月、9〜11月、腐葉土をすき込んで植え付けます。剪定の適期は4〜8月、11月。時期を選ばず枝が伸びるので、こまめに刈り込みを行うと、枝葉が密になりきれいな姿になります。

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トキワマンサク


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マンサク科トキワマンサク属の常緑樹。同じマンサク科のマンサクは落葉樹ですが、トキワマンサクは冬でも葉を落とさないため、この名が付けられました。原産地は日本の関東以西、中国南部、ヒマラヤ東部です。花は白く細長い帯状で開花時期は4~5月、暑さ寒さに強く、半日陰でも育ちます。花が紅色のものはトキワマンサクの変種で、「ベニバナトキワマンサク」と呼ばれます。樹高は3〜6mで、分枝が多いものの剪定すればまとまり、洋風、和風のいずれの庭にも合いやすい品種です。植え付けの時期は4月か9〜10月、有機質肥料か緩効性化成肥料を元肥として施し、若苗の場合は支えとなる支柱を立てておきます。剪定の適期は4~5月で、花が終わるのを待ってから行いましょう。枝の伸びがよいため、樹形を乱す枝などは適宜切り落としておくとよいでしょう。

クチナシ


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アカネ科クチナシ属の常緑樹。純白の6弁花で、強い芳香を放つのが特徴です。果実は黄色の染料として、また生薬などにも用いられます。花の名「クチナシ」は、実が熟しても割れないことに由来するとの説があります。庭木としては八重咲きの「オオヤエクチナシ」が人気ですが、こちらは実は付けません。原産地は日本の本州、東海地方以西です。耐寒性はやや弱いものの、耐暑性は強く、半日陰でも育ちます。樹高は1~2m、開花期は6~7月、植え付けは3~4月に行いましょう。通気性、保湿性に優れた用土に腐葉土などを混ぜた土が適しています。剪定は花が咲き終わったらすぐに行い、。晩夏以降の剪定は花芽を落とすことになるので注意が必要です。オオスカシバの幼虫が付きやすいので、黒いフンを見つけたら早めに駆除するようにしましょう。

ドウダンツツジ


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ツツジ科ドウダンツツジ(灯台躑躅)属の落葉樹。漢字表記では「灯台」と書きますが、これは花や葉の付き方が昔の照明器具の灯台に似ていたためとされています。春に白いスズランのような花を付け、秋には紅葉するので四季折々の表情が楽しめます。白い花が満開になった様子にちなんで付けられた別名は、「満天星」です。日本原産で、耐暑性、耐寒性に優れ、丈夫であることから、全国的に生け垣用としての人気が高い樹種です。和風の庭に良く合いますが、洋風の庭にも馴染みやすく、樹高は1〜2m、開花期は4〜5月初旬、植え付けは3~4月か11~12月です。水はけがよく、日当たりのよい場所に腐葉土などをすき込んで植え付けましょう。剪定は花が終わった後の5月中旬から6月にかけて行います。

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