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 イスラエル空軍は現地時間9月27日夜、ヒズボラの指導者ハッサン・ナスララ師を標的としたピンポイント攻撃を実施した。公の場に滅多に姿を現さないナスララ師への攻撃は、なぜ可能だったのか。その背景に、2006年のヒズボラとの戦争での失敗から学んだ教訓があった。

◆F-15I戦闘機で住居ビル4棟をピンポイント爆撃

 ヒズボラは、レバノンを拠点とするシーア派のイスラム教武装組織だ。1980年代に設立され、イランからの支援を受けている。イスラエルに対する抵抗運動で知られる。

 27日夜、イスラエル空軍はF-15I戦闘機を投入し、ナスララ師が身を隠していた地下の複合施設を爆撃した。英ガーディアン紙がイスラエルメディアの情報をもとに報じたところによると、攻撃は数日間にわたり入念に計画され、F-15I戦闘機が100発の弾薬を投下したという。アメリカ製の2000ポンド爆弾が用いられ、住宅ビル4棟が破壊された。

 ナスララ師の居場所特定は、諜報活動の賜物であった。英フィナンシャル・タイムズ紙は、イスラエル諜報機関が事前に情報収集を実施し、ナスララ師が南ベイルートのマンション複合施設の地下にあるバンカーにいることを突き止めたと報じている。

◆イスラエルの技術的アドバンテージを総動員

 イスラエルの諜報機関は攻撃準備の段階で、深い情報収集を行った。米ニューヨーク・タイムズ紙は、2006年の対ヒズボラ戦争での失敗を教訓に、イスラエルがヒズボラに対する諜報活動を大幅に強化してきたと振り返る。

 同紙によるとイスラエルの諜報機関は、高度なサイバー技術を開発して通信を傍受し、ドローンや衛星でヒズボラの拠点を継続的に監視した。

 イスラエルはテクノロジー先進国として知られる。フィナンシャル・タイムズ紙は、イスラエル側がこうした技術的アドバンテージを活用したと報じる。スパイ衛星、ドローン、ハッキング技術を投入し、ヒズボラの動きを詳細に監視した。

 同紙によると攻撃直前、イスラエルの情報機関はナスララ師の位置を正確に特定し、彼が「指揮統制バンカー」に入るタイミングを捉えた。これを受けたイスラエル軍がピンポイント爆撃を実行し、ナスララ師を殺害した。

◆情報網の拡大も貢献

 さらにニューヨーク・タイムズ紙は、人的な情報網の強化も貢献したと指摘する。2006年の戦争で決定的勝利を逃して以降、イスラエルはモサドや軍事情報機関に多くのリソースを投入し、ヒズボラの指導者や戦略に関する重要な情報を収集する能力を強化した。

 フィナンシャル・タイムズ紙は、イスラエル側がシグナルインテリジェンス(通信解析)機関であるUnit 8200や軍事情報局のAmanを駆使し、ヒズボラの詳細な「インテリジェンス・ピクチャー」を作り上げたと報じる。ヒズボラの作戦を指揮する人物、昇進した人物、腐敗の見られる人物、疑わしい行動を取った人物などを詳細に把握していた。

 なお、フランスの新聞ル・パリジャンの未確認の報道によると、イスラエルに情報を提供した内通者はイラン人であった可能性がある。イランは通常、ヒズボラを支援する立場であるため、仮にこれが事実ならば注目に値する動向である。