自宅で一人亡くなり、誰にも気づかれずに数日たってから発見される「孤独死」。これまで高齢者の問題とされてきたが、20・30代の「まだこれから」の世代も孤独に命を絶っている。若者たちは何に絶望し、この世を去ってしまうのか。
◆弟の孤独死を機に始めた見守りサービスに注目集まる
孤立する人々を見守るサービスも存在する。無料のLINEアプリを利用して、1~3日ごとに安否確認のメッセージが届く。元気なら、画面の「OK」をタップするだけ。反応がない場合は翌日に再度連絡があり、確認が取れないと、生存確認のため電話がかかってくる。それでも反応がない場合は、登録された近親者に連絡がいく。
この見守りサービスを開発したのは、NPO法人エンリッチ代表の紺野功氏。開発のきっかけは弟の孤独死だった。
「弟は51歳の寒い時期に、自宅のマンションで亡くなっていました。若いとは言えない年齢ですが、バリバリ働く現役世代。亡くなる2日前に電話をしたのに、異変は感じなかった。弟の仕事の関係者が発見し、死後1週間が経過していました。死因は低体温症。酒が好きで、依存症に近い状態だったのかもしれません」
突然の弟の死に直面し、「孤独死は他人事ではない」と痛感したという。
「『発見が早ければ』と、どうしても“たられば”が頭をよぎってしまった。見守りサービスは、孤独死自体は防げません。でも、そんな“もしも”をいち早く発見できるようにと、この見守りサービスを考えました」
◆延べ1万4000人の登録者のうち、10~30代が4分の1以上
’18年11月にサービスを開始。当初は40~50代の現役世代を対象にしていた。現在では、延べ1万4000人の登録者のうち、10~30代の若い世代が4分の1以上を占めている。
「SNSやネットがいくら盛り上がっていても、実際に本当に頼れる人との繋がりは希薄なのかもしれないと感じました」
実際に30代以下の利用者の声を聞いてみると、「人と繋がれて安心した」(20歳・女性)、「毎日の様子を気にかけてくれる人がそばにいるというだけでも、安心感がすごい」(35歳・女性)と、見守りサービスを心の拠りどころにしているという声が多かった。
「何かあったときに早期発見してもらうことが目的の方もいれば、孤独感や閉塞感を和らげるために利用している方もいる。孤独・孤立への施策として、将来的に国や自治体がサービスの提供者となってほしいです」
【見守りサービス運営・紺野 功氏】
NPO法人エンリッチ代表。弟が孤独死したことをきっかけに見守りサービスを開発。サービス開始から6年、登録者は1万4000人超
取材・文/週刊SPA!編集部
―[[若者の孤独死]知られざる実情]―