人口予測が物語る“現実”……「一生働く」覚悟が必要

今後、円安がどこまで進行するかは不明である。したがって、「老後〇〇万円が必要」と議論することにあまり意味は無い。

円安を脇においても、そもそも人口予測からして、高齢世代を支え切れるようになっていない。

国立社会保障・人口問題研究所、日本の将来推計人口(1920-2070)を元に筆者作成

人口は既に減少に転じているが、年齢構成の割合を見ると、生産年齢人口(15歳以上64歳以下)と、14歳以下の割合は減少し続ける一方で、65歳以上人口の割合は増え続ける。生産年齢人口割合は2070年には52.1%になるが、65歳以上人口割合は38.7%である。

このように、長期的に見れば生産年齢人口で高齢人口を支え切れるはずが無いのである。これは政治が努力してどうにかなる問題ではなく、受け入れるしかない現実である。

なお、このように人口が推移するのは日本だけではない。OECD加盟国の中で合計特殊出生率が人口置換水準(2.07)を超えているのではイスラエルのみであり、他は全て下回っている。したがって、程度の差はあれ、先進国は日本と同じような運命を辿る。「一生働く」覚悟が必要である。

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「年金に関する老後不安」に付け込む詐欺師に注意

年金に関する将来不安に付け込んでくるのが詐欺師であるので、注意を促したい。警察庁の発表によると、令和5年1月から12月末までに都道府県警が認知したSNS型投資詐欺及びロマンス詐欺に係る被害発生状況は、SNS型投資詐欺が約277.9億円、ロマンス詐欺が約177.3億円、合計で約455.2億円となっている。

私の専門分野の一つがこのような消費者被害なので、詐欺被害の急増は身をもって実感している。

典型的なパターンは、インスタグラムのストーリーやフェイスブックの広告を通じて誘導され、ラインの友達登録をして「投資家」等と称する者とつながり、言われるがままお金を預けるが戻ってこない、というものである。AIを利用した「FX自動売買」「仮想通貨自動売買」を売りにした詐欺が頻出する。そして、詐欺師達は「老後の年金に期待できないので投資をする必要がある」などと言ってくる。

お金の支払い手段は指定銀行口座への振込によることが多い。この場合、当該口座への凍結申請をして、残高があれば仮差押・本訴提起をして回収できることがある(全額回収は稀だが)。詐欺師の方は凍結に備えて複数口座を準備し、振込がされた途端に引き下ろすため、凍結をしても残高が数百円しか無いこともある。なお、口座凍結申請は弁護士に依頼してやってもらう方法もあるが、警察に相談すると警察の方から銀行に凍結申請をしてくれることが多い。

今のところラインは登録電話番号の開示に極めて消極的であるため、ラインのやり取りの相手を特定するのは基本的に期待できない。そうなると、詐欺を行った者を被告として訴訟提起することもできなくなる。したがって、ある程度被害額を回収できるのは、凍結口座に残高があった場合に限られるのが一般的である。

この場合、凍結口座の名義人を相手として仮差押や本訴提起をすることになる。名義人は個人の他、会社名義(合同会社が多い)のこともある。

凍結口座の残高は、預金保険機構の「振り込め詐欺救済法に基づく公告」というページで確認できる。

既に警察に相談して口座凍結済みの場合、このページを自分でチェックし、目的の口座の残高がある程度存在することを確認できたら弁護士に依頼するのが費用対効果から見て合理的である。なお、凍結から公告まで2~5ヵ月程度かかる。また、仮差押等の手続は公告から2ヵ月以内にする必要がある。

いつ公告されるか分からない上に、公告されてからの期間制限があるので、毎日チェックする必要がある。