男と女は全く別の生き物だ。それゆえに、スレ違いは生まれるもの。
出会い、デート、交際、そして夫婦に至るまで…この世に男と女がいる限り、スレ違いはいつだって起こりうるのだ。
—あの時、彼(彼女)は何を思っていたの…?
誰にも聞けなかった謎を、紐解いていこう。
さて、今週の質問【Q】は?
▶前回:「前はすぐに返信が来たのに…冷めた?」3回会った後、彼からのLINEが急に減ったワケ
30歳になる僕は、無双状態のはずだった。
有名私学大学を卒業し、そのまま難関の総合商社へ就職。そこで一念発起してIT系のコンサル会社を起こし、先月3期目に入った。
会社も順調で、最近広尾の家賃30万弱の低層マンションへと引っ越して悠々自適に暮らしている。
そんななか、出会ったのが4歳年上の彩花だった。
正直、年上とデートするとは思っていなかったけれど、自立していて尊敬できる彩花と一緒にいる時間は楽しかった。それに彩花は、僕のことを好きでいてくれたから。
なぜなら、「海斗くんのこと、好きだよ」とハッキリ言われたから。
しかしここ数ヶ月、何度もデートしていたのに、彩花は急に冷たくなった。本当に、突然突き放されたのだ。
直近まで、順調に育んでいたはずの僕たちの関係。果たして、彼女はどうして急に冷たくなったのだろうか…。
Q1:初対面での男の印象は?
彩花と出会ったのは、マッチングアプリだった。ハッキリした目鼻立ちに、黒髪の大人っぽい雰囲気が魅力的で、僕は「いいね」を押した。
すると彩花からも「いいね」が返ってきて、何度かやり取りをした後に会うことになった。
アプリでの出会いは、初回で何となくこの先に進むかどうかがわかるもの。彩花とはやり取りの段階から話が弾んでいたので、最初から僕たちはガッツリとディナーをすることになった。
勝負の初デート。僕は外さないように、西麻布にある『Crony』を予約した。
「初めまして…」
個室の扉を開け入ってきた彩花を見た途端に、僕はこの選択が間違いではなかったことを確信する。想像より少し小柄だったけれど、アプリの写真と遜色なく綺麗だった彩花。
「初めまして、海斗です」
「海斗さん、身長高いんですね」
そんな話から始まった初デート。しかし初めてのはずなのに、僕たちの会話は自然に盛り上がる。
「え〜すごい!じゃあ海斗さんは、総合商社を辞めて、今の会社を作られたんですか?」
「そうなんですよ。彩花さんは代理店でしたっけ?」
「はい。広告代理店です」
聞けば、超大手の広告代理店に勤めている彩花。話している感じもとてもテキパキとしており、明らかに仕事ができそうなオーラが漂っていた。
フレンチベースに北欧の要素がMIXされた料理に舌鼓を打ちながら、僕は早速彩花に気になっている質問を投げかけてみる。
「ちなみに、彩花さんは何目的でアプリ使ってます?」
「え?もちろん交際からの結婚ですけど…。海斗さんは?」
「僕もです。自分で会社をやっていると孤独なことも多くて。誰かと一緒に過ごしたいなと思ってます」
「ご自身で経営されていると、色々とありますよね。すごいなぁ、その年齢で独立して、自分でされていて」
「いやいや、全然。でもこうやって尊敬し合える関係が理想です」
彩花がしっかりしているせいか、僕は初回なのに、自分の理想などをハッキリと伝えることができた。
ふわっとしている同じ歳くらいの女性だと、話が弾まないことも多い。
仕事の話をしても「へ〜」とかで済まされたり、会話がチープになることもある。その点、彩花は同じ目線で話すことができ、心地良かった。
もちろん次も会いたかったので、僕は彩花がお手洗いに立った際にささっと会計を済ませて、スマートに誘ってみる。
「あれ?お会計は…」
「ここは大丈夫です。ところで、またお会いしたいのですがどうでしょうか?」
「はい、もちろんです」
この結果、僕たちはここから何度も会う関係になっていく。
そして四度目くらいに会った際に、僕の家に彩花が来るような関係にまでなった。
Q2:以下の会話で女がずっと男に対して言いたかったことは?
初デートの翌週にもサクッと会うことになった僕たち。この日はただ飲んで終わったけれど、三度目のデートではしっかりディナーをし、四度目のデートではディナーの後にもう一軒行くことになった。
ただこの日は仕事で嫌なことがあり、少し僕は落ち込んでいた。
「今日も疲れたな…。クライアントにすごいしごかれて」
「そうなんだ、お疲れさま。でも、しごいてくれるクライアントさんくらいのほうが、自分の成長に繋がるじゃん」
「彩花ちゃんって、すごいしっかりしてるよね」
「そう?海斗くんもじゃない?」
この頃には、お互い打ち解けて敬語なんてとっくに抜けていた。
暗がりのバーでなんとなくお互いの手に触れ合いながら、見つめ合う。
「彩花ちゃんって、モテるの?」
「なにその質問(笑)。まぁ、それなりに、かな。海斗くんはモテそうだね」
「まあね。中高生の頃とかヤバかったかも。今もだけど」
「そうなの?」
「うん。たぶん学年中の女の子が僕のこと好きだった」
「本当に?」
そんな話をしながら笑う彩花は、暗がりの中でも美しい。彩花といる時間が「自分にとって心地良い時間だ」と気付くのに、そう時間はかからなかった。
「そういえば今月、売り上げがかなり良くてさ。頑張った甲斐があったな〜。会社員時代の給料、かなり凌駕したわ」
そしてやはり、彩花には何でも話せる優しさと包容力があった。他ではできないような仕事の話も、彩花にはすんなりできる。
「そうなんだ。独立して良かったね!」
「最初は不安だったけど…やっぱり踏み出すって大事だよね」
「そうだね。私にはその勇気がないから尊敬するな」
「だよね?同世代の中でも、俺ってすごいほうだと思う」
「うんうん」
何でも話せて、一緒にいると落ち着く。それに、彩花が僕に好意を持っていることは、何となく伝わってくる。
「この後なんだけどさ…うち来る?」
「……うん」
こうして僕の家に来て、その夜泊まっていった彩花。その際、彩花は僕にハッキリとこう言った。
「私、海斗くんのこと好きだよ」
もちろん僕も遊びだったわけではない。体の関係を持った後でも、僕たちの関係は変わらず…いや、変わらないどころかもっと親密になった。
会う回数も増えたし、お互い時間が空いた時にカフェなどでパッと会うこともあった。なので断じて、体目当てなどではないし、僕は真剣だった。
「彩花に会うと癒やされるな〜」
「そう?よかった」
「今日も仕事が忙しくてさ。彩花は?」
「私も今月は結構忙しいかな」
「彩花って仕事頑張ってるから、こっちもモチベになる」
そんな感じで、お互いを高め合える関係だった僕たち。
しかしある日のこと。急に彩花の態度が冷たくなった。LINEの返信が明らかに遅くなり、会っている時もかなりそっけない。
― どうして急に?
何度も原因を考えてみたけれど、「他に好きな人ができたのか?」くらいしか原因がわからずにいる…。
▶前回:「前はすぐに返信が来たのに…冷めた?」3回会った後、彼からのLINEが急に減ったワケ
▶1話目はこちら:「あなたとだったらいいよ♡」と言っていたのに。彼女が男を拒んだ理由
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女が急に、冷める瞬間とは