若い頃は夜明け前から、ごはん、ごはん、と大騒ぎしていたえいたも、歳をとるにつれて、私の起床に合わせるようになった。私が目覚めるのと同時に、じれったそうに鳴きながら、私の手や足を噛んだり、お腹の上に乗ってきてごはんの催促をするのがお決まり。

しかし、最近では私が起きたことにすら気づかず、横で寝ていることもある。「えいた、おはよう」と声をかけると、やっと目を覚まして、寝ぼけた顔のままで、にゃあ、と返してくるのだ。えいたの頭を撫でながら抱きよせて、朝からゆっくり過ごすなんて今までなかった至福の時間。シニアねこの佇まいをまとい始めたえいたは、どこか達観したようなまなざしで、じっと私を見つめたりもする。やんちゃ過ぎて取りつく島もなかった、あのいたずらねこが。嬉しくもあり、ちょっと寂しい。

えいた えいた

ファッションブランド〈LOISIR〉デザイナー・前田敬子さんと暮らすえいた。ハンサムな名前の由来は永代橋(えいたいばし)の近くでコールタールまみれになって遊んでいるところを保護されたことから。空気は読めないと、ボランティアの方からもお墨付き。すでに壮年猫なのに相変わらずやんちゃで食いしん坊。趣味で段ボールアートを作ったり、上腕二頭筋を鍛えてみたり……。以前本誌で連載していた『まこという名の不思議顔のねこ』に登場していたまこは姉猫。兄猫しろたろとまことの暮らしを経て、現在は妹猫にんにんと同居中。本誌2022年5月号にて、わたなべとしふみさんによるえいたの紹介イラストを掲載しています。