熟れる前のトマトと桃の楽しい食感と、フレッシュな果汁。

これはやっぱり、どうしたってパリでは食べられない。決め手は、桃もトマトも熟れ具合がまだ若いことだったと思います。桃は、歯ごたえが残るくらいの硬さで甘みが前面に出ておらず、果汁がフレッシュな味わいで、旨味の強すぎない黄色いトマトと、とても自然に寄り添ったおいしさでした。その2つの主役に、キリッと輪郭をつけたのが、ドライにしたチェリーとトマトを合わせてほんの少し赤唐辛子を加えたペーストと、ハーブ類です。水気のないレモンくらい酸味のあるスイバに、1枚でも数十粒のスパイスに匹敵するほどパワー溢れる、セロリのエキスを濃縮したような香りのリヴェーシュ、トマトの隣で育った夏の象徴ともいえるバジルが、調味料代わりの味付けに。そこに赤いペーストが深みを与えて、爽やかなのにパンチが効いている、思わず二度見しちゃうような魅力のタルティーヌでした。

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2024年8月23日

前回はまだまだ青かったトマトが、この日は、妖精でも出てきそうなくらいに、楽しげに色をつけていました。8月も半ばを過ぎて、すこし秋の気配を感じるようにはなっていたけれど、とうもろこしはさらに背を伸ばし、幾つもの種が栽培されているピーマンも弾けそうなツヤを湛え、夏野菜はどれも今が旬といわんばかりでした。


アミューズメントパークのアトラクションの乗り物にしたいくらい可愛いトマト。

温室も覗くことにして、室内をひと通り見てから戸口に向かうと、甘く芳しい匂いがフワッと漂いました。どこから来た?と後ずさりするも、気配はなく。なんだったんだろう?と思いながら、外に出ようとしたところで、もう一度香りました。芳しい香りの主は、すぐ脇に枝を伸ばしたイチジク。これがもう、ここは天国か!と思うほどうっとりする香りで、風がそよぐのを待って、顔を上にむけ、イチジクの葉に囲われる中にしばらく佇んでいました。実はまだ青いけれど、だいぶぷっくりしていたから、次回は食べごろになっているかもしれない。そうなったら、どんな香りがするのだろうと想像してまた夢心地でした。しあわせな時間だったなぁ。