リレー栽培STEP3
コンパニオン一年草を選ぶ


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耐寒性があり、チューリップと同じ時期(4月から6月)に華やかに開花する一年草があります。これらの耐寒性一年草は、チューリップのコンパニオンとして庭を彩ってくれます。多くの種類があるので、その中から好みで選べばOK。具体例をいくつかご紹介しておきましょう。

【コンパニオン一年草の例】

アグロステンマ・ギタゴ/‘桜貝’(Agrostemma githago/A. githago ’Sakuragai’:ナデシコ科ムギセンノウ属)
ポピー/ヒナゲシ(Papaver rhoeas:ケシ科ケシ属)
オルラヤ・グランディフローラ(Orlaya grandiflora:セリ科オルラヤ属)
ボリジ(Borago officinalis:ムラサキ科ルリジサ属)
ジャーマン・カモミール(Matricaria recutita:キク科シカギク属、カモミール種 )
ニゲラ(Nigella damascena:キンポウゲ科クロタネソウ属)
ヤグルマギク/セントーレア(Centaurea cyanus:キク科ヤグルマギク属)

アグロステンマ・ギタゴ/‘桜貝’(Agrostemma githago/A. githago ’Sakuragai’ :ナデシコ科ムギセンノウ属)


ギタゴと‘桜貝’。Photo/田中敏夫

種子からの苗作りが比較的容易で、こぼれ種から発芽することも多く、とても経済的です。よく出回っているのは原種系のギタゴと淡いピンク花の園芸種‘桜貝’ですが、2品種を混植するほうが美しいと感じています。すらりとした優雅な草姿が魅力ですが、倒れやすいという欠点もあります。

ポピー(Papaveraceae:ケシ科ケシ属)

ケシ属(Papaver)には60種ほどの原種があるそうです。園芸用に利用されるポピーは、主に次の3つのグループのものです。

アイスランド・ポピー(P. nudicaule)


Photo/ David Monniaux [CC BY-SA 3.0 via Wikimedia Commons]

18世紀にシベリアで発見されたので、当初はシベリア・ヒナゲシと呼ばれていましたが、語呂がよいのかアイスランド・ポピーという呼称が一般的となりました。アイスランドとの直接の関連はないそうです。

ヒナゲシ(P. rhoeas)


Photo/Agnieszka Kwiecień, Nova [CC BY-SA 4.0 via Wikimedia Commons]

フランス語ではコクリコ(Coquelico)。響きが素敵で、原野に群生している風景が美しい動画で紹介されたり、モネの絵画などでも題材とされていることから、最近はコクリコのほうが一般的になっているのかもしれません。また虞美人草という別名は、史記の項羽伝で言及された悲劇の愛妃である虞にちなんだものです。

オリエンタル・ポピー(P. orientale)


Photo/ Dominicus Johannes Bergsma [CC BY-SA 4.0 via Wikimedia Commons]

原種はトルコ、イランなど。鬼ゲシとも呼ばれる大型種です。大輪花を楽しむことができますが、関東以西など暖地では夏越しが難しいのが残念です。

なお、ポピーの近縁種の中には、栽培に法的禁止・規制があるもの、避けるべきものとされる品種群があります。次にあげる種類は栽培できないことに注意しましょう。

ケシ(P. somniferum)、アツミゲシ(P. setigerum)は「アヘン法」により、ハカマオニゲシ(P. bracteatum)は「麻薬及び向精神薬取締法」により、栽培は禁止されています。また、ナガミヒナゲシ(P. dubium)は「特定外来生物」や「生態系被害防止外来種(要注意外来生物)」には指定されていないものの、これらと同様に生態系に大きな影響を与える外来植物とされています。いずれの品種も決して栽培しないようにしてください。

栽培禁止ポピーの見分け方については、下記の東京都健康安全研究センターのサイトをご参照ください。

オルラヤ・グランディフローラ(Orlaya grandiflora:セリ科オルラヤ属)


Photo/田中敏夫

種子からの育苗が容易でとても育てやすい草花です。開花期間は千葉県西部では5月。チューリップのやや後、バラと同じ頃です。千葉県北西部では盛夏に耐えきることができませんが、5月の中旬には絢爛と花開き、華やかなので庭に欠かすことができません。

秋に露地播き、またはポット播きして冬越しさせるのがおすすめです。こぼれ種でもよく増えることから、数年経過すると繁茂しすぎることになるかもしれません。コントロールに注意しましょう。

ボリジ(Borago officinalis:ムラサキ科ルリジサ属)


Photo/田中敏夫

マドンナブルーと評される美しい青花は、エディブルフラワーとしてサラダの付け合わせに利用されることもあります。そのためキッチンハーブの一つとされることが多いですが、トゲトゲと剛毛に覆われて青みを帯びた姿がとても魅力的で、春から初夏咲きの庭植え一年草としてとても有用だと思います。

オルラヤ・グランディフローラほどではありませんが、大きな種子なので育苗も簡単で、こぼれ種で増えることも期待できます。

ジャーマン・カモミール(Matricaria recutita:キク科シカギク属)
ダイヤーズ・カモミール(Cota tinctoria:キク科コタ属)


‘ジャーマン・カモミール(A. Matricaria recutita)’ (左)と‘ダイヤーズ・カモミール(A. Cota tinctoria)’(右)。Photo/Yuriy75、Kor!An [CC BY-SA 3.0 via Wikimedia Commons]

ハーブティーによく用いられるのが、白花のジャーマン・カモミール。盛夏を越えることは難しいですが、キク科(Asteraceae)らしい可憐な小花、鳥の羽のような裂状の葉が他の草花とのコントラストが生じることなどから、春を彩る一年草としてよく利用されます。

近縁種のダイヤーズ・カモミールは黄花が美しく、両品種を混植するととても優雅です。ダイヤーズ・カモミールはジャーマン・カモミールよりも少し遅れて開花し、草丈も少し高性になることが多いように思います。

ニゲラ(Nigella damascena:キンポウゲ科クロタネソウ属)


ニゲラの花と実。Photo/I, Wildfeuer、JLPC [CC BY-SA 3.0 via Wikimedia Commons]

キンポウゲ科(Ranunculaceae)の一年草で、“Love in the Mist(靄のなかの恋)”というロマンチックな別名がふさわしい花。カモミールと同様に細く切れ込んだ小葉が魅力的です。白、ピンク、青、パープル、黄色と花色も豊富ですし、小さな風船状になる実もエキゾチックで、春には必ず見たい花です。

ヤグルマギク/セントーレア(Centaurea cyanus:キク科ヤグルマギク属)


Jaren Jai Wicklund/Shutterstock.com

青やピンクのほか、白、バーガンディなどの色があるヤグルマギク。ヤグルマギクとセントーレアはどちらも同属の仲間ですが、日本ではセントーレアはキク科ヤグルマギク属(セントーレア属)のうち多年草のものを指し、ヤグルマギクは一年草を指すのが一般的です。

STEP1~3で草花を選んだら、10月頃に植え付け、春の開花期まで楽しみましょう。

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リレー栽培STEP4
チューリップ球根の堀上げ


開花後のチューリップの球根。Photo/Beat Ruest [CC BY-SA 4.0 via Wikimedia Commons]

3月から芽を出したチューリップの開花は4月初旬から下旬、おおよそ3週間ほどです。5月に入ると地上部が枯れ込み、休眠に入ります。

休眠期に入ったチューリップは原種系など一部を除き、植え込んだまま越年して翌年も開花させることは簡単ではありません。開花後は、開花に力を使い果たした親球根は消滅し、子球ができているといった状態が一般的です。しかし、それらの子球は、たとえ夏越しできたにしても、翌年は葉を伸ばすだけで開花しないということが多いのです。

翌年の開花を実現するためには、花後は早めに花茎を折り取って球根の養生に努め、休眠に入ったら掘り上げて、充実したものだけを残して陰干しするなどの処置が必要です。