リレー栽培STEP5
春秋一年草を選ぶ


SusaZoom/Shutterstock.com

5月からチューリップの後を埋める一年草は、ぜひお好みのままいろいろと試してみてください。春秋一年草選びのポイントとして、次の2点を基準にするのがおすすめです。

周りの草花とよく調和する

開花期間が長い

初夏から晩秋まで、庭では多くの灌木や宿根草が繁茂していることを考えれば、草丈は60~80cm、株幅があまり張らないタイプが使いやすいでしょう。また、開花期間が長い草花、できれば10月まで咲き続けるものは、管理がとても楽です。

美しい一年草は数えきれないほどあります。お好みで選び、ガーデニングを楽しむことが一番だと思います。ご参考までに春秋一年草の例をいくつか挙げます。

【春秋一年草の例】

高性ジニア/ヒャクニチソウ(Zinnia:キク科ヒャクニチソウ属)
アフリカン・マリーゴールド(Tagetes:キク科コウオウソウ属)
一年性サルビア(Salvia splendens etc.:シソ科アキギリ属)
センニチコウ ‘ファイヤーワークス’(Gomphrena globosa ‘Fire Works’:ヒユ科センニチコウ属)

高性ジニア/ヒャクニチソウ(Zinnia:キク科ヒャクニチソウ属)


Photo/田中敏夫

6月から9月末、時に10月まで、長く咲き続けて夏の花壇を彩るジニア。イエロー、ピンク、白、二色咲きなど花色豊富。シングル、ダブル咲きなど花形にも変化があり、花壇前景をカバーする草丈15cmほどの矮性種から、60cm高さほどで切り花などに利用されるものまでバラエティ豊かです。

メキシコを中心に15種ほどの原種が知られていますが、主に、草丈が60cm前後となるヴィオラケア系(Z. violacea)と、細葉で高さ15~30cmに収まる矮性のアングスチフォリア系(Z. angustifolia)が流通しています。

夏花壇では、宿根草と調和する40~60cmほどの草丈のものが利用しやすいと解説しましたが、その例がジニア・クィーン系。もともと切り花用の品種ですが、優雅な花形と花色で人気があり、庭植え向けに苗が出回るようになりました。また、種子も販売されています。炎天下でも落ち着いた雰囲気を醸し出してくれる’クィーン・レッド・ライム’や’ジャイアント・ライム’はとても魅力的です。

アフリカン・マリーゴールド(Tagetes:キク科コウオウソウ属)


Sayan Puangkham/Shutterstock.com

マリーゴールドの原種自生地は中央、南アメリカ。市場には大輪・高性の“アフリカン”と小輪・矮性の“フレンチ”が出回っていますが、この名前は原産地を示すものではありません。“アフリカン”は植栽されていたスペインから、“フレンチ”はやはり植栽されていたフランスからヨーロッパ中に広がったことからの名称だとのことです。

矮性のフレンチのほうが多く出回っていますが、チューリップ後の庭からリレーされるとなると草丈が足らず、他の草花に埋もれてしまいがちです。イエロー、オレンジ、白などの大輪花を咲かせる“アフリカン”のほうが適しているでしょう。

一年性サルビア(Salvia splendens etc.:シソ科アキギリ属)


左上から時計回りにサルビア・スプレンデンス、サルビア・コキネア、サルビア・ファリナセア、サルビア・パテンス。Photo/ George E. Koronaios [CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons]、Forest & Kim Starr [CC BY 3.0 via Wikimedia Commons]、 Photo/ Kakidai, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons、Raffi Kojian, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons]

一年草、多年草、さまざまな種類があるサルビアですが、主にハーブとして出回っているセージも含めてアキギリ属(Salvia)に含まれています。900種に及ぶ原種があるとのことです。

自生地では多年草であることが多いサルビア/セージですが、非耐寒性で晩秋に枯れこむため、一年草扱いのサルビアがあります。

サルビア・スプレンデンス(S. splendens)といえば、公園などで赤い絨毯のように群生して夏を彩っている姿に思い当たる方は多いでしょう。品種改良が進み、赤花ばかりではなく、パープル、白、そして淡いアプリコットやソフト・ピンクなどニュアンスカラーの品種など花色も豊富になっています。

その他、一年草扱いのものとしては、萼弁が発色しないため、落ち着いた花色になるサルビア・コキネア(S. coccinea)、ブルーサルビアと呼ばれる青花のサルビア・ファリナセア(S. farinacea)、淡紅色や淡青色が多いサルビア・ヴィリディス/ホルミナム(S. viridis/ horminum)などがあります。


ニュアンスカラーのサルビア・スプレンデンス。Photo/Forest & Kim Starr [CC BY 3.0 via Wikimedia Commons]

センニチコウ ‘ファイヤーワークス’(Gomphrena globosa ‘Fireworks’:ヒユ科センニチコウ属)


Photo/Jim Robbins [CC BY-NC-ND 4.0 via NC State University]

「千日紅」という和名のとおり、長く開花が楽しめるのがセンニチコウです。

赤、パープル、白など花色が豊富なグロボーサ(G. globosa)由来の矮性種は、草丈20~40㎝。近縁種の赤やオレンジで高性のキバナセンニチコウ(G. haageana)由来の’ストロベリーフィールズ’も人気がありますが、パープルの花弁の間からイエローのシベがわずかに覗く美しい花色の‘ファイヤーワークス’は草丈80~100㎝となり、風にそよぐ草姿がとりわけ美しく、一番人気かと思います。なお、関東以西なら露地で越年するという記述も見受けますが、簡単ではないことから、一年草扱いとしました。

最近、矮性で横広がりするファイヤーワークスの改良種‘ゴンフレナ・ラブラブラブ’も登場し、より多花性で開花期間も長く人気があります。

Credit

文&写真(クレジット記載以外) / 田中敏夫
– ローズ・アドバイザー –


たなか・としお/2001年、バラ苗通販ショップ「グリーンバレー」を創業し、9年間の運営。2010年春より、「グリーン・ショップ・音ノ葉」のローズ・アドバイザーとなり、バラ苗管理、楽しみ方や手入れ法、トラブル対策などを行っていた。現在フリー。