時を纏うことで感じる、何げない日々の喜び。
もともと母が愛用していた〈カルティエ〉の「マストタンク」。アンディ・ウォーホルをはじめとした多くの著名なアーティストが愛した時計と知り、憧れを抱くようになった4年ほど前に譲り受けました。ローマ数字が縦に並んだ文字盤と、ブルーの石「スピネル」があしらわれたリューズがお気に入り。シンプルな装いが多いので、どんな服にも合う黒いレザーのバンドに替えて、毎日着けています。スマホで時間を確認できる今の時代、必ずしも腕時計が必要なわけではないけれど、あえて身に着けることで、時の尊さや愛おしさを実感できているような気がします。その理由は、もしかしたら手巻きだからかもしれません。基本的に、時計やジュエリーは好きなものを長く使うタイプ。だからこの先もずっと、この時計と共に”時”を刻んでいきたいです。
平野紗季子 Sakiko Hiranoフードディレクター
食を中心とした文筆活動や事業などを行う。10年ぶりのエッセイ集『ショートケーキは背中から』(新潮社)が発売に。
illustration : Megumi Sasaki text : Shoko Matsumoto
&Premium No. 131 LONG-TIME STAPLES / 使い続けたくなる、愛しいもの。
ファッションやライフスタイルにまつわるもの選びにおいて、時間をかけて長く付き合っていく姿勢が、これまで以上に必要とされているように思います。でも、ただ漫然と「長く使い続ける」ことだけが重要ではなく、それを使ったり、身に着けたときに、出合った頃と変わらぬ「愛おしさが続いている」ことも、忘れてはならない大切な要素なのではと考えます。初めて手にしたときの高揚感、作り手のこだわりに惚れ惚れとしたこと、使い続ける日々の中で紡がれた大切な思い出……。そういったさまざまな「記憶」が、人とものを、長きにわたって、幸せなかたちで繫ぎ合わせていくのです。〈ミナ ペルホネン〉のデザイナー・皆川明さんをはじめ、たくさんの方々に「使い続けたくなる、愛しいもの」にまつわるエピソードについて聞いてみました。
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