時代の変化とともに共働きの夫婦が増えていますが、年金についてはいまだに「夫:サラリーマン、妻:専業主婦」が“モデル世帯”とされています。A夫妻も、そんなモデル世帯の家庭のひとつ。ある日、A夫妻はなに気なく確認した「ねんきん定期便」に愕然とします。いったいなにがあったのか、株式会社よこはまライフプランニング代表取締役の五十嵐義典CFPが、事例をもとに〈年金ルール〉のポイントを解説します。

「ねんきん定期便」を見て愕然…59歳夫妻の“想定外”

現在59歳のAさんは、24歳から30年以上会社員を続けています。一方、Bさんは結婚前の数年間は会社に勤めていましたが、結婚後は59歳の現在まで専業主婦として家庭を支えてきました。

A夫妻の周りには共働き世帯も多いですが、A夫妻は「夫:サラリーマン、妻:専業主婦」の世帯です。老後や年金についてきちんと考えたことはありませんでしたが、2人は「合わせて月30万円近くは支給されるだろう」と思っていました。

しかし、「ねんきん定期便」を確認した夫妻は驚きを隠せません。年金の受給見込額を確認したところ、2人合わせて月24万円(年間288万円)程度だったのです。具体的には、Aさん:月17万円(年間204万円)、Bさん:月7万円(年間84万円)と書かれています。

「両親はもっと年金を受け取っていたはずなのに、たったこれだけ!?」「なにかの間違いでは?」と一気に老後が不安になったA夫妻は、お金の専門家であるCFPに相談してみることにしました。

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「ねんきん定期便」の見込額はあくまで“見込み”

厚生労働省によると、「夫:サラリーマン、妻:専業主婦」世帯のモデル年金は月約23万円となっています(2024年度時点)。AさんとBさんの2人の合計は24万円であるため、平均よりはやや高い額といえます。

ちなみに、「ねんきん定期便」に書かれた年金見込額は「60歳までいまの加入条件で加入した場合の金額」です。AさんもBさんも年金の受給は65歳からですが、60歳以降の年金加入についてはこの「見込額」の計算に含まれていません。

そのため、年金ルールを把握していなかったA夫妻は、想定していた月30万円からの“まさかの減額”に大慌てしていたものの、60歳以降に年金制度へ加入することで、65歳以降の年金受給額を増やすことができます。