50代ともなれば、悲喜交交(ひきこもごも)、心身ともに想定外のことが起こります。
体と心が揺れ動きやすい大人だからこそ胸に響き、心を整えてくれる言葉たちをお届け。

漫画や小説、映画は、名言の宝庫!
カルチャー好きのライター陣が、50代女性に届けたい言葉を厳選して紹介します。

漫画

登場人物たちのリアルな心情が伝わりやすい漫画。ビビッと共感できる言葉が多数。

紹介してくれたのは・・・
ライター
工藤花衣さん
編集プロダクションを経てフリーランスに。雑誌や書籍でインタビューや女性のライフスタイル、カルチャーに関する記事を執筆。

『あした死ぬには、』
雁須磨子(太田出版)


42歳の独身女性を主人公に、40代で直面する心身の変わり目を切実に描く。
「第23回文化庁メディア芸術祭」マンガ部門優秀賞受賞作。

「年をとってよかったこと」?

(中略)

「惜しまなくなった」よね

(中略)

感情の出し惜しみを

しなくなった

あーいいなとか

今この人褒めたいなとか

会いたいなとか

そういうのパッと


更年期や婦人科系の疾患など、年齢を重ねたことによる心と身体の変化に直面する40代の女性が主人公のオムニバスシリーズで、刊行時に読みました。

主人公よりも先輩にあたる人物(おそらくアラフィフ)の言葉です。

私自身も以前は発言するときに、少し駆け引きや出し惜しみまではいかないけれど、コミュニケーションを面倒がるところがありました。

でも年齢を重ねたからこそ、相手が年下でも年上でも、関係性が親しくてもそうでなくても、ポジティブな言葉はどんどん発していこうと思えます。

『A子さんの恋人』
近藤聡乃(KADOKAWA)

私は子どもの頃から

いつも平均よりちょっと太ってた

でもそれで困ったことは一度もない

いろいろうまくいかないのは

体重のせいだと

思ってる人だけすればいいのよ

ダイエットなんて

©近藤聡乃/KADOKAWA

主人公・えいこの友人であるゆうこち ゃんが、モンブランをもうひとつ食べたい、そのときの言い訳として発したセリフ。

こんな言葉を発せられる、自己肯定感が高くてチャーミングなゆうこちゃんが、私は大好きです。

もちろん、食事や体型維持についての考え方は人それぞれ自由ですが、ゆうこちゃんくらいおおらかに考えられたらいいな、と。

おいしいものを目の前にし、思い切り食べたい! でもちょっと食べ過ぎかも…? と思ったときに、この言葉を思い出して、“前向きな言い訳”にしています。

『ブランチライン』
池辺葵(祥伝社)

私もリアルではたくさんの人と関わりたいとは思わないんだけどな

いろんな人が生きてることは知っていたいんだな

違う声で違う姿で

違う価値観で違う毎日を生きてるのがおもしろい

自分もちょっと自由になれる

もう自分の視野の狭さで誰かを縛りつけたくないからな

©池辺葵/祥伝社 FEEL COMICS

とある4姉妹と、その長女の息子を描いたホームドラマのコミック。今回挙げたのはその4姉妹の末っ子、仁衣の言葉。

クールでマイペースに見えるけれど、人や仕事に真摯に向き合っている彼女らしいシーンです。

実際は年齢を重ねるほど、自分の“好き”は強固になっていくし、それに賛同してくれる人たちのなかは心地よいもの。

でもあらためて、違う価値観の人と交わることで本当の“自由”に辿りつけると気づかされる言葉です。

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エッセイ

「本」は読むときの心情や年齢で受け取る印象も異なるもの。
今の“あなた”に届けたい言葉とは。

紹介してくれたのは・・・
編集者/コピーライター
山村光春さん
キャッチコピーや編集、執筆を手がけるBOOKLUCK主宰。福岡と都内の二拠点生活。近著は『おうちで作れる カフェのお菓子』(世界文化社)。

『乗り換えの多い旅』
田辺聖子(集英社文庫)


筆者の田辺聖子さんが50代後半のときに綴った、生きることの厳しさと慈愛をこめたエッセイ集。人生の指針になる1冊。

“人生の電車は、たいへん、

乗り換えの多い

旅なのかもしれない”

―『乗り換えの多い旅』集英社文庫「乗り換えの多い旅」より抜粋―

昔のように一生懸命やっていても、同じような成果が上がらない。

それでも自分自身への過信からか、もしくは往生際の悪い性格からか、僕は「なに、すぐに元通りになるはず」と、そのままの生活パターンを押し通そうとしていました。

でも、それならそれで、今までとちがうやり方、つまり別の電車に乗るべきと説く著者に、ハッとさせられました。体も、内面も、周りで起きることも変わっていくことを受け入れる。

前向きな諦めの先に、新たな光と気づきがあると教えてもらいました。

『限りなく繊細でワイルドな森の生活』
内藤里永子(KADOKAWA)

自然が与えようとしているエネルギーに

気がつき、それを受け取る―。

これが、この世界に生きる人間に与えられた

恩寵といえるのではないだろうか。

歳を重ねるたび、どんどん自然が好きになっていく。そんな中僕が勝手に「街の山荘」と呼んでいる、森に隣接した家に引っ越したときに出合った一冊です。

大切な人たちが50代の若さで次々亡くなっていったショックと病を抱えた著者の、山中独居の日々を描いたもの。

失意の果てにみつけた光、それは自然のありようと、それを感じる好奇心であることに心ゆさぶされました。