元国税局芸人が伝授する「株の“損失”」を減らすテクニック…確定申告を利用した“おトクな方法”とは?

今年8月、日経平均株価がブラックマンデー超えの歴史的急落、翌日には歴史的急騰という波乱の展開を見せた。株には株主配当金など「お得」なイメージもあるが、当然その価値が下落すれば「損失」を出す。

株で損した時、利益が出た時、国に納める“税金”はどうなるのか。東京国税局に勤めていた芸人・さんきゅう倉田氏が解説する。

※この記事は、さんきゅう倉田氏の著作『元国税局芸人が教える わかる、得する!超やさしい税金の教科書』(学研)より一部抜粋・再構成しています。

株の利益は譲渡所得に税金がかかる

株取引で利益が出た場合は、譲渡所得に対して20.315%(所得税15%、復興特別消費税0.315%、住民税が5%)の税金がかかります。

ここでいう譲渡所得は、株を売って得られる利益ではありません。

取引で得た収入金額(譲渡価格)から、株の取得にかかった費用(取得費)と証券会社への手数料など(譲渡費用)を差し引いた金額が譲渡所得となります。

たとえば、1000万円で取得した株を3000万円で売却した場合の譲渡所得は、3000万円から取得費1000万円(購入手数料を含む)と譲渡費用を差し引いた金額になるのです。

他の所得と分離して所得税額を計算する

株取引による譲渡所得は、申告分離課税の方法で税金を支払います。

申告分離課税は、他の所得と分離して所得税額を計算する方法です。上場株式等と一般株式等も別々に課税金額を計算します。

上場株式等は、主に金融商品取引所に上場されている株式などをいい、ETF(上場投資信託)やJ-REIT(不動産投資信託)も含まれます。上場株式等以外のものが一般株式等になります。

株取引の口座によって納税方法は異なる

株取引で利益が出た場合は、原則として確定申告をしなければなりません。ただし、「源泉徴収ありの特定口座」を利用している方は確定申告をする必要はありません。

株式投資で利用できる口座には「一般口座」と「特定口座」の2種類があり、口座を開設するときに選ぶことができます。

一般口座は、1銘柄ごとの取引明細をもとに1年間の売却損益を計算し、利益が出ている場合は、翌年の2月16日から3月15日までの間に確定申告をして納税します。特定口座の場合は、「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」があります。

どちらも証券会社が税金の計算をしてくれる点では同じですが、「源泉徴収あり」では利益が確定した時点で、利益の中からあらかじめ納税分が引かれる(源泉徴収)ことになります。納税の代行までしてくれるので、とくに何もすることがありません。

「源泉徴収なし」では、納税の計算はしてもらえるものの、確定申告をしなければなりません。ですから、確定申告が面倒であれば、特定口座の源泉徴収ありを選ぶのがおすすめです。

株の損失は「損益通算」で減らすことが可能

株取引で損失が出た場合は、原則として確定申告をする必要はありません。ただし、確定申告をしたほうが得をする場合があります。それが「損益通算」という制度です。

譲渡損失をその年の利子・配当所得と相殺することで税金を少なくするのが損益通算です。

複数の証券会社で株取引をしていて、それぞれの口座で売却益(譲渡利益)と売却損(譲渡損失)が出た場合は、確定申告をすることで売却益と売却損を相殺することができます。

ただし、損益通算できるのは国内の証券会社を通じて売却した上場株式などの損失に限ります。FX(外国為替)やNISA、暗号資産は対象外です。

損失は最大3年間、繰越控除することができる

損益通算しても損失となることもあると思います。そのような場合は、「譲渡所得の繰越控除」の制度を利用することができます。

この制度は、その年に控除しきれない損失について、翌年以降最大3年間にわたって譲渡所得から繰越控除することができるものです。

この制度を利用するときは、損失を出した年の所得税について確定申告が必要になるほか、損失を繰越ししている間は毎年確定申告しなければなりません。その年に株式の売買をしていなくても、申告が必要になりますので注意が必要です。

株式の損失について繰越控除を利用するかどうかは納税者の任意となっており、確定申告による意思表示が必要だからです。

この制度は、上場株式などを売却したときに発生する損失を対象としていますので、非上場株式などで生じた損失は対象外になります。