夏の暑さで庭がややくたびれ気味の時期、どうやって庭を美しく保つかはガーデナー共通の課題です。ハンギングバスケットマスターとして全国で講師を務める武島由美子さんは、庭の随所にハンギングバスケットやコンテナを飾り、端境期にも華やかな庭を実現しています。ハンギングバスケットの効果的な演出方法を武島さんに教わります。
庭のフォーカルポイントに効果的なハンギングバスケット
夏から秋への端境期には、庭の彩りがやや寂しくなる時期があります。酷暑で植物のいくつかは夏バテ気味になるうえに、ヨトウムシなどガの幼虫が多く発生し、花や葉がボロボロになることも。そんな端境期にも、庭に見所を作る方法がハンギングバスケットです。
ハンギングバスケットとは
ハンギングバスケットとは、植物を空中に吊るして楽しむガーデニング手法の一つ。球体や半円状の容器に植物を植え込み、チェーンやフックで壁や天井、または庭の構造物などに吊るして飾ります。ハンギングバスケットは地面を使わずに空中を華やかに彩ることができるので、玄関先やベランダなどで楽しめるのが魅力です。
立体演出に効果的なハンギングバスケット
アーチに飾ったケイトウのハンギングバスケット。
また、高い位置に飾ることができ、視覚的なインパクトを効果的に与えることができるため、庭の中のフォーカルポイントとしても活躍してくれます。庭に立体的な彩りを演出できるつるバラやクレマチスなどのつる性植物は、開花期が春に限られる場合が多いので、ハンギングバスケットは寂しくなりがちな端境期に重宝します。
バラの花がない時期も色鮮やかなケイトウがアーチを華やかに彩る。
この庭は春の一季咲きのつるバラが中心で、春はバラの連続アーチが華やかに彩ってくれますが、秋にはバラが咲きません。でも、ハンギングバスケットを庭に飾ると、バラがない時期も華やかさが演出できます。
下草とコーディネートした単植のハンギングバスケット
アーチの下のアルテルナンテラやペンタスの花色とハンギングをコーディネート。
ハンギングバスケットを庭で上手に生かすポイントは、飾る場所の周囲の状況に合わせて花を選ぶこと。例えば、庭の中央にある連続アーチに飾るハンギングバスケットには、緑の中でパッと目立ち、下草の花色ともコーディネートした赤系のケイトウを選びました。
シンプルな背景に映える寄せ植えのハンギングバスケット
扉の両サイドに対にして飾ることで、玄関にフォーマルな雰囲気を演出できる。下に置いたボックス型の鉢とともにパープルの寄せ植えでコーディネート。
一方、玄関扉のサイドには数種類の淡いパープルの花を組み合わせた繊細なハンギングバスケットを飾りました。壁や扉などのシンプルな構造物が背景の場合には、淡い色合いや複数を組み合わせた複雑な表情もよく映えます。
セイヨウニンジンボク‘パープレア’やカリブラコア、ペンタス ブルー、トウガラシ‘パープルフラッシュ’などを組み合わせたハンギング。
私は本来こういうやさしい色合いの花が好みなのですが、この淡いハンギングを庭の中のアーチに飾っても存在感が出ません。アーチの場合は遠景でもパッと目につく必要があるので、ケイトウ1種に絞った単植のハンギングのほうが効果的。このように、どこからどう見えるかを意識して、適材適所の花を選ぶのがポイントです。
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3カ月は保つ花材を使うのがハンギングバスケットのコツ
イエロー系でまとめたハンギングとパープル系のコンテナとのコーディネートがフォーカルポイントに。
ハンギングバスケットにはさまざまな容器がありますが、壁掛けでよく使われるのがスリット式バスケットです。上の写真では幅約30cmのスリット式バスケットを使っています。側面にもスリット状の植え穴があり、計18株植えられているので、同じサイズの植木鉢と比べるととても華やかになります。
使った植物はジニア‘プロフュージョン アプリコット’、セイヨウイワナンテン‘レインボー’、トウガラシ‘パープルファントム’、ジュズサンゴ‘カスリ’の4種類。
ハンギングバスケットの植え方
このサイズのスリット式バスケットの場合、スリット部分に上から下へ差し込むように苗を植えていき、3段まで(3段部分は手前と奥)植えることができます。一度植えると基本的に抜き取って入れ替えることができないので、途中で枯れてしまうものがないように見頃が揃うものを選びます。また、たくさんの苗を使うのですから、できる限り長く楽しみたいもの。私は最低3カ月は楽しめることをルールに花を選んでいます。見頃を長くするには、水もちのよい土を選び、ゆっくり長く効くタイプの緩効性肥料や害虫忌避剤もあらかじめ土に混ぜ込んでおくのもコツです。
掛ける場所のない場所で活躍するハンギンググッズ
ハンギングバスケットを飾る際に、バスケットを引っ掛ける場所の強度はとても重要です。前述したように壁掛けタイプの鉢では1鉢に20株ほどの植物と用土が入り、さらに水やりをするとかなり重くなります。ハンギングバスケットを飾るにはしっかりした構造物が必要ですが、住宅の壁に無闇に穴を開けると水漏れなど深刻な被害をもたらす可能性があります。引っ掛ける場所がないけれど、ハンギングを飾りたいというときに便利なのがハンギングスタンドです。上の写真は公道に面した花壇で、1本足のハンギングスタンドを差し込んでバスケットを飾っています。
ジニア‘プロフュージョン’のカラーミックス。花壇にさまざまな花が咲くのでハンギングバスケットは単植で印象的に。
これはハンギングスティック(取り扱い/ベルツモアジャパン)という地面にさすだけで飾ることのできるハンギングスタンドで、シンプルなデザインなのでハンギングの花がよく映えます。深さがあればコンテナに差し込んで使うこともでき、地植えができない場所でも活躍します。このようにバスケットはもちろん、ハンギング専用のさまざまな資材があるので、それらを上手に用いると飾れる場所の幅が広がります。