韓国で出合った実用的で見た目もいい手工芸。
7〜8年ほど前に招待された文化交流イベントで初めて訪れた韓国。ステンレスの無機質なドリップケトルが多いなか、もう少しぬくもりがあるものを探していたところ、ソウル市内のギャラリーで見つけました。蓋の取っ手部分にある鳥のモチーフがなんともキュートで、持ち手には蔓が巻いてあり、熱伝導のいい銅製でも安全。バリスタがデザインしたらしく、使いやすさも抜群で、コーヒーを淹れる時間が楽しみに。気に入ったものは、毎日どこでも使いたい。そう思い、二拠点生活用に買い足そうとしたものの、作家名が不明で探すのに苦戦。ところが、現地に住む知人が少しの手がかりですぐに見つけ出してくれました。2つ目に買ったのは、鳥の表情が違って見えるひと回り小さいサイズ。経年変化による落ち着いた褐色が、ブレイクタイムを彩ってくれます。
小川 糸 Ito Ogawa作家
2008年に小説『食堂かたつむり』でデビュー。10月初旬に書き下ろし長編小説『小鳥とリムジン』(ポプラ社)が発売予定。
illustration : Megumi Sasaki text : Shoko Matsumoto
&Premium No. 131 LONG-TIME STAPLES / 使い続けたくなる、愛しいもの。
ファッションやライフスタイルにまつわるもの選びにおいて、時間をかけて長く付き合っていく姿勢が、これまで以上に必要とされているように思います。でも、ただ漫然と「長く使い続ける」ことだけが重要ではなく、それを使ったり、身に着けたときに、出合った頃と変わらぬ「愛おしさが続いている」ことも、忘れてはならない大切な要素なのではと考えます。初めて手にしたときの高揚感、作り手のこだわりに惚れ惚れとしたこと、使い続ける日々の中で紡がれた大切な思い出……。そういったさまざまな「記憶」が、人とものを、長きにわたって、幸せなかたちで繫ぎ合わせていくのです。〈ミナ ペルホネン〉のデザイナー・皆川明さんをはじめ、たくさんの方々に「使い続けたくなる、愛しいもの」にまつわるエピソードについて聞いてみました。
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