肌寒い日にもほっとする、 暖かさを届ける。

秋晴れという言葉がぴったりくる晴天に恵まれるとき。暑さから解放されて、スポーツをしたり、キャンプに出かけたりなど体を動かしたくなってくる。山間部では紅葉も始まるので、ハイキングするにもうってつけだ。涼しい風が吹くこの時季は、温かみのある花を選びたくなる。


アンスリウム
Anthurium andreanum

熱帯の花は、生きているオブジェの感覚で。
科名/サトイモ 原産地/熱帯アメリカ。葉脈も美しいアンスリウムは、白い苞葉が清楚なイメージのルミナ、鮮やかな赤色をしたダコタなど、豊富な品種がある。「本来は真夏の花ですが、一年中、市場にはあるので、暖かさを感じてもらいたいときに。また、オブジェ的でもあるので、ちょっと変わったものを贈りたい際に愛用しています。とても長持ちしますが、原産が熱帯地域なので、冬の寒い窓辺に置いているとあっという間に枯れてしまいます。私が実際に経験したことですので、注意してください」


ダリア
Dahlia variabilis

斜めに差し込む光に似合う、ニュアンスカラー。
科名/キク 原産地/メキシコ、グアテマラ。「夏の終わりから秋の終わりまでと、花の期間が長い大人気の切り花です。夏だとピンクや黄色、赤など元気な色を選びたくなりますが、秋なら、落ち着きのあるサックル ローズピンクなどアンニュイな色を差し上げるといいのでは。ポンポン咲きで花弁が筒状になっています」。球根植物なので扱いやすく、花びらが放射状に広がる様はゴージャスでもある。品種によってさまざまな形状があり、花の大きさは3㎝以下の極小輪から、30㎝以上の超巨大輪まである。


ケイトウ
Celosia argentea

ベルベットのような優しいぬくもりある質感。
科名/ヒユ 原産地/熱帯アジア、インド。花の先端が平たく、帯状や扇状に広がる。ニワトリのトサカに似ていることから、漢字では鶏頭と書く。「個性的な形状で、なかでもボンベイは花房が横に広がるので、花と花の間に入れても場所を取らず、ブーケに差し込みやすいんです。よく公園などに咲いているので、子どもの頃から親しんでいる花でもあります。質感はベルベットのようで触ると気持ちいい。もこもこっとしているので温かみがあって、秋が深まってきた季節の贈り花にちょうどいい」


秋色アジサイ
Hydrangea macrophylla

初夏から変化してきた、尊い存在。
科名/アジサイ(ユキノシタ) 原産地/日本、東アジア。秋色アジサイとは品種ではなく、咲き終わっても剪定せずにいることで色が褪せて、アンティークカラーになったアジサイの呼称。「秋まで変化して、この色になるなんてすごい。尊いなあ、と感心します。現在は、この色を作るため狙って仕立てていると思うのですが、時間の経過をプレゼントする感じ。シックな色合いでインテリアグリーンの代わりにもなります。少量の水で生けていると自然にドライになるので、長く楽しんでもらえます」


アマランサス
Amaranthus

古くから栽培されてきた、雑穀の花。
科名/ヒユ 原産地/熱帯アメリカ、熱帯アフリカ。古代インカ帝国時代から栽培。日本には江戸時代に観賞用として伝来してきた。栄養豊富なスーパーフードとしても注目されているが、花屋にあるのは食用には適さない。花茎に丸く小さな花が集まり、花房を形成。花が長い間、咲き続けることからギリシャ語の“しおれない”という意味が名前の由来になっているとのこと。「シュッとしたブーケにしたいときによく使います。元気のいい花なので、相手を力づけたいときに贈るといいかもしれません」

平井かずみ Kazumi Hiraiフラワースタイリスト

草花が身近に感じられる、暮らしに根付いた日常花を提案。東京・恵比寿のアトリエ「皓SIROI」を拠点に、日本全国で花の教室をはじめとしたワークショップや展示を開催。著書に『あなたの暮らしに似合う花』『花のしつらい、暮らしの景色』(ともに扶桑社)など。

illustration : Shinji Abe (karera) edit & text : Wakako Miyake
参考文献:『花屋さんで人気の469種 決定版 花図鑑』(西東社)、『花の名前、品種、花色でみつける 切り花図鑑』(山と溪谷社)

&Premium No. 126 Life with Flowers & Greens / 窓辺に、花と緑を。

人はなぜ、こんなにも花や草木を愛するのでしょうか。植物と触れ合うことは、その美しさを愛でるということにとどまらない大きな喜びを、私たちに与えてくれます。植物とともにある生活は、毎日が発見の連続。 季節の移ろいに敏感になるだけでなく、住まいや暮らしそのものを、心地よく、健やかにしたいと願う気持ちまでもが、ふつふつと湧いてくるように思います。さらに、私たちの中に潜む原初的な感覚の扉をそっと開き、心にやすらぎをもたらしてくれるのです。今号は、花を飾ること、植物を育てることを楽しみながら、心地よく暮らす人たちを訪ねました。

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