ソアヴェの第一人者として世界に名を馳せる「イナマ」。第一線で活躍する3世代目のアレッシオ・イナマ氏が来日し、ワイン造りの哲学や味わいの魅力を紹介した。

左から『カルボナーレ ソアヴェ・クラシコ 2021年』(5280円)、『フォスカリーノ ソアヴェ・クラシコ 2021年』(5280円)、『イ・パルキ フォスカリーノ・グランキュヴェ 2021年』(1万4300円)、『オラトリオ・ディ・サンロレンツォ 2018年』(1万7600円)
※価格は税込小売価格

「私たちのワインを知るにはまず飲んでください」とアレッシオ氏。ワイナリーが最初に造ったソアヴェ・クラッシコ『カルボナーレ』の2021年はフレッシュだが重心がしっかりと備わった味わいで、飲んだ後に旨味のある塩味が表れるのが特徴だ。
「カルボナーレは東向きで、早朝だけ日が当たる畑。収穫時のブドウはマンダリンオレンジのような味で、酸味と塩味が備わります」。白身魚のカルパッチョやバッカラ(干し鱈)料理と相性がいい。

[ 関連記事を読む – ソアヴェ・クラッシコ ]

「イナマ」のワインと合わせたのは「アンティカ オステリア デル ポンテ」(丸の内)の料理。『カルボナーレ ソアヴェ・クラシコ 2021年』には「バッカラのブランダード、EVOとプルーンのソース」。バッカラの塩辛さや旨味と、プルーンの甘酸っぱい果実感がワインのミネラル感や酸味とマッチする

同じくソアヴェ・クラッシコエリアの『フォスカリーノ』は、南向きの畑「フォスカリーノ」で造られる、力強くふくよかさのあるワインだ。
「この畑のブドウはヘーゼルナッツの香りがするのが個性です」とアレッシオ氏。カルボナーレに比べるとより味わいの要素が強く、苦味や酸味がしっかりとしている。現在エミレーツ航空のビジネスクラスで採用されているという。

『フォスカリーノ ソアヴェ・クラシコ 2021年』に合わせたのはヘーゼルナッツを使った前菜。ヘーゼルナッツのねっとりとしたムースと、香ばしいクランブルがワインの深い味わいに寄り添う

フォスカリーノ畑の上級キュヴェ『イ・パルキ フォスカリーノ・グランキュヴェ 2021年』はより良い房を選んで収穫し、その後粒単位で選果し、醸造する。年間1万2000本の少量生産だ。繊細な酸味が印象的なエレガントな味わいで、微かながらよく溶け込んだ果実感、火打ち石のようなニュアンスが表れる、複雑なワイン。

イナマの「ソアヴェ・クラッシコ」は畑や醸造の違いはあっても、いずれも繊細さと力強さ、フレッシュさ、そして落ち着いたまとまりが感じられる。「ほかの造り手にはないワインを追求してきた」というイナマの個性だ。

ほかにないワイン造りを追求

イナマは、アレッシオ氏の祖父ジュゼッペ・イナマ氏が創設したワイナリーだ。ジュゼッペ氏は「アンセルミ」のディレクターとして35年あまり活躍し、苦労の末念願の畑を手に入れた。
ソアヴェの需要が増えた1960年代、産地では平地まで畑を広げていたが、ジュゼッペ氏は高品質なワインを目指し、丘陵地帯の「クラッシコ」エリアの畑にこだわった。特に注目していたのが「フォスカリーノ」だった。

ジュゼッペ氏の息子ステファノ氏は「他社とは違う、力強くリッチな味わいのソアヴェ」を目指し、世界に認められるソアヴェを成功させた。

そしてステファノ氏の息子たちが受け継いだ今、目指すのは「エレガントなワイン」だと言う。次男のアレッシオ氏は世界を飛び回る輸出ディレクター、長男のマッテオ氏はジェネラルマネジャー、三男のルカ氏は醸造家として活躍している。

輸出ディレクターのアレッシオ・イナマ氏

(広告の後にも続きます)

赤ワインもエレガント

赤ワインも白ワインと同じく、エレガントで個性のある味わいが広がる。『オラトリオ・ディ・サンロレンツォ 2018年』はストラクチャーがあり、深みを感じるが、繊細で美しいバランスを持つ。04年から醸造しているワインで、栽培が難しいカルメネーレ100パーセント。
「17年からボルドーのステファン・ドゥルノンクール氏をコンサルタントに迎え、よりテロワールの表現を強化しています」

『オラトリオ・ディ・サンロレンツォ 2018年』には「仔羊ランプのグリル、季節のお野菜とともに」を。黒ニンニクとスパイスでマリネした仔羊は野性味があるが肉質が繊細で、ワインの質感と相乗。香ばしく焼いたグリル野菜とも相性がいい

3世代目のアレッシオ氏兄弟はこの10年間で、さまざまな取り組みや改良を行ってきた。
「父から受け継いだ畑は、私たちが次世代につなぐ」と2009年から農薬を使わず、オーガニック栽培や(*)バイオダイナミックを取り入れている。またマイクロパーセル(小型区画)での管理を行い、単一畑、単一区画のワインにも挑戦している。
「これで完成、ということはないのです。ずっと改革を続けて進化するのがイナマなのです」とアレッシオ氏は自信に満ちた表情で語った。

*オーストリアの人智学者、ルドルフ・シュタイナー(1861~1925年)が提唱した有機栽培農法。太陰暦に従い、宇宙のリズム、天体の運行に合わせて農作業を行う

問い合わせ先:パシフィック洋行㈱ TEL.03-5542-8034