ハロウィーンの「路上飲酒」対策に向け渋谷区長と新宿区長が合同会見  “飲酒禁止の法制化”を国に要求

10月7日、渋谷区の長谷部健・渋谷区長と吉住健一・新宿区長が合同で記者会見を行い、ハロウィーン期間(10月31日〜11月1日)における路上飲酒対策について発表した。

渋谷区では通年、新宿区でもハロウィーン期間は路上飲酒を禁止

2018年のハロウィーンで軽トラックが集団に取り囲まれ横転させられる事件が起きたことなどをきっかけに、2019年6月、渋谷区は「渋谷駅周辺地域の安全で安心な環境の確保に関する条例」を可決。ハロウィーン当日・翌日や前後の週末、また年末年始(12月31日と1月1日)に渋谷駅周辺の一部区域での道路や公園・広場などにおける飲酒を禁止した。

今年6月に渋谷区は条例を改正し、飲酒禁止期間を通年に拡大。また、従来は渋谷センター街や道玄坂・文化村通りなどがある渋谷駅北側・西側が規制対象の区域となっていたところ、改正後には駅東側の宮下公園周辺、区役所周辺やナイトクラブやホテルが立ち並ぶ円山町などの地域も追加された。改正条例は10月1日から施行されている。

昨年のハロウィーンでは飲酒規制や「ハロウィーンは渋谷に来ないでほしい」の呼びかけなどが功を奏し、当初はピーク時の来街者は6万人と予想されていたところ、実際には1.5万人にとどまった。

しかし、渋谷区が規制されたことにより、新宿区の歌舞伎町周辺に人が流れ込む。混雑が起こり、夜が明けると至る所にごみが散乱していた。

今年6月21日、新宿区は「新宿駅周辺地域の安全で秩序ある環境の確保に関する条例」を施行。10月31日午後5時から11月1日午前5時までの期間、東京都新宿区新宿三丁目及び歌舞伎町一丁目の一部で路上飲酒が規制される。

新宿でハロウィーン問題が起こったのは昨年が初

昨年のハロウィーンの翌日、長谷部区長は吉住区長に謝罪の電話をかけたという。「まさか、渋谷で規制することで他の区に問題が広がるとは思わなかった」(長谷部区長)

吉住区長も「ハロウィーンで歌舞伎町に人が大勢集まり、騒ぎを起こしたのは昨年が初めてだ」と語る。

「新宿、とくに歌舞伎町は決して広い場所ではない。路上に集まって飲酒することで、混雑やケンカなどが発生する。

買った酒を路上で飲み、ごみを残していく行為は、教養と理性のある人がやることではない。お酒を飲むならお店のなかで、ルールを守って飲んでほしい」(吉住区長)

今年のハロウィーンでは、新宿区の職員・警備員合わせて約100名が街に出て、路上飲酒禁止を呼びかける予定だ。

渋谷区は中長期的なオーバーツーリズム対策も実施

10月30日と31日には、雑踏事故を防止するため渋谷駅周辺に一方通行の柵が設置される。「ハチ公像が見られなくなるので、観光を予定されている方は注意してほしい」(長谷部区長)

渋谷区で条例が施行されてからすでに数年が経っている。「コンビニや酒屋など酒を販売する商店は飲酒規制を歓迎しないのではないか」との質問に対し、長谷部区長は「条例に対して店舗からのクレームは出ていない」と回答した。

「『なんとかハロウィーンを公式のイベントにできないか』とビジネス面での提案をされることはあるが、原則的に断っている」(長谷部区長)

また、渋谷区では観光客に飲食店やライブハウス・クラブなどを紹介する、スクランブル交差点を目当てに来た観光客を周辺地域に誘導して分散化するなど、中長期的なオーバーツーリズム対策も実施している。

路上飲酒を控えるよう呼びかける、渋谷区の広告(10月7日都内/弁護士JP編集部)

一方、吉住区長はハロウィーン明けに路上に散乱するごみの大半がコンビニで購入されたものであると指摘し、ごみ箱の設置を店舗に義務付けることも検討していると語った。

自治体での対策には限界、国による法制化を要求

路上飲酒は2020年に新型コロナウイルスの流行で一時的に減少したが、2023年5月の「5類」移行と入国規制の緩和で外国人観光客が増え、オーバーツーリズムとともに再び問題視されるようになった。長谷部区長によると、週末にセンター街付近で路上飲酒を行う人の約3分の2が外国人であるという。

1日から改正条例が施行されたことにより、昨週末は渋谷で路上飲酒を行った人の数は大幅に減少した。しかし、渋谷区・新宿区の条例はともに罰則がなく、規制には限界がある。

「オーバーツーリズムの問題を解決するためには、強力な対策が必要。区のような基礎自治体だけでは、体制作りは難しい。

今後は、路上飲酒禁止の法制化などを国に要求していく」(長谷部区長)