3. 保育所等訪問支援の対象者と利用の流れ

対象者

保育所等訪問支援は、保育所や幼稚園、小学校などに通うすべての子どもを対象としています。そのため、集団生活への適応に支援が必要であれば、医学的診断や障害者手帳の有無は問われません。さらに、児童発達支援や放課後等デイサービスの障害児通所支援を利用している子どもだけでなく、利用したことのない子どもも対象です。集団生活の過程で、うまく適応できないことが明らかになり、障がいの可能性を考慮して、申請につながる場合もあります。

近年では、制度の認知が高まってきたことなどから、利用者数が大きく伸びており、毎年9月の利用者数は2021年の8,876人から、2022年には1万4,643人へと増加しています。なお、費用の利用者負担は1割で、世帯年収約920万円以下の場合、月の負担上限額は4,600円です。


厚生労働省|社会福祉施設等調査より作成

利用の流れ

保育所等訪問支援を利用するには、対象となる子どもの保護者からの申請が必要です。一般的には、障害児相談支援事業所が障害児支援利用計画を作成したあとに、児童発達支援管理責任者が保育所等訪問支援計画を作成し、サービスを提供します。

訪問支援員は一定期間ごとに子ども本人や家族などに対する面談で、効果やニーズの変化をモニタリングします。また、ニーズの変化に応じて、障害児支援利用計画の内容を見直した場合には、保育所等訪問支援計画も変更され、支援の内容に反映されます。

(広告の後にも続きます)

4. 保育所等訪問支援の支援内容

保育所等訪問支援では、子ども本人を対象とした「直接支援」と、保育士や幼稚園教諭など施設で勤務する職員への「間接支援」が実施されます。ここでは、それぞれの支援の内容について、実際の事例を交えて解説します。

直接支援

直接支援は子ども本人への支援です。訪問支援員は訪問先での様子を観察しながら、子どもの困っていることや課題を把握し、支援内容を検討します。そのうえで、生活の流れや保育・教育活動の妨げにならないよう、十分に配慮しながら集団活動に加わって支援します。

厚生労働省の「保育所等訪問支援の効果的な実施を図るための手引書」には、保育所での食事に課題のある、知的障害を伴う自閉症スペクトラムの子どもへの支援事例が記載されています。訪問支援を受けるまでは一口大に切ってもらった給食をフォークで食べていましたが、訪問支援員が直接支援を繰り返すことで、数ヶ月後には子ども用の箸を使い、自分でかみ切って食べられるようになりました。

間接支援

間接支援は子どもが通う、保育所や幼稚園、小学校などの職員への支援です。訪問支援員の訪問は2週間に1回程度を想定しており、子どもの集団生活をより良くするためには、周囲の職員の理解・協力が欠かせません。そのため、保育所等訪問支援では、実際に長時間子どもと接する職員への支援を通じて、子どもの生活改善につなげる間接支援も重視しているのです。

「保育所等訪問支援の効果的な実施を図るための手引書」には、小学校での生活に問題のある1年生の児童と、教員への支援事例が掲載されています。反抗的な態度で係や当番の活動ができない状態でしたが、訪問支援員は観察するなかで「やりたくないから、やりたがらない」のではなく、「難しそうで失敗したくないから、やりたがらない」のではないかと分析。教員に二人羽織のように後ろから、一緒に取り組んでもらうようアドバイスし、実践してもらうことで、次第に児童の行動は改善されていきました。