国土交通省が9月18日に発表した「令和6年都道府県地価調査」によると、今年7月1日時点の都道府県地価(基準地価)は、住宅地、商業地、全用途ともに全国平均が3年連続で上昇したことが分かりました。上昇率はバブル経済が崩壊したことによる土地価格の大幅な下落を記録した1992年以降で最大です。なぜ、土地価格は上昇を続けるのでしょうか。また、このデータからは何が見えてくるのでしょうか。
都道府県地価調査とは
国土交通省は9月18日、「令和6年都道府県地価調査」を発表しました。それによると、昨年7月からの1年間の土地の価格は、全国平均で全用途平均・住宅地・商業地のいずれも上昇。地価が上昇するのは3年連続で、上昇幅は昨年よりさらに拡大しました。
「都道府県地価調査」とは、毎年7月1日時点の各地の価格が9月に公表されるもので、調査は各都道府県が行います。土地の価格と聞くと、「地価公示」という言葉を思い浮かべる方が多いと思いますが、こちらは毎年1月1日時点の土地の価格で調査の主体は国です。調査の主体や基準となる月は両者で異なりますが、いずれも土地の取引の際の目安とされたり、地域の景気の動向を表したりするものです。
それでは、今年の「都道府県地価調査」の特徴はどのようなものなのでしょうか。この調査からどういうことが読み取れるのでしょうか。一緒に見ていきましょう。
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土地価格上昇から見えること
土地価格の上昇
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全用途の全国平均は、昨年に比べてプラス1.4%。ここ数年、土地価格の上昇は続いていましたが、2022年は前年に比べてプラス0.3%、2023年はプラス1.0%だったため、上昇幅は今年大きく拡大したことになります。
やはり、都市部の上昇幅が全国平均を引き上げており、住宅地については東京圏が前年比プラス3.6%、大阪圏がプラス1.7%、名古屋圏がプラス2.5%でした。また、商業地は東京圏が前年比プラス7.0%、大阪圏がプラス6.0%、名古屋圏がプラス3.8%。工業地については、東京圏が前年比プラス6.6%、大阪圏がプラス6.3%、名古屋圏がプラス3.5%でした。
一方、地方圏に目を移してみると少し様相は異なります。地方四都市(札幌市・仙台市・広島市・福岡市)の全用途での上昇幅は前年比プラス6.8%を記録しましたが、2023年の上昇幅が前年比プラス8.1%だったため、前年よりも上昇幅は縮小しています。その他の都市については、2023年が前年比プラス0.0%、2024年が前年比プラス0.2%と小幅な動きに留まっています。地価の上昇は都市部だけではなく地方にも波及していると見えなくもありませんが、三大都市圏と比べるとその上昇率は小幅です。
このことから見えてくるのは、新型コロナウイルスの影響からの回復です。新型コロナウイルスが爆発的に流行し、行動規制がかけられていた2020年から2021年に急速に普及したのがリモートワークです。出社をしない働き方が認められるようになり、東京などの大都市から郊外に移住する人が増加しました。「国土交通白書2021」によると、全国の就業者のうち、2020年4~5月のリモートワークの利用率は全国平均で25%、東京圏では38%に上りました。
同時期に筆者は都内でオフィス物件を中心に不動産の仲介業を営む経営者に取材していますが、オフィス物件需要の低下を嘆いていました。確かにこの時期、オフィスを郊外に移転したり、縮小したりした企業は少なくありませんでした。東京商工リサーチが2020~2023年に大都市の「本社機能移転状況」を調べたところ、大都市の転入出はすべての産業で転出超過だったのです。
三大都市圏での大幅な地価上昇は、新型コロナウイルスの影響もなくなったため、オフィスの都心回帰をする企業が増えていることも影響しているのではないでしょうか。不動産仲介大手の三鬼商事の調べによると、東京都心5区のオフィス空室率は、2021年9月は6.43%を記録しましたが、2024年8月は4.76%に下落。空室率の下落傾向は、ここ1年で特に顕著になっています。