いくつも集めたくなる、最高のスタンダード。

空間に色が混在していると視覚的に落ち着かないので、食器は白しか買いません。なるべくシンプルでニュートラルな形状のものがよく、ただ無機質でツルッとした量産品は味気ないと思っていたところ、10年ほど前に雑貨店でこのマグに出合いました。スウェーデンの作家、ヨナス・リンドホルムのもので、繊細だけれど食洗機にも対応できるタフさがあり、底に書かれた手書きのサインも愛らしい。同じサイズ、同じ色だけれど、取っ手の付き方、釉薬のかかり方など、ひとつずつに個性があります。無意識に手に取る回数が多く、ほぼ毎日使っているため、欠けたり割れたり貫入に染みができたり。そのたびに買い足して、今では6つにまで増えました。きちんとクラフト感を伴った日用品で、コーヒーを飲むたびにしみじみ好きだな、と感じます。

竹田美織 Miori Takedaグラフィックデザイナー

Miori Takeda 〈バウム〉などのビューティ、ファッション、エンタメなど、様々な分野でグラフィックデザイン、アートディレクションを手がける。

illustration : Megumi Sasaki text : Shoko Matsumoto

&Premium No. 131 LONG-TIME STAPLES / 使い続けたくなる、愛しいもの。

ファッションやライフスタイルにまつわるもの選びにおいて、時間をかけて長く付き合っていく姿勢が、これまで以上に必要とされているように思います。でも、ただ漫然と「長く使い続ける」ことだけが重要ではなく、それを使ったり、身に着けたときに、出合った頃と変わらぬ「愛おしさが続いている」ことも、忘れてはならない大切な要素なのではと考えます。初めて手にしたときの高揚感、作り手のこだわりに惚れ惚れとしたこと、使い続ける日々の中で紡がれた大切な思い出……。そういったさまざまな「記憶」が、人とものを、長きにわたって、幸せなかたちで繫ぎ合わせていくのです。〈ミナ ペルホネン〉のデザイナー・皆川明さんをはじめ、たくさんの方々に「使い続けたくなる、愛しいもの」にまつわるエピソードについて聞いてみました。

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