さまざまな事情を抱えた人たちが利用するラブホテル。一般的には、ドキドキ、ワクワクしながら、ときにはソワソワと向かう場所だ。
しかし、ラブホ街やその周辺には当然、“住んでいる人たち”がいる。今回は、そんな住人にまつわるエピソードを中心に紹介する。
◆高齢の利用客が意外と多い
地方のラブホの現役清掃スタッフである鈴木ミズホさん(仮名・30代)が、利用客について驚いたことがあるという。
「ラブホの利用客には、どの世代の人たちが多いと思いますか? 活力も精力もある20代、お金に余裕が出てきた30代、子育てに励んでいる40代……。
さまざまな意見があると思いますが、私が働いているラブホでは、50代や60代の高齢のお客様が意外と多いんです。元気なおじいちゃんやおばあちゃんが、利用しているんですよ」
スタッフたちも「まだまだ元気なの?」「まだできるの?」と、興味しんしんなのだそうだ。
◆軽トラックで現れる60代の不倫カップル
また、ラブホは格好の不倫スポットだという。
「ちなみにラブホスタッフは、『あ、これ不倫カップルだな』って結構な確率で見破れます。絶対的な確信があるわけではないですが、全体的な雰囲気やしぐさが違うんですよね。これは、ラブホスタッフが口をそろえて言っています」
具体的には、正規カップルは、とにかくイチャイチャしていて明るくニコニコしているという。一方、不倫カップルは、男性側は事後が素っ気なく、早く帰りたそうにしているそうだ。
「不倫カップルは暗くて、ちょっと重めの雰囲気になっていることが多いですね」
最近印象的だった不倫カップルはというと……。
「“農道のポルシェ”と言われる真っ白い軽トラで颯爽と現れた60代のカップルです。軽トラで不倫って『すごい』の一言しか出ませんでした。農作業に出ていくと見せかけて、不倫相手の元に向かうんでしょうね。アリバイ工作にはもってこいなのかもしれません」
ほかにもママチャリでラブホに来るおじいちゃんもいるのだとか。
「お姉さんを派遣してもらうために利用しているのですが、愛車はママチャリ。堂々と駐車場に現れ、数時間後にはルンルンと立ちこぎで帰っていきます」
鈴木さんは「エネルギーがみなぎっている」と感心する。
「日本は少子高齢化で元気がないなんてニュースで見ますが、私には元気すぎるおじいちゃんの存在が頭をちらつき、その度にまだまだ日本はがんばれる!」と思うそうだ。
◆小学生のころの通学路はラブホだらけ
墨田健さん(仮名・30代)は、ラブホ街で生まれ育った。大人になってから、ようやく「これまでの環境って変だった」と気づいたという。
「とあるターミナル駅が私の故郷なのですが、ラブホが何件もありました。小学生から通学路にはラブホが並んでいたんです。平日の昼間にもかかわらず、ラブホやコンビニの前には、幅広い年齢層の人たちが待ち合わせをする光景を日々見ていました」
年齢差がある男女がホテルの前で出会い、会釈し、よそよそしい雰囲気でラブホの扉をくぐる……。
「子どものころは何とも思わない日常でしたが、大人になるにつれて“当時見ていたものは特殊だったんだ”って」
◆「ラブホ街は子育てにはおすすめできない」
墨田さんは結婚し、現在は閑静な住宅街に引っ越したそうだ。ラブホ街に住んでいると、平日や休日を問わず、街全体が静かになることがなかったと話す。
「毎日がお祭り騒ぎの街を日常に感じていましたが、いまは田舎で暮らしている私からすると、異常だったのかなと強く感じています」
また、ラブホ街が寝静まる時間は、午前3時から5時くらいの間だけ。そのほかの時間帯は常に活気づいているそうだ。
「確かに、繁華街は便利ですし、生活をするうえでは困ることはありません。しかし、子どもを育てる立場として、特別な事情がない限りラブホ街はおすすめできませんね。大人は楽しいのかもしれないですが、子どもは自然の中で活動することが、教育上でもよいことかなと私は思っています」
そう言いつつも、墨田さんは「独身に戻れるなら、また繁華街に住んでみたいものです」と、正直な気持ちを吐露した。
<取材・文/資産もとお>
―[ラブホの珍エピソード]―