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韓国では日本と同様、深刻な少子高齢化が進んでいるが、韓国第2の都市である釜山市が、消滅の局面に入ったようだと報じられている。市外への人口流出が止まらず、総人口に占める高齢者の割合は高まっており、市民団体や専門家は適切な対策が取られていないと批判している。
◆人口は減るばかり… 超高齢化社会へ
韓国の毎日経済新聞(英語版、MK)によれば、釜山市の人口は1995年に388万人だったが、2023年には329万人となり、18年間で約60万人近く減少した。
大きな原因は少子高齢化だ。釜山広域市が発表した報告書によれば、釜山市の人口の46.5%にあたる153万人が50歳以上。細かく見ると、50歳から64歳が約83万人、65歳以上が70万2000人となっている。(コリア・ヘラルド)
韓国統計庁のデータによれば、釜山市の総人口は減っているなか、65歳以上の人口は増加しており、2050年までに人口の53.3%を占めるようになると予想されている(同)。
韓国雇用情報院が発表した論文によれば、釜山市の今年3月時点での65歳以上の人口比率は23%で、超高齢化社会に突入した唯一の大都市になった(聯合ニュース)。
◆若者が流出 消滅待ったなし
MKによれば、人口流出も深刻で、毎年10万人以上が仕事や教育のために釜山市を離れて行くという。市は過去6年間に、人口政策だけで4兆5000億ウォン(約5000億円)、青少年対策だけで5000億ウォン(約550億円)を費やした。しかし、若者の流出は止まらず、純流入効果はほとんどなかったという。
聯合ニュースによれば、20歳から39歳の女性人口を65歳以上人口で割って算出した釜山市の消滅危険指数は0.490だったという。この指数が1.0~1.5であれば正常とされるが、0.2~0.5を記録した地域は消滅の危険があるとされる。
ほかの地域でも人口減は進んでおり、全国288の市、郡、区のうち、昨年3月以降新たに過疎地域となったのは11で、そのうち8つは大都市にあるという。釜山の4つの区が、そこに含まれている。(同)
◆市の対策は的外れ 市民や専門家から苦言
人口減に対応するため、釜山市も対策を打ち出しているが、対策が不十分だという声も聞かれる。市民団体は、市は状況を正しく認識しておらず、人口流出を減らすための対策を打ち出す能力がないと指摘。人口減少に関する統計データを否定するのではなく、市民とともに知恵を絞るべきだとしている。(MK)
釜山研究院と韓国雇用情報院は、既存の対策だけで流れを変えるのは難しく、交通網整備でマンション建設を促すようなインフラ中心の政策では、地域を救うことも活性化することもできないと苦言を呈している。必要なのは、市長のイメージアップのための政策や、地元の建設業者だらけの無謀な開発ではなく、安全で良い仕事を作り、釜山で子供を産み暮らせるように尽力することだとしている。(同)