職人技ならではの如才ない使い心地。

アトリエで作陶を始めた4年前、ろくろの下に溜まる土埃を掃けるものを探していたところ、街中で気になる箒の店を発見。職人による手作りで個体差があるので、実際にいくつか手に取り、しっくりくるものを購入しました。使用してみると、よくしなり、コシがあるので、細かな砂を気持ちよく掃き出せたんです。あまりに使い勝手がいいので、ひと回り小さいサイズをキッチン用に買い足し、テーブルの上に落ちた粉などの掃除に使っています。使わないときは壁に掛けていますが、温かみのある天然素材なので自宅の古い家具とも調和。一緒に使っている柿渋が塗られた紙製のちりとり「はりみ」は静電気が起きにくく、箒で掃いたゴミをさっと落とせるところがお気に入り。手で作られているものには愛着が湧くし、使い続け育てる楽しみもあるんです。

鈴木 茜 Akane Suzuki陶芸家

陶芸家・野口寛斉に師事後、2024年に独立。なめらかなフォルムと深い瑠璃色のコントラストが目を引く器を制作している。

illustration : Megumi Sasaki text : Shoko Matsumoto

&Premium No. 131 LONG-TIME STAPLES / 使い続けたくなる、愛しいもの。

ファッションやライフスタイルにまつわるもの選びにおいて、時間をかけて長く付き合っていく姿勢が、これまで以上に必要とされているように思います。でも、ただ漫然と「長く使い続ける」ことだけが重要ではなく、それを使ったり、身に着けたときに、出合った頃と変わらぬ「愛おしさが続いている」ことも、忘れてはならない大切な要素なのではと考えます。初めて手にしたときの高揚感、作り手のこだわりに惚れ惚れとしたこと、使い続ける日々の中で紡がれた大切な思い出……。そういったさまざまな「記憶」が、人とものを、長きにわたって、幸せなかたちで繫ぎ合わせていくのです。〈ミナ ペルホネン〉のデザイナー・皆川明さんをはじめ、たくさんの方々に「使い続けたくなる、愛しいもの」にまつわるエピソードについて聞いてみました。

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