This Month Theme”愛しいもの”について、考えたくなる本。
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Book of the Week『美味礼讃』海老沢泰久 著(文春文庫)
それまで「西洋料理」しかなかった日本に、初めて本物の「フランス料理」をもたらした辻静雄。その半生を描くこの小説は、内容も波乱万丈で面白いのですが、まずはその端正な文章に注目です。料理の本は味覚について多くを語りがちですが、彼の文は必要不可欠な事実を淡々と記していくスタイル。むしろ作り方を正確に立体的に描き、味については読者の想像にゆだねるという趣です。後年、辻静雄は、日本料理からも学ぼうと名店「吉兆」に通うのですが、その中の、ダシがよく出たハマグリの吸物を食べる場面で、煮てダシを出すとハマグリは身が固くなるはずなのに、この店のがやわらかいのはなぜかと疑問を持ったりする、そんな細部もくっきりと描く所など、とにかくアルチザンを感じさせる文章です。
BOOKSHOP 本屋UNLEARN
広島県福山市街地を臨むロケーションにある、カフェ・シェアルームスペース『風の丘』の一角を間借りして、新刊本屋をオープン。屋号の「UNLEARN(アンラーン)」という言葉には「一度学んだことを、自分の尺度で再び学びほぐすこと」の大切さを表している。隣にはカフェコーナーがあり、リラックスして「本との語らい」ができる空間になっている。 住所:広島県福山市東深津町6-3-58 営業時間:月曜~土曜・祝日 11:00~19:00 日曜 11:00~18:00 定休日:火・水曜