1.内定承諾書(入社承諾書)とは

内定を承諾し入社を誓約する書類

内定承諾書(入社承諾書)とは、就職・転職活動で内定を得た人が、企業に対して内定を承諾し、入社を誓約するための書類です。

一般的に、内定承諾書は採用通知書や労働条件通知書とともに企業から内定者に対して発行されます。内定者が労働条件などを確認し入社を承諾する場合は、内定承諾書に署名や捺印などをしたうえで企業に返送します。

提出後の辞退は可能?

内定承諾書を提出したあとでも内定辞退は可能ですが、注意が必要です。

まず、内定承諾書は労働基準法などにより法的に定められたものではなく、企業が独自に発行する書類で法的効力はありません。しかし、労働契約は使用者(雇用主)と労働者双方の合意をもって成立するため、内定承諾書を介した労働契約自体は成立します(労働契約法第6条)。

一方、労働者には「退職の自由」の権利もあるため、雇用期間に定めがないときは、退職の申し入れから2週間経過すれば労働契約が終了します(民法第627条)。

以上の理由から、内定承諾書を提出したあとでも内定辞退(退職)は可能となります。ただし、内定承諾後の辞退は企業に迷惑をかけるだけでなく、トラブルにもつながりかねないため、安易におこなうべきではありません。内定承諾書は、必ず入社する意思を持って提出するようにしましょう。

tips|契約期間に定めがある場合でも内定辞退できる?

契約社員などの契約期間が決まっている雇用(有期雇用)の場合は、労働者からの退職の申し入れは「やむを得ない事由があるとき」と制限されています(民法第628条)。この「やむを得ない事由」が妥当かどうかは個別に判断されるため注意が必要です。
ただし、1年を超える有期雇用契約の場合で、契約の初日から1年を経過した日以降はいつでも退職が可能です(労働基準法第137条)。

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2.内定承諾書とほかの書類の違い

主な目的 対象 交付義務
内定承諾書
入社承諾書
内定(入社)を承諾し誓約する 求職者→企業 なし
内定誓約書
入社誓約書
内定(入社)を承諾し誓約する 求職者→企業 なし
内定通知書
採用通知書
内定(採用)したことを通知する 企業→求職者 なし
労働条件通知書 労働条件を明示する 企業→求職者 あり
雇用契約書 労働契約を締結する 企業↔求職者
(双方合意)
なし

内定誓約書・入社誓約書との違い

内定誓約書・入社誓約書は、その名のとおり内定または入社を誓約する書類です。内定承諾書(入社承諾書)とは名称が違うのみで、基本的には同じ目的・役割で使用されます。

内定通知書・採用通知書との違い

内定通知書・採用通知書は、企業から求職者へ内定(採用)を知らせるための書類です。内定承諾書は求職者が内定を承諾し入社を約束するものですが、内定通知書・採用通知書はあくまで“通知”のみを目的としています。

内定通知書には、内定が決定した主旨のほかに、応募に対するお礼や入社までの流れなどについて記載されていることもあります。

労働条件通知書との違い

労働条件通知書は、契約期間や就業場所、賃金や休日などの労働条件を企業から内定者へ通知するための書類です。労働基準法第15条により、人を雇う際には労働条件の明示が義務付けられているため、内定とともに通知されることが一般的です。なお、書類の名称には決まりがないため「雇用条件通知書」「就労条件通知書」などと呼ばれることもあります。

雇用契約書との違い

雇用契約書は、企業と労働者が双方に契約内容に合意し、労働契約を結んだことを証明する書類です。2部発行し、企業と労働者それぞれが署名や捺印をしたうえで両者が保有することが一般的です。法律上の作成義務はありませんが、口頭契約などによる「言った・言わない」トラブルを避けるためにも、書面として作成しておくことが推奨されています。また、労働条件を記載することで労働条件通知書と雇用契約書を兼ねることもできます。