男と女は全く別の生き物だ。それゆえに、スレ違いは生まれるもの。
出会い、デート、交際、そして夫婦に至るまで…この世に男と女がいる限り、スレ違いはいつだって起こりうるのだ。
—あの時、彼(彼女)は何を思っていたの…?
誰にも聞けなかった謎を、紐解いていこう。
さて、今週の質問【Q】は?
▶前回:4回目のデートで家に誘ったらOKしてくれたのに…。1ヶ月後、急に年上彼女が冷たくなったワケ
遥と交際して半年。「結婚を視野に入れて」と最初から言っていた僕たちの関係は、極めて良好なはずだった。
しかし先週、温泉へ一緒に行って以降何かがおかしい。
旅行中、遥は嬉しそうにしていた。奮発して予約をした宿はかなり良かったし、サービスも文句はなかったはず。
それなのに、明らかに遥の様子が変だ。
「遥、次の週末だけど…」
「あ〜ごめん、予定入っちゃった」
完全に、よそよそしい。
1泊10万もする、個室内に露天風呂付きの良い場所へ泊まり、すべてが順調だったはず。
僕は旅行中に、何かしでかしてしまったのだろうか…?
Q1:番町出身のお嬢様が交際をOKした理由は?
遥と出会ったのは、友人主催の食事会だった。小学校から都内の私立の女子校出身だという遥はふんわりしていて気品があり、素敵な女性だった。
「大輔さんは、どちらのご出身ですか?」
「僕は名古屋です。遥さんは?」
「私は都内で…」
聞けば遥のご実家は千代田区番町で、かなり育ちが良さそうだ。28歳になった今でも、実家住まいだという。
「遥さん、ご実家に住んでいるんですか?」
「そうなんです。もうすぐ30歳になるのに、恥ずかしい話ですが…」
「いえ、ご実家が近いならそれもありですよね。逆に羨ましいです」
最初は「この子、箱入り娘でハードルが高いか?」とも思ったけれど、話してみると本人は至って気さくで、とても良い子だった。
だからこの食事会が終わってから、思い切って食事へ誘ってみることにした。すると意外にもすんなりとOKをもらえ、僕たちはデートをすることになる。
僕は悩んだ結果、麻布十番にある老舗の和食店を予約した。
「遥さんって、普段お料理とかされるんですか?」
純粋に、実家住まいの28歳の女性がどういう生活をしているのかが気になる。家事はできるのか、まったくしないのか…。
「しますよ。母は専業主婦なんですけど、私も手伝うようにはしています。お料理とかお掃除とか…意外に好きなんです」
「家庭的なんですね」
「大輔さんは?」
「僕は人並みに…という感じですかね。まったくできないわけじゃないですが、男のひとり暮らしなんで適当になることも多いです」
「それは仕方ないですよね」
現在、都内の不動産関連会社で事務をしているという遥。初デートだったけれど、心を許してくれたのか自分のこともたくさん話してくれた。
「私は次女なので、かなり自由です。仕事も『好きなことをしていいよ』って感じでしたし。大輔さんは?」
「僕は長男ですが、適当ですよ。普通の家庭ですし。今のゼネコンの仕事も、親とかノータッチです」
「ご両親は?今も名古屋ですか?」
そんなお互いの話などをしていくうちに、遥といると、心がふわっと優しい気持ちに包まれていることに気が付く。
「ちなみに遥さんって…今お付き合いされている方とかいらっしゃるんですか?」
「いないですよ!いたらこうやって、食事とかしないですし」
「僕とかどうですか?」
「……」
この沈黙の意味は、なんなのだろうか。
― やっぱり、唐突すぎたか?
そう思った。しかししばらく考え込んだ後、遥は慎重な面持ちで僕のほうを見つめてきた。
「ありがとうございます。すごく嬉しいです。でも私、結婚がしたくて…正直、結婚願望がなかったり、将来を見据えられない方とはお付き合いしたくなくて。大輔さんは、結婚する気がありますか?」
突然のストレートな重い告白に、もちろん戸惑った。
しかし僕も今年で33歳になるし、「次に付き合う人とは結婚かな…」と思っている。だから答えは決まっていた。
「僕も同じです。結婚を前提に、付き合っていただけますか?」
「はい…!」
こうして、僕たちの交際はとてもスムーズに始まった。
Q2:女が温泉旅行中に気が付いたことは?
半年間の交際期間中、僕と遥は非常に良好な関係を築いていた。ケンカもほとんどなく、週末には遥が僕の家に泊まりに来て、幸せな日々を過ごしていた。
そうした時間を重ねる中で、僕たちはなんとなく「そろそろ結婚かな…」と感じ始めていたと思う。
なぜなら、交際を始めた頃に僕がふと「交際して半年くらいでプロポーズかな」と言ったことがあったからだ。もっとも、遥がそのことを覚えていたかどうかはわからない。
そしてある日、僕たちは1泊2日の温泉旅行を計画することにした。
「遥ちゃん、行ってみたい宿とかある?」
「たくさんあるけど…大輔くんに任せるよ」
「わかった!」
調べてみた結果、たくさんの候補の中から箱根にある個室露天風呂付きの宿を選び、予約をした。
もちろん少し懸念はあった。
幼い頃から高級な宿にも泊まり慣れているだろう遥にとって、僕が予約した1泊10万円ほどの宿で満足できるかどうか不安だった。
「遥ちゃん、ここにしようかと思うんだけど…大丈夫かな?」
「うん、どこでも嬉しいよ」
結果として、その宿はとても良く、到着した瞬間から僕たちのテンションは最高潮に達する。
「素敵な部屋…!大輔くん、ありがとう♡」
「楽しい旅にしようね」
こうして、僕たちの温泉旅行は順調に始まり、実際に1泊2日の旅も大変楽しいものとなった。
「大輔くん、明日の洋服かけておこうか?」
「そうだね。ありがとう」
部屋に着くと、几帳面な遥は僕が脱いだジャケットや、明日着る服をハンガーにかけてくれていた。すると、ふと遥がジャケットのポケットを覗き込み、何かをゴソゴソと探り始める。
「ねぇ、ポケットの中に名刺がそのまま入ってるよ?」
「え!ごめんごめん」
クリーニングに出す前に、仕事でもたまに羽織るジャケットを着てきてしまった僕。どうやら、うっかりもらった名刺をそのままポケットに入れていたようだ。思い返すと、先日の地方出張の際に行ったクラブの名刺も入っていた気がする。
「後は自分でやるから、遥は先にお風呂に入っておいでよ。せっかくの個室露天風呂だし」
「そうだね!じゃあ、ひたすらのんびりしよう~」
こうして僕たちは、温泉に浸かってのんびりし、食事を楽しんでまた温泉に入る…そんな幸福の無限ループを繰り返して、至福の時間を過ごした。
ただ一つだけ、食事の際に遥が言っていたことが気にはなっていた。
「大輔くんってさ、好き嫌い多いよね」
「そうかな」
たしかに、僕は食べられない物が多い。大人になって恥ずかしいけれど、パセリやパクチーなどの香草系はすべてNGだし、キノコ類に魚介類もあまり好きではない。
「食べないといけないのはわかっているんだけどね…」
「そうだね。子どもができたときに、格好つかないよね」
遥の言葉に、もはやぐうの音も出ない。
「でも子どもは子どもで、好きな物を食べたらいいし!」
「そうだけど…。まぁいいや。せっかくの楽しい時間だから、楽しい話をしよう!最近、大輔くんの仕事忙しそうだけど…」
こうして、不穏な空気は流れたものの、一瞬の出来事でしかなかった。
帰り道も、遥はいつも通り楽しそうだった。
だが結果として、この旅行から帰ってきた後から遥の機嫌は著しく悪い。
果たして、この温泉旅行中に僕は何をしてしまったのだろうか…?
▶前回:4回目のデートで家に誘ったらOKしてくれたのに…。1ヶ月後、急に年上彼女が冷たくなったワケ
▶1話目はこちら:「あなたとだったらいいよ♡」と言っていたのに。彼女が男を拒んだ理由
▶NEXT:10月13日 日曜更新予定
女が一緒に旅行をして気がついてしまったコト