担税(たんぜい)物品と呼ばれるビールやウイスキーなどの酒類、ガソリンや灯油、たばこなど「製品」自体に税金がかかるものについて、それぞれに税収減が起きたり、二重課税が指摘されるなど問題が表出している。
多くの人にとって“意識せず”に製品購入時に徴収されている税金の仕組みについて、東京国税局に勤めていた芸人・さんきゅう倉田氏が解説する。
※この記事は、さんきゅう倉田氏の著作『元国税局芸人が教える わかる、得する!超やさしい税金の教科書』(学研)より一部抜粋・再構成しています。
酒税は年々減少傾向にある
日本酒やビール、ウイスキーなどのお酒にかかる税金が酒税です。
酒税の歴史は古く、鎌倉・室町時代から幕府による酒税の徴収が行われていました。国税収入の約4割が酒税という時代もありましたが、1990年代に入ってからは減少傾向となっています。
たくさんの量を飲む人が少なくなったこと、人口の高齢化が進んだことなどが酒税減少の原因とされています。
酒税の対象になるのは、アルコール分1度以上の飲料です。税額はお酒の種類やアルコール度数によって細かく決められています。
税金は製造者や輸入者が納めますが、価格に含まれているため、実際に負担しているのは消費者です。
ビールと発泡酒の税率は2026年に一本化される
酒税の税率は、時代とともに変わってきています。
税率は、ビールは減少傾向、発泡酒や新ジャンルは増加傾向、清酒は減少傾向、ワインなどの果実酒は増加傾向です。
段階的に調整されてきた酒税ですが、令和8(2026)年10月にビール、発泡酒、第3のビールは、1キロリットル当たり155円に一本化されます。
物価高が進むなか、安定した酒税を確保するために国がどのような政策を打ち出していくのか、注目していきましょう。
ガソリン税は道路整備を目的に導入されたる
ガソリン税の正式名称は、「揮発油税及び地方揮発油税」です。揮発油税は国税、地方揮発油税は地方税になります。
ガソリン税は、道路整備が急務とされた1950年代に設定されました。当初は道路整備を目的とした特定財源でしたが、平成21(2009)年に厳しい財政事情や環境面への影響の配慮という理由で一般財源へ移されました。
ちなみに、特定財源は使いみちが決まっているお金のことで、一般財源は使いみちが決まっていないお金のことをいいます。
一般財源になると、道路整備のために集めた税金が他のことに使われる可能性があるわけです。
税金の使いみちについては、政府がしっかり説明するべきだと思います。
ガソリンは「ガソリン税」以外の税金もかかっている
ガソリンには、ガソリン税以外の税金もかかっています。
ガソリンの本体価格に加え、ガソリン税、石油石炭税、環境税(地球温暖化対策の税)、消費税です。
消費税は本体価格とガソリン税などを足した価格に10%をかけることから二重課税を指摘する声も多く聞かれます。一方で、ガソリン税や石油税は石油会社に納税義務があり、消費税は消費者が間接的に支払うため、二重課税には当たらないという見解もあります。このあたりはちょっと複雑ですね。
いずれにせよ、昨今のガソリン価格高騰により、ガソリン税についてはさまざまな意見が出てくると思います。電気を動力とする電気自動車(EV)がもっと普及するまで、ガソリン価格の推移には注意したいところです。
たばこは6割以上が税金
たばこ税は、国たばこ税・地方たばこ税・たばこ特別税で成り立っていて、それぞれ税率が異なります。
たとえば、1箱580円のたばこでは、合計約304円のたばこ税が課せられています。そこに約52円の消費税が加わると、税の合計は約356円となります。つまり、定価の6割以上が税金になるわけです。
たばこ税は増税を繰り返していて、税収は2兆円台を推移しています。たばこを吸う方は減少しているわけですから、喫煙者の負担が年々増大しているといえるでしょう。